相続登記義務化に伴って発生する各種費用とは
認知症の人が土地建物を相続することになった場合、どのようにして対処すればいいのでしょうか。ここでは、相続登録義務化に伴う認知症対策のポイントについて説明していきます。
認知症の人の相続方法
通常、相続が行われるときは、法定相続割合に基づいて財産を分割するか遺産分割協議を経て相続分を決定するか、いずれかの方法を採ることが多いといえます。しかし、相続人の中に認知症の人がいる場合、考えられる方法としては、法定相続割合に基づいて相続登記を済ませるか、成年後見人をつけて遺産分割協議に臨むか、あるいは固定資産税を欠かさず納入することで土地建物の相続手続きを先送りするか、ということになるでしょう。
法定相続割合に基づいて相続登記を行う場合
法定相続割合に基づいて相続登記を行えば、相続人に認知症の人がいても手続きを済ませることができます。ただし、相続財産に土地などが含まれていた場合、法定相続割合に応じた共有名義となるため、将来的に活用あるいは処分を行う際、手続きが複雑になることが想定されます。
成年後見人をつけて遺産分割協議に臨む場合
認知症のため相続人の意思能力に問題があるとみなされた場合、成年後見人をつけて遺産分割協議に臨むことになるでしょう。「問題がある状態」とは、たとえば次のような状態を指します。
- 家族の名前を思い出せない
- 相続が起こったことを理解していない
- 日常会話の成立が困難である など
認知症の相続人がいる場合、家庭裁判所に申立てを行い適切な人物を法定後見人に選任してもらう必要があります。本人の認知症が進行する前の段階であれば、あらかじめ任意後見人を指定しておくことも可能です。
土地建物の相続手続きを先送りする場合
相続人が重度の認知症である場合、あえて相続手続きを先送りするケースも散見されました、しかし、令和6年(2024年)4月1日から相続登記義務化がスタートしますので、今後は「次の相続が起こるまで相続登記を先送りする」という手段は使えないことになります。法定相続割合に基づいて相続登記を行うか、法定後見人をつけて遺産分割協議に臨むか、いずれかの方法を採る必要があるでしょう。
相続登記できない「正当な理由」とは
相続登記義務化がスタートしたら、どの相続においても、「正当な理由」がない限り必ず相続登記を行わなければならなくなります。では、「正当な理由」とはどのようなものなのでしょうか。
法務省が公開している「相続登記の申請義務化の施行に向けたマスタープラン」によれば、以下のような事情が認められる場合について「正当な理由」があると判断するようです。
ア 数次相続が発生して相続人が極めて多数に上り、かつ、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合
イ 遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているために不動産の帰属主体が明らかにならない場合
ウ 相続登記の申請義務を負う者自身に重病等の事情がある場合
エ 相続登記の申請義務を負う者がDV被害者等であり、その生命・身体に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合
オ 相続登記の申請義務を負う者が経済的に困窮しているために登記に要する費用を負担する能力がない場合
※法務省「相続登記の申請義務化の施行に向けたマスタープラン」より抜粋
ただし、上記事情は参考例であり、実際には個別の事案ごとに「正当な理由」に該当するかどうかを判断しているとも明言しています。実際には個別の事案ごとに「正当な理由」に該当するかどうかを判断しているとも明言しています。正当な理由に当てはまりそうな場合は、まず法務局または司法書士に問い合わせてみるのもいいでしょう。
まとめ
相続が起こると、さまざまな行政書類を作成したり相続登記を行ったりと、短期間にかなりの作業をこなさなければいけなくなります。特に、認知症の相続人がいる場合は、その対処法について迷うこともあるでしょう。
当事務所では、行政書士が窓口となり、提携する司法書士や税理士と協力しながら業務を遂行しておりますので、書類作成や後見人問題、相続登記にいたるまで幅広くサポートすることが可能です。まずは無料相談をご利用いただき、お困りの問題についてお気軽にお尋ねください。