くも膜下出血の症状─突然の激しい頭痛と吐き気
いのうえ内科脳神経クリニックの井上です。
本日は、薬剤の使用過多による頭痛についてです。
頭痛の基礎知識としての七回目のコラムになります。
【概要】
頭痛のたびに鎮痛薬を使用していると、やがてお薬の量が増えて薬物に依存してしまいます。
ちょっとした頭痛が、薬を飲み続けることで頭痛を発症する「薬剤の使用過多による頭痛」へと悪化するリスクもあります。
頭痛で悩んでいるのであれば、医師の診察を受けて正しい治療をするようにしましょう。
気軽に使える市販頭痛薬が薬剤の使用過多による頭痛へ悪化する危険になる
ちょっとした風邪や胃痛、頭痛などであれば、市販薬で治そうとする人は多い?
医療機関で診察を受けるのは面倒、時間がないといった理由で、ドラッグストアで買った薬を使う人は少なくありません。
頭痛の場合、カゼや胃炎の時よりも、医師の診察を受けずに市販の鎮痛薬を利用して治そうとする人の方が多いかもしれません。
困った時にいつでも気軽に使える市販薬は便利なものですが、その手軽さが仇となって飲みすぎる傾向があり。
とくに
市販の頭痛薬は「痛くなった時に飲む」ことが多く、カゼの薬のように「毎食後1錠」というように服用の時間や量が細かく指定されていないこともあり、前回いつ何錠飲んだかを忘れてしまい、たびたび服用してしまうリスクがあります。
市販の頭痛薬を長く使い続けているうちに、薬を飲む日数がどんどん増えると「薬剤の使用過多による頭痛」へと頭痛が悪化するリスクが高まっていきます。
そして気づかないうちに「痛くなったら飲む」はずの薬を「痛くなる前に飲む」ようになり、薬を飲んだはずなのに頭が痛くなっていないでしょうか。
薬剤の使用過多による頭痛の診断基準とは?
「頭痛が起きたら飲んで治す」目的の頭痛薬が、「痛くならないように飲んだのに、やはり頭痛がする」という症状になっていると、「薬が効かないし何か別の悪い病気じゃないか?」とますます不安を感じるようになります。
「薬剤の使用過多による頭痛」の人はこのような症状を抱えるようになり、「頭痛が治らず悪化しているのは、もしかしたら脳腫瘍かも?」というように思い悩んで医療機関を訪れます。
自分が薬剤の使用過多による頭痛かどうかをチェックするには、まず「月に10日以上鎮痛薬を飲んでいるかどうか」を調べてみてください。
薬の種類別の判断基準は次のようになっています。
・トリプタン 10日以上/月
・エルゴタミン製剤 10日以上/月
・鎮痛剤 15日以上/月
ひとつの基準は上記の通りですが、これに「該当する」「該当しない」に関わらず、薬を飲んでも頭痛の症状がおさまらず、日常生活に支障をきたしているのなら早急に医療機関を受診してください。
薬剤の使用過多による頭痛の患者さんは女性のかたが多い
この頭痛は、緊張型頭痛、片頭痛に次いで3番目に多い頭痛と。
男女別にみると、1対1.35の割合で女性の患者が多くなっています。
患者の年齢層は12歳未満の子どもから成人に至るまで幅広いのですが、とくに中年女性患者が発症しやすい傾向が。
薬剤の使用過多による頭痛は、入手しやすい市販の鎮痛薬の乱用が原因で発症することが多いのですが、最近ではトリプタン製剤による発症数も増加しています。
薬剤の使用過多による頭痛の患者は、すでに片頭痛を抱える人が薬に依存することで発症に至る経緯が多く、群発頭痛から薬物乱用頭痛を発症するケースは少ないようです。
慢性関節リウマチや腰痛の患者で、鎮痛薬を長期間利用している人がこの頭痛を発症するといった例も少ないことから、片頭痛と診断された人において、その後に薬剤の使用過多による頭痛を発症するリスクが高いといえます。
薬剤の使用過多による頭痛の治療法
薬剤の使用過多による頭痛と診断された場合、治療の3本柱は下記です。
1.原因薬物の中止
2.薬物中止後に発生する頭痛への治療
3.予防薬の投与
これらの治療を行いながら、「頭痛ダイアリー」も記録していきます。
「頭痛ダイアリー」とは、薬の使用と頭痛の発症、月経サイクルや天候などを細かく記録し、頭痛の発症パターンを視覚化し発症に至る原因や因果関係を調べるための記録です。
記録の内容は、治療を開始してから以降の頭痛発症の頻度や発作の時間、長さ、痛み方など頭痛の症状を詳しくデータに残し。
それにもとづいて、医師と患者が今後の治療の方向性を確認しあいます。
頭痛ダイアリーに記録することで、患者が受け身ではなく、主体的に治療に関わるという意識改革をもたらすので、頭痛の症状改善に役立つ効果も期待できます。
薬剤の使用過多による頭痛の患者にとって大切なのは、医師とともに治療を進めていくという気持ちです。
この姿勢が、頭痛を克服する重要なポイントだとも言えます。
また記録を残す以外に、心理的ストレスについても看護師や医師などに相談して、必要に応じて薬を処方してもらうのもよい方法です。
再発リスクに注意
積極的に治療を受けて、薬剤の使用過多による頭痛の治療が成功する確率は約7割と言われています。
また
この頭痛は治療を終了して1年以内に再発するリスクが約半数といわれてます。
そのため
治療が終わっても継続して再発防止の対応をしていくことが欠かせません。
そのためにも患者さんは、勝手に「頭痛が治った」と自己判断して通院をやめてしまうのではなく、医師のアドバイスをよく聞き、再発防止のケアも欠かさずに日々を過ごすようにしてください。