◆ 事前ヒアリングと研修現場のギャップ
研修のご依頼をいただく際、事前ヒアリングで人事担当者の方から
「実は社内で気になる言動がある」「ハラスメントかもしれない事案がある」といった声をよく伺います。
ところが、実際に研修を行ってみると、参加者からは「うちは大丈夫」「そんなに気を使わなければならないのか」といった反応が返ってくることが少なくありません。
このギャップには、「ハラスメント=悪意ある行為」「加害者=誰か他の人」という固定観念が影響しているように感じます。 「自分は関係ない」「自分は加害者ではない」という前提があると、研修の内容が“他人ごと”として受け取られてしまうのです。
◆ 制度対応は進んでも、意識はまだ“外向き”
法令化により、企業としての制度対応は進んできました。相談窓口の設置や規定の整備など、“やるべきこと”は明確になっています。 その流れの中で、「まずはハラスメントを知るところから始めたい」と、入り口研修のご依頼をいただくことが増えています。
企業としては、「研修を実施した」という“やってる感”を得ることで、ひとまず安心したいという気持ちもあるでしょう。 しかし、研修の場で実際に話を聞いていると、「私には関係ない」「我が社は大丈夫だ」といった声が上がることもあります。
ですが、ハラスメントは「誰かの問題」ではありません。
実際、多くは“意図せずに相手を傷つけてしまう”ことから始まります。 たとえば、何気ない一言が、相手の尊厳を損なっていたり、立場の違いが「言い返せない空気」を生んでいたり。
それは、誰にでも起こりうることです。
◆ 気づきが関係性を変える
ある企業での研修後、参加者の一人がこう話してくれました。
「自分は“指導しているだけ”と思っていたけれど、相手がどう受け取っていたかを考えたことがなかった」
その気づきが、部下との関係性を見直すきっかけになり、職場の空気が少しずつ変わっていきました。
また別の企業では、入り口研修を実施した後に、
「実は自社の中に、見過ごしていた課題があったことに気づいた」「もっと深く学びたい、続きが知りたい」
という声が上がりました。
“やって終わり”ではなく、“やってみたからこそ見えてくること”があるのです。
ハラスメント防止は、制度だけではなく、関係性の質を見直すことから始まります。
「自分には関係ない」ではなく、「自分の言動がどう届いているか」に目を向けること。
それが、職場の安心感を育てる第一歩となり、そういう意識が広がれば、組織全体が変わっていきます。
そんな変化のきっかけを、研修や対話の場でご一緒できればと思っています。



