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糖の氾濫の中で、脳と身体は「即時報酬(即時快)」を学習した/文明・構造(思想)編(1-7:即時報酬と遅延報酬)

嶋﨑剛志

嶋﨑剛志

テーマ:文明・構造(思想)

生活短観


「わかっちゃいるけど、やめられない」は真理だ。
これほど人間の行動、いわゆる業(ごう)を言い現わせた言葉はない。
特に「長期の損得勘定」と「目の前の欲」では、「長期の損得勘定」に勝ち目はない。
私はこれを意思の弱さとか、知能の低さが原因だと思っていたが、
どうやら違うらしい。脳の習性であり、「報酬系=欲」と「統制系=理性」の勝負の結果だ。
「統制系=理性」に勝ち目はない、ということだ。

しかし、ここに「生存系=本能=死にたくない!」が現れると話は変わる。
これが、報酬リセット理論ともいえる。

欲 vs 理性 だと、欲の勝利、だが、、、
欲 vs 理性+本能 だと、理性+本能の勝利となる。

(最も分かりやすい例えなので敢えて出すが)
いくら目の前に絶世の美女が居て、自由にして良いと言われても、
その絶世の美女がHIVで、避妊具が無い場合、ほとんどの男は行為には及ばない。

欲に勝ち、欲をうまく支配するためには、
いかに本能を味方にするかに掛かっている。
このことは、これまで何回も書いてきた。今後も書き続ける。

これが、目の前のお酒、甘いもの、美味しいものに勝つ、唯一の方法である。

人間の脳は「早く・確実な報酬」を最優先するように進化した


人間の脳は、合理的に最善を選ぶ装置ではない。
生存確率を最大化するための近道を選ぶ装置である。

不確実な未来より、
確実に手に入る今を選ぶ。

これは欠陥ではなく、進化の成果だ。
飢えと危険の世界では、
即時報酬(即時快)を逃す個体が死んだ。

そのため脳は、
「今すぐ得られるもの」を過大評価し、
「後から得られるもの」を過小評価する性質を持つ。

脳は理論上の損得計算をしていない


「即時報酬を取ると、トータルでは損になる」
この理屈は、人間の言語化された思考では理解できる。

しかし、行動を決めているのは別の回路だ。

行動選択の中枢である報酬系は、
長期的な損得計算をしない。

・今、どれだけ確実か
・今、どれだけ強い刺激か
・今、どれだけ早いか

これだけで判断する。

つまり、
脳は「損だと分かっていても選ぶ」構造をしている。
分かっていても、ではない。
分かる回路と、選ぶ回路が別なのだ。

即時報酬(即時快)は学習効率が圧倒的に高い


学習は、
「行動 → 結果」の距離が短いほど強化される。

糖はその最短距離を持つ。

・口に入れる
・数分で血糖が上がる
・脳が活性化する
・気分が良くなる

この速さは、
狩り・栽培・技術習得・運動とは比較にならない。

だから脳は学習する。

「これが正解だ」
と。

遅延報酬(遅延快)は、脳にとって学習しにくい


一方、遅延報酬はどうか。

・運動しても結果は数週間後
・食事改善の効果は数か月後
・健康は何年もかけて形成される
・蓄積は目に見えない

行動と結果の距離が遠すぎる。

脳にとっては、
因果関係が曖昧で、不確実で、学習しづらい。

だから、
遅延報酬(遅延快)は“軽く見られる”。

文明は「即時報酬だけが勝つ環境」を完成させた


現代文明は、
脳のこの性質に完全に適合した。

・糖
・加工食品
・強い味
・即満腹
・即回復感
・即効性
・即購入
・即配達

即時報酬(即時快)しか存在しない世界
ができあがった。

脳はここで何を学習するか。
いわゆる「タイパ」だ。

「待つのは無駄」
「早いほうが正しい」
「遅いものは価値が低い」

こうして、
遅延報酬(遅延快)は見えなくなる。

身体も同時に「即時報酬前提」に再設計される


この学習は、脳だけで終わらない。

身体もまた、
「すぐ糖が入る」前提で調整される。

・頻繁なインスリン分泌
・糖が来る前提の代謝
・空腹耐性の低下
・待てない身体

結果として、
糖がないと調子が出ない身体になる。

これは意志の問題ではない。
適応の結果だ。

糖尿病は「即時報酬(即時快)に最適化された文明」の症状


糖尿病は、
スパイクの問題でも、
個人の怠慢でもない。

即時報酬を過剰に学習させる環境
が生んだ、代謝の歪みだ。

遅延報酬(遅延快)が
感じられなくなったとき、
身体は短期刺激に依存する。

その帰結が、
慢性高血糖であり、
代謝破綻である。

結論:即時報酬を否定するのではなく、位置づけ直す


即時報酬(即時快)は悪ではない。
本来は、生存に不可欠な機能だ。

問題は、
即時報酬しか見えなくなったことにある。

ここから先の問いは一つだ。

どうすれば、遅延報酬(遅延快)を
再び“感じられる身体と脳”に戻せるのか。

これは、
食の話にとどまらない。
時間、仕事、学習、人生の話に直結する。

ここから先は、時間投資の話になる。
後日、詳しく話す。

大好きな炭水化物よ、さようなら。

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嶋﨑剛志
専門家

嶋﨑剛志(農業法人)

農業法人株式会社こうづけの里

色・形良く、艶・張りもある美しくおいしい野菜を育てるため、微生物、有機肥料、化成肥料、農薬など、あらゆる手法を適切に使用。低コストで価値ある野菜を顧客に届け、農業と地方の再生、事業継承にも取り組みます

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