ラリー撮影は一発勝負
ラリー競技の撮影現場には、独特の緊張感があります。決められたタイムスケジュールで車両が走り抜けていくため、シャッターチャンスは文字どおり一瞬しかないからです。私自身、ラリーの撮影で機材を構えるたびに、「ここで撮り逃したら、もう取り戻せない」という気持ちが背筋を走ります。
ラリー競技にはステージごとの走行時間があり、追走撮影とは、走行する車両を別の車やドローンが追いかけながら撮影する手法のことです。コースの状況、速度、風、観客の位置といった条件が刻々と変わる中で、どの位置から、どの機材で撮るかを瞬時に判断する必要があります。
私が所属するフライト映像サービスでは、北海道ブリザードラリー、EZO ENDLESS RALLY、糠平湖氷上タイムトライアルといった大会で撮影実績を重ねてきました。実績の数だけ、現場で「あのとき、ああしておけば」と感じた経験も積み上げています。その積み重ねが、機材構成や運用ルールに反映されています。
「失敗できない撮影」という言葉を、私たちはシビアに受け止めています。だからこそ、機材を選び、人員を組み、安全を確保するというプロセスに、ほかの撮影以上に時間をかけているのです。
インスパイア2を中心とした機材構成
ラリー撮影の中核となる機材が、業務用ドローンとして定評のあるDJIインスパイア2です。私たちはこのインスパイア2を、最大4機体制で運用できる環境を整えています。複数機を同時に飛ばせる体制は、ラリー競技のような一発勝負の撮影で大きな意味を持ちます。
たとえば、車両の追走シーンを1機で追いかけている間に、別の1機がコーナーの俯瞰を押さえ、さらにもう1機が観客席越しの引き絵を撮る。1台のドローンで撮影しようとすると、移動と画角変更に時間がかかり、肝心の瞬間を逃しかねません。複数機を割り当てておくことで、編集段階での選択肢が一気に広がります。
メイン機材はインスパイア2に加えて、マトリス200V2、マビック4プロ、DJI FPVを6機体制、DJI AVATA2と、用途別に揃えています。FPVドローンとは、操縦者が機体視点の映像を見ながら飛ばすタイプのドローンのことで、近接した迫力ある映像表現を得意とします。アクセレラカップなどのドリフト撮影でも、FPVならではのスピード感を活かしてきました。
また、マトリス200V2にはXT2赤外線カメラを搭載でき、夜間撮影や悪条件下での撮影にも対応します。冬季の道北でのラリーでは気温が氷点下二桁を下回ることもあり、こうした環境では機材選びそのものが撮影成否を左右します。
車載カメラと固定カメラを織り交ぜる
空撮機だけがラリー撮影の主役ではありません。車載カメラと固定カメラを組み合わせることで、初めて作品としての厚みが生まれます。
車載カメラはドライバー目線の臨場感を伝える役割を担います。富良野ワークステクノさんなど協力チームの車両に取り付けて走行映像を収録し、GPSデータ付きで速度表示も加える編集が可能です。先日のEZO ENDLESS RALLYでは、ZC33スイフトに360度カメラを装着して、ドライバー視点と外景を一体化させた映像を仕上げました。
地上の固定カメラには、キヤノンEOS C100シリーズ(15ミリ広角・24ミリ・50ミリ)、フライカムシステム、DJIオズモシリーズ、インスタ360 X4、GoProなどを使い分けます。コーナーの立ち上がりやスタート地点には固定カメラを置き、ドローンが追えない地点をカバーする運用です。
編集はダビンチレゾルブスタジオで行います。撮影から編集までを社内で完結できることは、品質を一定に保つうえで大きな意味があると私は感じています。複数のカメラの色味を揃え、車載と空撮の切り替えで違和感のない映像に仕上げる。ここに編集者としての腕の見せどころがあります。
実は、撮影で使う機材点数が多いほど、編集での労力は増えます。それでも複数アングルでの撮影にこだわるのは、ラリー競技の魅力を一面だけで切り取りたくない、という思いがあるからです。
撮影は安全とセットで初めて成立する
ラリーの追走撮影で何よりも優先しているのは、安全の確保です。空を飛ぶということは、万が一のときに広範囲に危険が及ぶ可能性があるということ。これは現場で何度も言い聞かせていることです。
ラジコン飛行歴五十年のベテランをそろえたチームの強みは、ズバ抜けた飛行テクニックそのものではなく、万が一のときに危険回避行動を的確に取れることだと私は考えています。風が想定より強くなったとき、観客の動線と機体の飛行ルートが交差しそうになったとき、迷わず撤退や経路変更を選べるかどうか。それを支えるのが、長年の操縦経験です。
撮影現場では、コース運営の方や警備の方と密に連携を取ります。「ここから先は飛ばさないでほしい」というご要望には必ず従い、撮影機材を構えるよりも先に、現場の安全確認に時間を使います。撮影許可が必要な空域では、もちろん必要な手続きを済ませたうえで臨みます。
良い映像を撮って、無事に帰る。これがフライト映像サービスの基本姿勢です。観る方に喜んでいただける作品は、安全な現場運営のうえに初めて成立する。これは経験を積むほどに強く感じることです。
撮影のご相談で大切にしていること
ラリー競技の主催者さまや、参加チームから「車載と空撮を組み合わせた映像を残したい」というご相談をいただくことが増えてきました。一方で、「予算の都合でどこまでできるか分からない」「機材の話が専門的すぎてイメージが湧かない」というお声もよくお聞きします。
そんなときに私からお願いしているのが、まずは伝えたいシーンを教えてくださいということです。スタートシーンの迫力、コーナーでの攻めの瞬間、ゴール後の選手の表情。優先順位が見えると、機材構成と人員配置をご予算に合わせて組み直すことができます。撮影点数を絞り込むことで、必要な機材だけに集中したご提案も可能です。
また、撮影予定はホームページ(https://www.flightmovieservice.com/)の「撮影予定」ページで公開しています。すでに別件で現場に入る予定があるイベントであれば、撮影費用を抑えたご提案ができることもあります。私からも撮影機材の参考映像をご覧いただきながらお打ち合わせを進めていきますので、まずはお気軽にご相談ください。



