片頭痛治療薬の授乳時の(授乳された小児に対する)リスク
片頭痛の患者さんにはご理解できると思いますが、頭痛は本当につらいですね。
急性期治療薬もどんどん開発されて、有効なお薬は増えてきました。
片頭痛は若い女性の方に多い病気でもあり、妊娠とのかねあいがあります。
片頭痛は女性ホルモンの関係で、妊娠の初期は悪くなり、その後は安定して頭痛の回数が減ったり、程度が和らぎます。
妊娠される女性のかたは、あかちゃんのことを第一に考えて、極力お薬は飲まないようにされたり、煙草をやめたり、アルコールを飲まないようにされます。とてもよいことだと思います。しかし、「あの頭痛発作!」が来ることを考えると不安です。でも、安心してください。妊娠中にも安全に飲めるお薬はあります。
急性期の治療薬として、最も効果が期待できるトリプタン系のお薬
セロトニンという広がった血管を収縮して元にもどす作用がある神経伝達物質の作用部位を刺激するお薬です。トリプタン系のお薬で、作用時間の長いものから、ナラトリプタン、エレトリプタン、ゾルミトリプタン、スマトリプタン、リザトリプタと日本では、五種類のトリプタンがあります。これらは妊婦にも使用可能と頭痛学会でも認知されております。
消炎鎮痛剤です。
消炎鎮痛剤はプロスタグランジンの産生をブロックすることで炎症を抑えます。同時に血管の拡張作用もあり、プロスタグランジンがブロックされることで、赤ちゃんの動脈管が閉じられてしまいお母さんからもらう血液を有効に利用できなくなります。妊娠後期は使用ができませんが、その作用が強いジクロフェナクなどは妊娠の全期間において禁忌となります。
アセトアミノフェン
痛み止めとして、最も安全とされてきております。ただし、常用することによって妊娠後期に先ほどのお薬と同様に、動脈管の早期閉鎖が報告されてています。また、同じように常用により生まれてきたお子様が学童期になった時に、注意欠陥障害になる可能性が高くなるといわれております。常用しなければ妊娠の全期間において安全に使用できるというスタンスにはかわりはないと思われます。
漢方薬
五苓散(ごれいさん)、(ごしゅゆとう)、せんきゅうちゃちょうさん、当帰芍薬散、しょうけんちゅうとうなど妊娠の全期間に安全に常用できます。
牡丹皮(ぼたんぴ)、大黄(だいおう)、附子(ぶし)、枳実(きじつ)、桃仁(とうにん)、紅花(こうか)、牛膝(ごしつ)、薏苡仁(よくいにん)などは大量に飲むと流産のリスクがあるといわれておりますが通常量ならまず、問題はないとされております。その他にも、乾姜(かんきょう)半夏(はんげ)芒硝(ぼうしょう)厚朴(こうぼく)薄荷(はっか)でも流産しやすくなるといわれますがはっきりとした報告はないようです。
このように、妊娠中に全く痛み止めはダメということはありません。また妊娠中の飲酒や喫煙は使用しないほうがよいとされているお薬の何倍も赤ちゃんにとってデメリットが高いのです。安全に飲めるお薬はこのようにありますが、各個人により、飲めたり飲めなかったりします。妊娠中の内服については、産科の先生など妊娠期に飲める薬剤に詳しい医師や薬剤師とよく相談されてください