故障した給湯器の交換等に時間がかかる-「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン」がお役に立つかもしれません
きっかけは相続の相談、実は母が認知症で…
『先日父が亡くなりましたので、相続の手続をお願いします。自分は2人きょうだいで、高齢の母が施設にいます。』から始まるご相談は、珍しいことではありません。お亡くなりになった方の名義のままでは不動産の売却ができないため、相続の手続が必要です。お父様に遺言がない場合は、通常3名の相続人による遺産分割協議をすることになります。
もし、お母様が認知症などの場合は、遺産分割協議のため、お母様に対する後見開始の申し立てを家庭裁判所に行う必要があります。その上で、選ばれた成年後見人がお母様に代わって遺産分割協議を行い、相続による所有権移転等の登記申請をします。その後に、不動産売却の手続へと進むことになります。
司法書士ができること
1.後見開始申立書の作成
裁判所に提出する書類ですので、司法書士はご依頼に基づいてこの申立書を作成することができます。申立書には、成年後見人の候補者を記載することができ、申立人自身を候補者とすることもできます。
2.司法書士も成年後見人に選任してもらう
後見開始を申し立てる際に、申立人自身を候補者とする他に、司法書士「も」成年後見人候補者とすることができます。司法書士も成年後見人に選任してもらうことで、遺産分割や不動産売却などの手続をよりスムースに進めることができます。具体的には、司法書士がお母様に代わって遺産分割協議を行い、その後の相続登記や不動産売却のサポートも行うことができます。遺産分割協議の場面では、相続人のひとりが成年後見人に選任された場合の利益相反状態を回避することにもなります。
不動産売却後に予想される後見事務の内容が、施設利用料や入院費などの支払いとなることもあるかと思います。その場合は、家庭裁判所の許可を得て専門職後見人である司法書士が辞任して、親族後見人に引き継ぐことができます。そうすることで、将来の専門職後見人に対する報酬の負担を抑えることも可能になると考えられます。
(注)誰を成年後見人に選ぶかは、裁判所が決定します。このため、申立書に記載した候補者ではない人が選任されることがあります。
早めの対応で建物の価値を守る
空き家は、人が住んでいる状態よりも傷みが進みます。冬は寒く、積雪地の多い北海道ではなおさらです。これは、建物の資産価値の下がりかたも早くなることを意味します。
今回ご紹介した事例では、最初に成年後見制度を利用することで、ある程度の費用がかかるのは事実です。しかし、建物の価値を維持した状態での売却ができれば、結果的により多くの財産を手元に残せる場合も少なくないと思います。ひいては、社会全体にとっても有益なことといえるのではないでしょうか。
ご相談の際は、次のような資料をご用意いただけると助かります
1.相続登記の場合は
(1) お亡くなりになった方の除籍(戸籍)謄本
(2) 不動産の固定資産税納税通知書、登記済証(権利証)など
(3) 相続人の皆様のお名前、ご住所の情報(まずはメモでかまいません)
2.後見開始申立書作成の場合は、後見等を必要とする方の財産や収支に関する資料
(1) 収入…年金の支給額通知書、確定申告書(不動産収入等がある場合)
(2) 支出…入院費や施設費、家賃、税金や社会保険料
(3) 資産…預貯金通帳・証書、保険証券、固定資産税納税通知書
(4) 負債…債権者名、残債務額、月々の返済額 がわかるもの