相続財産目録の作り方|手順や記載項目について解説
遺産分割協議や相続税申告では、相続財産の内容と評価額を確定しなければ手続きを一歩も進められません。ところが被相続人の預金通帳を独占する相続人が現れると、残高も入出金履歴も不明なまま協議は膠着し、税務署への申告期限も迫ります。
ここでは
1.通帳を隠す典型パターン
2.残高証明書・取引履歴の取得方法
3.2025年スタートの口座管理法/相続時口座照会の使い方
を時系列で整理し、“通帳を見せない相続人”への合法的な対抗策を解説します。
通帳を隠す相続人のパターン
感情的対立を避けつつ“客観的証拠”を積み上げることが、最短で公平な遺産分割へつながります。
| パターン | よくある背景事情 | 対応策 |
|---|---|---|
| ① 通帳独占型 | 「探したが見当たらない」と言い張り、残高も履歴も共有しない | 金融機関から残高証明書を直接取得 |
| ② 大口引き出し隠蔽型 | 介護名目で多額出金、記帳ページを破る/Web明細削除 | 取引履歴請求で疑惑の出金を特定 |
| ③ キャッシュカード管理型 | 被相続人の生前からカードを握りATM 引き出し | 《頻回・高額・同一ATM》の痕跡を履歴で立証 |
ステップ① 残高証明書で“相続開始時残高”を把握
まずは被相続人の口座の残高証明書を取得し、相続開始時点での残高を把握しましょう。
手続き概要
- 請求先:被相続人名義の銀行・信用金庫・ゆうちょ銀行 等
- 被相続人の死亡が分かる戸籍(除籍)謄本
- 申請者が相続人であることを示す戸籍一式
- 申請者本人確認書類(運転免許証など)
残高証明書の効力
- 発行日と残高基準日が明記 → 相続開始日時点※の残高を客観的に証明
- 財産目録の裏付け資料として税務署・家庭裁判所でも通用
※通常は「死亡日」を基準日に指定。
残高証明書取得後の活用
- 財産目録を作成し、遺産分割協議を開始
- ※残高が想定より極端に少ない場合は、次ステップへ
ステップ② 取引履歴(入出金明細)で“動き”を洗う
もう1つの方法として、取引履歴を取得しお金の動きを追うことも大切です。
取引履歴の取得メリット
- 引出日時・金額・取引店舗が判明 → 出金者を推定しやすい
- 短期集中の高額出金=特別受益や不当利得の証拠に
- 生前贈与や隠し口座の手掛かりも浮上
手続きの注意点
| チェック項目 | 実務アドバイス |
|---|---|
| 請求方式 | 多くは窓口のみ。郵送可否と手数料を事前確認 |
| 請求範囲 | 例:「死亡日を含む過去10年の全取引」など期間・口座種類を明示 |
| 複数口座 | 普通・定期・外貨・投信・マル優口座も漏れなく |
履歴はPDFで受け取れる銀行も増加。デジタルデータなら検索・集計が容易で、専門家との共有もスムーズ。
ステップ③ 2025年開始「口座管理法」をフル活用
口座管理法のしくみを活用することも検討してみましょう。
相続時口座照会のしくみ
- 相続人が金融機関1カ所で申請
- 預金保険機構がマイナンバーと紐づいた付番口座を一括検索
- 口座一覧が郵送で届く
利用条件
- 手続き可能期間:被相続人の死亡から10年以内
- 手数料:1件5,060円(税込)
- 対象口座:生前にマイナンバー紐づけ済みの預貯金口座
ここがポイント
- 実店舗を転々と回る手間が激減 → 非協力的な相続人がいても全容把握が容易
- 口座が多数存在する高齢者・事業主の遺産で威力を発揮
不当出金が判明した場合の3つの法的オプション
- 特別受益の持戻し請求:家庭裁判所の調停で相続分を再計算。
- 不当利得返還請求(民法703条):多額引出しを行った相続人に返還義務。
- 遺産分割前の仮処分:預金散逸の恐れがある場合、裁判所に仮差押えを申立て。
専門家に相談を
相続紛争は税務・登記・民事訴訟が絡むため、行政書士・司法書士・税理士・弁護士の連携が不可欠です。
まとめ
被相続人名義の口座の通帳を見せない相続人がいる場合、証拠を用意し法的制度を活用しながら、公平な遺産分割の実現を目指すといいでしょう。
弊社では、初回相談無料を実施しておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。



