脳梗塞の症状─ろれつや顔のゆがみ、身体の片側が動かしにくくなるなど
いのうえ内科脳神経クリニックの井上です。
縮景園(広島市)の桜も咲き始めました!
本日はくも膜下出血についてです。
頭痛の基礎知識としての八回目のコラム。
【概要】
「くも膜下出血」は、脳卒中の中でも発症率は1割程度ではありますが、死亡率が高く、約5割とも。
加齢にともない発症率が増加しますが、30代、40代でもこの病に倒れる人もいます。
くも膜下出血について説明します。
くも膜下出血は生命の危険が高い病気!
「くも膜下出血」は、「脳梗塞」「脳出血」と並ぶ脳卒中の1つです。
その死亡率は約50%とも言われており、助かったとしても麻痺などの後遺症をもたらすことがあります。
くも膜下出血は、脳動脈瘤の破裂が原因で起こることが多く生命に危険がおよぶ病気です。
血管の奇形や外傷などでも、くも膜下出血が起こることが。
脳動脈瘤が破裂した場合、半数近くが即死もしくは昏睡状態となります。
そして
昏睡から治療を受けて社会復帰ができる患者は、約25%と少なくなっています。
この病気の発症頻度は、1年間で人口10万人当たり約20人です。女性に多い病気と言われていますが、死亡率に大きな男女差はさほどありません。
加齢に伴い発症率は増加し、年代で見ると、40代、50代では男性の患者、60歳以降は女性が多い傾向にあります。
高齢での発症になるほど死亡率が高く、予後も悪く、介助を必要となることが多い病気です。
くも膜下出血が起こる理由や頭痛との関係
この病気は、その多くが頭蓋骨の内側にある「くも膜」の下の層にある動脈にこぶができ、それが突然破れて、くも膜の下に出血が広がって起こります。
出血すると、「激しい頭痛」「嘔吐」「意識障害」などが起こります。
もっとも多い症状が頭痛です。
頭痛の症状は、脳動脈が破裂する前にも、起こることがあります。
これは、くも膜下出血の前兆で「警告頭痛」とも呼ばれていますが、この症状以外に目の痛みや物が二重に見える、まぶたが下がる、モヤモヤやボーっとした違和感がある、めまいや吐き気を伴うこともあります。
くも膜下出血は、脳動脈瘤の破裂前に診察を受けることができれば、最悪の事態を回避できることもあり。
軽い頭痛の症状でも「いつもと違う」と感じるのなら、すぐに医師の診断を受けてください。
くも膜下出血 その診断から治療に至るまで
くも膜下出血の疑いがある場合は、頭部CT検査やMRI検査を行います。
軽症の場合や発症後から時間が経過している時、脳が腫れていない場合などは、MRIの撮影や、腰から針を刺して採血と髄液を採取する「腰椎穿刺(ようついせんし)」を行い、出血の有無を調べることがあります。
脳動脈瘤の位置や形状を把握するためには、造影剤を使って3DCT血管投影を行い、患部の状況を把握します。
その後は、手術に向けて全身状態を維持するために血圧をコントロールしたり、意識障害があるときは人工呼吸による管理などを行います。
手術は、破裂した動脈瘤を塞いで再出血を防止する処置を行います。
代表的な方法は、実際に頭の骨を開いて破裂した脳動脈瘤を金属製のクリップで挟む開頭手術(クリッピング法)と、カテーテルを利用して患部の中に金属製コイルを詰めてこぶの内側から埋める血管内手術(コイル法)の2種類です。
くも膜下出血は高血圧症や喫煙者に発症リスクが高い病気
「くも膜下出血」は、発症すると、以前のように元気になることが大変難しい病気のひとつです。
毎日の生活で、この病気を避けるためにはどうすればいいのでしょうか。
くも膜下出血を引き起こす二大要因は、高血圧と喫煙
高血圧の人がこの病気を発症すると、男性で2.97倍、女性で2.7倍死亡率が高くなります。
その理由は、普段から血圧が高い人は、動脈瘤に高い圧力がかかるため破裂のリスクが高くなるともいわれております。
高血圧になる最大の要因のひとつは、塩分のとりすぎです。
食生活において外食が多い人だと、塩分過多になりがちです。
ソースや醤油などの調味料をかけすぎない、スープは全部飲まないなど、塩分が多く含まれているものを食べ過ぎないように注意してください。
喫煙は、くも膜下出血の原因の最大要因とも考えられています。喫煙者は、非喫煙者の2.2~3.6倍も、くも膜下出血の発症率が高くなります。
喫煙は、1日に吸うたばこの本数に関係なく、病気の発症率を高めます。
その他の発症要因は?
高血圧症や喫煙以外に、くも膜下出血のリスクを高める要因は、家族における脳出血、くも膜下出血、脳梗塞の既往歴や輸血の有無、精神的ストレスなどです。
家族の中にかつて脳卒中にかかった人がいれば、男女とも、くも膜下出血の発症率が2倍になるようです。
輸血については、その関連性は不明ですが、男性で輸血歴がある人は、くも膜下出血の発症リスクが4.2倍あるともいわれております。
またストレスが高いと血管が傷つきやすくなります。
女性は男性よりもその傾向が強くなります。
特に60歳以降になると、女性ホルモンの分泌量が減少することも影響し、くも膜下出血のリスクが高まります。
日々のちょっとした心がけが、くも膜下出血予防につながる
くも膜下出血は、発症してから治療を受けても社会復帰が困難な病気です。
日ごろから血圧が高めの人は、自覚症状がなくても減塩やアルコール摂取を控えめにするなどして、血圧が上がりすぎないように心がけてください。
特に喫煙者は、くも膜下出血以外のさまざまな病気のリスクを高めるといわれてます。
そのため、禁煙に努めることをおすすめします。
もし血圧が急に乱高下したり、突然激しい頭痛に襲われるなど普段と違う体調の変化に気がついたら、すぐに医療機関で診察を受けてください。