自分でできる?限定承認の複雑な手続きを理解する
人が亡くなると同時に、遺された相続人は悲しみに暮れながらも葬儀やさまざまな手続きを進めなければなりません。その中でも、とりわけ重要になるのが 「遺産をどう分けるか」 という問題です。
故人(被相続人)の財産を正確に把握していないと、後になって「こんな財産があったなんて知らなかった」「あの借金はどうなっていた?」といった疑問が噴出し、相続人同士でトラブルに発展するおそれもあります。
ここでは、相続財産目録の作り方や記載項目、専門家への依頼などについて説明していきます
。
相続財産目録とは何か
相続財産目録とは、被相続人が残した財産を一覧表にまとめた書類です。預貯金や不動産、有価証券などのプラスの財産だけでなく、住宅ローンや借金などマイナスの財産まで、すべて記載して財産状況を明確にします。
遺産分割協議を円滑に進めることができる
- どの財産をどう分けるか検討する前に、まず「何がどれだけあるのか」を把握する
- 後から新たな財産が見つかるトラブルを防止
相続税の申告に備えることができる
- 相続開始日(死亡日)から10ヶ月以内に相続税申告・納付を行う必要があり、そのためには全財産の評価が必須
- 早めに目録を作成しておくと、税務処理の目安が立てやすい
財産目録の作成義務はないがメリットが大きい
法律上、相続財産目録を絶対に作成しなければならないわけではありません。しかし、下記のようなメリットがあるため作成しておく方が望ましいでしょう。
- 相続人同士で情報共有しやすい
- 不動産の評価・金融資産の把握など相続税申告の下地になる
- 「誰が何を相続するか」の協議がスムーズになり、紛争リスクが減少
相続財産目録を作成する目的
相続手続きに先だって財産目録を作成することには、一定の目的があります。
遺産内容の明確化
被相続人がどのような財産を保有していたのか、一覧化して客観的に把握することが最初のステップです。
財産内容を把握しないまま協議を始めた場合、途中で知らない財産の存在が発覚したときに遺産分割協議のやり直しが必要になります。不動産だけでなく預貯金・株式・保険・動産など、もれなく拾い上げる必要があるでしょう。
円滑な遺産分割協議の実現
相続人全員が財産の全体像を理解していれば、誰がどれだけ相続すれば公平かを考えやすくなります。財産目録に評価額も載せておけば、遺産分割協議書の作成もスピーディーに進むでしょう。
相続財産目録に記載すべき項目
財産目録は、プラスとマイナスのあらゆる財産を網羅的に記載します。財産は大きく以下のように区分することができます。
預貯金
- 銀行名・支店名
- 口座種別(普通預金・定期預金など)
- 口座番号・現在残高
- 保管場所:通帳やキャッシュカードの所在
- 確認方法:金融機関からの郵便物、通帳、ネットバンクのログイン情報など
不動産
- 土地
- 所在地(地番・地目・地積)
- 登記事項証明書や固定資産税納税通知書から情報確認
- 建物
- 所在地(家屋番号・種類・構造・床面積)
- 家屋番号と実際の住居表示は違うことが多いので要注意
- 評価額
- 固定資産税評価額や路線価などで概算を把握
有価証券
- 株式
- 銘柄、保有株数、証券会社名、株価の評価など
- 投資信託・債券
- 商品名、数量、時価評価
- 保険
- 生命保険・損害保険の契約内容、保険金受取人など
動産
- 自動車
- 車種、年式、車検証の情報、評価額
- 高価な美術品・家具・宝石
- 購入時の領収書や鑑定書を確認し、査定が必要な場合も
負債
- 借入金(住宅ローン、車のローン、カードローンなど)
- 借入先、残高、返済状況
- 保証債務
- 他人の借金の連帯保証人になっているか否か
財産目録作成の注意点
相続財産目録は、一度作って終了するものではありません。財産状況に合わせて常に最新の情報を記載することが大切です。
適時に更新する
一度作成しても、財産の残高や評価額は刻々と変動します。特に、不動産の評価額は経年で上下しやすいですし、有価証券も株価など相場の動きが激しいものです。遺産分割協議直前に、残高や評価を再確認するようにするといいでしょう。
財産の保管場所や利害関係も記載しておく
「通帳やカードは○○銀行の貸金庫」「有価証券は○○証券会社の口座」など、保管場所を明記しておくと、相続人が探し回る手間を省けます。また、一部に担保設定や質権がある財産(例:抵当権付き不動産)などがあれば、その情報も記載することで後の手続きがスムーズになります。
負債や保証も漏れなく書く
プラスの財産だけでなく、借金・住宅ローン・奨学金・連帯保証人など、マイナスの要素もすべて記載しましょう。後々「こんな借金があったなんて!」と発覚すれば相続放棄や限定承認を考え直さねばならないケースもあります。
財産目録作成にかかる手間と専門家への依頼
相続財産目録の作成は法的義務ではありませんが、財産目録は相続人同士のトラブル回避に極めて有効なツールになってきます。一方で、すべての財産を調査・記入するのは大きな負担になるかもしれません。
たとえば、被相続人が多数の銀行口座や証券口座を持っていた場合・不動産が全国各地に点在している場合・古い契約書や領収書が整理されておらず、捜索から始める必要がある場合などは、財産目録を作成する相続人にとって手間と時間のかかる作業となる可能性があります。
専門家への依頼も検討を
弁護士・司法書士・行政書士・税理士・不動産鑑定士など、必要に応じて専門家を活用すると時間と労力を大幅に削減できます。以下の作業には特に時間と手間を要することから、相続手続きに詳しい専門家への依頼は大きなサポートとなるでしょう。
- 財産調査
- 預貯金や不動産、株式、生命保険の有無を専門家が一括調査
- 評価
- 不動産なら不動産鑑定士、または税理士との連携で路線価や時価を計算
- 相続税申告
- 税理士と連携し、相続税の申告書作成をスムーズに
当行政書士法人の対応サービス
当行政書士法人では、財産目録の作成と相続手続きをスムーズに進めるサポートを行っています。
相続財産目録作成サービス
- 相続財産調査代行
- 預金口座・有価証券・保険契約の調査
- 銀行や証券会社からの残高証明書取得
- 不動産の名寄帳閲覧調査
- 財産目録の公正証書化(原則)
- 作成した目録を公正証書にし、信用度を高める
- 万が一の紛失や改ざんリスクを低減
相続税申告・各専門家との連携
相続税の申告・納付は相続開始から10ヶ月以内という期限があります。弊社は税理士などの各専門家と連携しており、財産目録作成から相続税申告、あるいは遺産分割協議書作成にいたるまで、ワンストップでご相談いただけます。
まとめ
相続が発生すると、遺族は悲しみのなかで葬儀から遺産分割協議まで多くの手続きに追われがちです。そんなときこそ「相続財産目録」を作成しておけば、以下のメリットを享受できます。
- 全財産の正確な把握
- 不動産・預貯金・有価証券・動産・負債などを一覧化
- 後から財産が発覚して協議をやり直すリスクを回避
- 遺産分割協議の円滑化
- 相続人同士で財産の評価を共有し、誰が何を相続するか話し合いがスムーズ
- 相続税申告の準備
- 税務申告に必要な評価額の基礎資料となり、期限内に余裕を持って対応可能
- 専門家活用で手間軽減
- 行政書士・税理士・司法書士などが調査・書類整理をサポート
- 複雑な財産構成・国内外に不動産がある場合などでも安心
弊社では、財産目録作成と相続財産調査代行を組み合わせたサービスを提供し、相続人の負担を軽減しています。円満な相続を目指すには、正確で全体像が明確な財産目録の存在が重要ですので、弊社無料相談をお気軽にご利用いただき、安心・納得の相続手続きを実現していきましょう。