オンライン時代到来か?デジタル遺言書のメリットとデメリット
「自分が亡くなった後、家族にはもめることなく円満に財産を分けてほしい」
そのように願うのであれば、元気なうちに遺言書を作成しておくことを検討してみましょう。ただし、遺言書の作成方法には厳格なルールがあり、不備があればせっかくの遺言書が無効になるリスクも。
ここでは、自筆証書遺言と公正証書遺言の作成ルールや注意点について説明していきます。
遺言書作成のルールが重要な理由
遺言書は、被相続人の最終意思を示す非常に強力な法的文書ですであり、遺産分割協議より優先されるなど、死後の相続手続きを大きく左右します。このため、民法では遺言書の形式を厳格に定めており、ほんの些細な不備でも無効判定されるリスクがあります。
形式不備が無効となるのはなぜか
「○○にすべての財産を与える」と書いたとしても、日付や署名、押印などの法律要件を守らなければ、その遺言書は無効となる可能性が高いです。この背景には「本当に本人が作成したのか?」「作成時に意思能力があったのか?」を厳密に確認し、トラブルを防ぐ意図があります。
自筆証書遺言の基本ルール
自筆証書遺言は、民法968条に基づき以下4つの要件を満たすことが求められます。
- 全文を遺言者が手書き(パソコン打ちや代理人の代筆は原則不可)
- 正確な日付を記載(「令和○年○月吉日」はNG)
- 遺言者本人の氏名を自署
- 押印(実印が望ましいが、認印でも法的には可)
1つでも欠落すれば無効リスクが高くなります。特に日付は曖昧にしてはいけません。
訂正・削除・加筆の厳格な手続き
自筆証書遺言では、誤字修正や加筆を行う際にも民法所定の訂正手順が求められます。
- どの部分を何字削除・追加したか余白に明記
- 訂正箇所付近に「○字削除、○字追加」と書いて署名押印
- この方式を逸脱するとその部分が無効になる可能性
小さなミスでも全体が無効になるリスクがあるため、万全を期するためにも遺言作成の専門家に相談してみましょう。
自筆証書遺言保管制度で検認不要に
2020年7月10日から、自筆証書遺言保管制度(法務局での保管)が始まり、これを利用することで、従来必要だった家庭裁判所の「検認」手続きを省略できます。
- 自宅で保管するよりも安全
- 相続人が「遺言書を見つけられない」「改ざんされた」などのリスクを下げられる
ただし、法務局は内容の有効性までは保証せず、形式面の簡易チェックしか行わない点に注意しましょう。
公正証書遺言のルールとメリット
公正証書遺言は、公証人に遺言内容を伝え、法律に沿った文面を作成してもらう方式です。自筆証書遺言のように全文を手書きする必要がなく、公証人がチェックするため形式不備で無効になるリスクはほぼ皆無だとえいます。ただし、作成の際には以下の条件を満たす必要があります。
- 作成時に証人2名が立ち会う
- 相続人や受遺者、その配偶者や直系血族は証人になれない
- 公証人手数料を負担する
検認不要で紛失リスクも少ない
公正証書遺言は原本が公証役場に保管されるため、紛失・隠匿されにくいのが大きなメリットです。また検認手続き不要で、相続開始後にスムーズに遺言内容が実行されます。費用や証人手配の手間こそありますが、「確実な遺言」を望むなら公正証書での作成を検討すべきでしょう。
共同遺言の禁止|夫婦が同じ用紙に書くことは認められない
民法975条は、「2人以上が同一の証書でする遺言は無効」と定めています。夫婦が1枚の紙に同時に書き込む、いわゆる共同遺言は、自由に撤回や変更ができなくなる恐れがあり、法律上禁止されています。
内容が独立した遺言なら認められる場合も
同じ紙に書かれていても、内容がまったく独立していて、切り離せば2通の別個の遺言として成立する場合、「共同遺言に当たらない」とした判例(最高裁平成5年10月19日)もあります。ただ実務的には、夫婦それぞれが別々の紙・方式で遺言書を作るほうが無難です。
よくある質問と注意点
一般的に、人生において遺言書を作成する機会は非常に限られているといえます。このため、いざ遺言書を書こうとしたときに疑問が湧くのも自然なことでしょう。ここでは、代表的な疑問について取り上げてみます。
押印は実印が望ましい?
民法上「実印でなければならない」とは定められていませんが、認印だと将来「本当に本人の印鑑か?」と争われる可能性があります。実印の方が信頼性が高いのが実情です。
遺留分に配慮しておくべき?
たとえば「全ての財産を特定の相続人に与える」と遺言書に記載したとしても、配偶者やほかの子は遺留分の権利があります。このことを考慮せずに遺言書を作成すると、後に遺留分侵害額請求が発生するなどして思った通りの分配ができなくなるリスクがあります。
認知症などにより意思能力が不安な場合は?
遺言者が意思能力を欠いていると判断された場合、遺言が無効とされる恐れがあります。もし認知症が非常に軽度であるなら、公正証書遺言を選択し、遺言者の意思能力を公証人が確認する形を採った方が安心でしょう。医師の診断書などを用意しておけば、後の争いを回避できる可能性もあります。
まとめ
遺言書は、自分の最終意思を伝え、残された家族を余計な争いから守るための大切な手段ですが、作成方式を誤ると無効になってしまうリスクがあります。
当行政書士法人では、自筆証書・公正証書それぞれの遺言作成サポートはもちろん、遺留分や相続全般に関するアドバイスを行っています。遺言書の作成ルールはもちろん、形式不備や遺留分対策などに不安がある方は、ぜひ弊社の無料相談をご利用いただき、将来のトラブルを未然に防ぎましょう。



