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「食料自給率38%」という数字の“前提が根本からズレている話/文明・構造(思想)編(1-5:食糧自給率1)

嶋﨑剛志

嶋﨑剛志

テーマ:文明・構造(思想)


生活短観


風邪の回復の兆しが見えてきた。薬が効いたのか?
風邪をひくと思いだす。
以前、毎日お酒を飲んでいたころに、
風邪をひくと、さすがにお酒を控える。
すると、風邪をひいているにもかかわらず、朝の体調が良い。
風邪をひいているときの方が、すっきり感が違う。
お酒がどれだけ身体に毒か、今更ながらに分かる。

昨日の大根の売上はイマイチだった。
お客さんの動向は読めない。曜日、雨などはある程度想定できるが、
晴れている平日で、通常より大幅に落ち込む要因はなかなかわからない。
ファームドゥ販売店の近所のスーパーなどで安売りでもやったのか?

いずれにしても、野菜は溢れている。
特売日、イベントなど、販売店が努力しないとなかなか売れない。


「食料自給率38%」という数字の“前提が根本からズレている話


日本の食料自給率は 38%。
この数字だけが何十年も一人歩きしてきた。

だが、この「38%」という値は、
“正確な現実”ではなく、“特定の前提で作られた数字”にすぎない。
しかも、その前提は 世界標準でもない。

本記事では、この前提のズレを明確にする。


1.食料自給率38%は「カロリーベース」という“極めて特殊な計算方法”で出した数字


国が発表する38%という数字は
「国民が1年間に摂取したカロリーのうち、何%が国産か?」
という計算に基づいている。

だが、ここには3つの重大な問題がある。

① 摂取量そのものを実測していない(推計モデル)
② 肉などの輸入飼料をすべて外国産カロリーとして計上する
③ 世界的に見ても“カロリーベース自給率”は日本だけが強調している

つまり、
日本の38%という数字は “国を低く見せる方向に歪む計算方法” で作られている。


2.世界では“カロリーベースの自給率”はほとんど使われていない


FAO(国連食糧農業機関)を含め、
世界の多くの国が食料自給を計測する際は、

金額ベース
品目別自給率
農業貿易収支
食料アクセス指標

など、複数の指標を使う。

“カロリーを基準に国力を評価する”という国は、ほぼ日本だけ。

なぜか?

その理由は簡単だ。

日本がこの方法を採用した1980年代当時、
「食料危機を煽り、政策的優先順位をつけるため」
の目的が強かったからだ。

つまり、「カロリー基準」は政治的産物であって、
世界標準の計算方法ではない。


3.では、日本の自給率を“金額ベース”で見るとどうなるか?


結論を言う。

金額ベースの食料自給率は約66〜70%である。

(年度によって多少変動)

なぜこんなに高くなるか?

日本の農産物は単価が高い

輸入品はカロリーは多いが単価が安い(穀物・油糧作物)
畜産物(牛乳・卵など)は国内比率が高い
国産野菜・果物は価格シェアが大きい

つまり、
「カロリーでは低く見えるが、価値では高い」
という構造。

例えるならこうだ。

輸入小麦1kgと、国産和牛100gでは、
カロリーは小麦が勝つ。
しかし、金額では和牛が圧勝する。

この違いが、数字にそのまま出ている。


4.カロリーベース自給率は“日本だけが低くなるよう設計された指標”である


カロリー計算の構造上、
日本はどれだけ努力しても数字が上がりにくい。

理由は以下:

気候的に穀物(小麦・大豆・飼料作物)が大量生産に不向き
肉・卵・牛乳のカロリーが「飼料由来」として外国産扱い
寿司、果物、野菜など、国産価値の高い食品はカロリーが小さい
加工食品の“原料起源”をすべてカロリーに換算される

結果として、

日本の“食文化”と“農業構造”が、
カロリー指標では不当に低く出る。

つまり、
日本の弱点を最大化し、強みを最小化する指標
とも言える。


5.さらに問題:国民が食べた量を“実測していない”


ここが最も大きい。

自給率は「国民が食べた総量」が分母だが、
これは実測値ではない。

国は誰の胃袋も測っていない。
実際の摂取量ではなく、
生産量
輸入量
在庫差
加工率
産業用・飼料用の按分
廃棄率(推計)

これらを“足し引きしただけの数字”である。

つまり、

「食べた量」は推計。
「捨てた量」も推計。
その上で計算した数字が“38%”。

精度が高いとは言えない。


6.食品ロスも“実測”ではなくサンプル調査とモデル計算


よく誤解されているが、
スーパーやコンビニは国に廃棄量を報告していない。

食品ロスの計算は、
ごく一部企業のサンプル調査と、
推計された廃棄率モデルで作られている。

つまり、

「国民が食べた量」も、
「捨てた量」も、
正確には誰にも分からない。

この不確かなデータをベースに、
「日本の自給率は危ない」と語られてきた。


7.こうして“38%だけが一人歩き”する危険


本質を外したまま数字だけが独走すると、
国民の危機認識は歪む。

特に日本の38%は、
世界標準ではない
推計値の上に推計値を積んだ数字
日本の農業構造を過小評価する
政策的プロパガンダの側面が強い

にもかかわらず、
絶対的な現実として扱われている。

これこそが「前提のズレ」だ。


■まとめ:自給率議論の出発点が間違っている


カロリーベース自給率は世界で日本だけが使い続けている
日本の強みが反映されない“構造的に低く出る指標”
実測値ではなく推計モデルの産物
金額ベースでは日本の自給率は約70%
38%という数字だけを信じるのは危険

我が国、日本は
自給率を自虐的に低く公表し、
炭水化物(米、パン、麺、スイーツ、ジュース)を大々的に宣伝している。
何かおかしいよね!!

大好きな炭水化物よ、さようなら!

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嶋﨑剛志
専門家

嶋﨑剛志(農業法人)

農業法人株式会社こうづけの里

色・形良く、艶・張りもある美しくおいしい野菜を育てるため、微生物、有機肥料、化成肥料、農薬など、あらゆる手法を適切に使用。低コストで価値ある野菜を顧客に届け、農業と地方の再生、事業継承にも取り組みます

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