血糖値や悪玉コレステロール値が気になる人へ
乳がんは女性で最も頻繁に診断されるがんであり、グラフに示すように、働き盛りで子育て世代でもある40代から急に罹患率が増加しはじめるという特徴があります。
乳がんには、エストロゲン受容体(ER)またはプロゲステロン受容体(PgR)といったホルモン受容体の有無や成長促進タンパク質であるヒト上皮成長因子受容体2(HER2)のレベルの過剰など、腫瘍の分子プロファイルに従って、表に示すように、1)ルミナルA型、2)ルミナルB型(HER2陰性)、3)ルミナルB型(HER2陽性)、4)HER2型(エンリッチド)、5)トリプルネガティブの5つのサブタイプに分類されます。
現在、乳がんの治療には手術、放射線療法、化学療法(主に抗がん剤治療)、ホルモン療法(抗エストロゲン薬など)、分子標的療法(抗HER2療法など)が用いられていますが、これらの治療法を用いた後でも、腫瘍の再発や病状の進行が頻繁に起こることが大きな懸念事項であり、新たな治療法の開発が求められています。
従来の単剤療法は活発に増殖する細胞を非選択的に標的とするため、最終的には健康な細胞とがん細胞の両方が破壊されてしまいますが、2種類以上の治療法を組み合わせる併用療法は異なる経路を標的とすることで、がん細胞の耐性発生率を低減するとともに、単剤療法の必要投与量を減らすことで毒性も軽減できます。
これまでに開発されたビンブラスチンやビンクリスチンといったビンカアルカロイドは花壇などで見られるニチニチソウ由来であり、パクリタキセルはもともと庭木として知られるイチイから単離された抗がん剤です。
モーリシャス共和国のモーリシャス大学による総説(Cancer,2019, 125(10), 1600-1611)では、乳がん治療の併用療法に加えて、ニゲラ・サティバ(ブラッククミンシード)の主な生理活性成分であるチモキノン(Thymoquinone; TQ)、黒胡椒の主な生理活性成分であるピペリン(Piperine)、アブラナ科由来のイソチオシアネート(Isothiocyanate)の3物質がin vitro(試験管内)試験およびin vivo(動物)試験で乳がんの抑制に相加効果ないし相乗効果をもたらすことを報告しています。
また、これらの生理活性物質を抗がん剤と併用すると、薬剤の投与量を減らせるため、毒性作用を軽減することもできます。
インドネシアのスリウィジャヤ大学による総説(J Clin Med Res, 2025,17(5), 270-284)では、これらの生理活性物質のなかで、チモキノンがこれまでのin vitro試験18件、in vivo試験6件でのシステマティックレビュー(総合評価)において、乳がんに対して、図に示すように、炎症の抑制、腫瘍増殖の阻止、アポトーシスへの誘導のほか、オートファジーの促進、がん細胞シグナル伝達経路および細胞周期の複数段階での調節によって、化学療法(抗がん剤治療)の有効性を高められることを明らかにしています。
しかも、チモキノンは心臓、血液、肝臓、腎臓への障害といった化学療法関連の毒性を軽減して患者さんの忍容性も向上させることが期待できます。
また、エジプトのアレクサンドリア大学によるラットを用いた実験(Asian Pac J Cancer Prev, 2021, 22(9), 3005-3015)で、X線照射前にチモキノンを投与すると、酸化ストレスが抑制され、心筋や肝臓の酵素が有意に増加するなどして放射線照射による有害作用を著しく軽減できることを報告しています。
ただし、チモキノンは腸での吸収率が低いことが難点ですが、チモキノンに黒胡椒のピペリンを加えることで生体内利用率が高まるとともに、ピペリンにも抗がん作用が認められているので、チモキノンとピペリンの摂取を化学療法(抗がん剤治療)や放射線療法などによる治療法に加えれば、乳がんの治療効果がさらに高まるとともに副作用をより少なく抑えられると考えられます。
食品医学研究所では、5%のチモキノンに少量のピペリンを混合した「ブラッククミンシードTQ5+」というサプリメントを開発し販売しています。
がん細胞は一日におよそ5,000個も発生しますが、主に免疫細胞の活性化などによってがん細胞の増殖を防いでいますが、健全な日常生活において、チモキノン、ピペリン、クルクミン、生姜(ジンゲロール&ショウガオール)などをサプリメントとして常用することで、乳がんを防ぐことも可能であると考えます。



