がんの予防や治療補助としてイチ押しの野菜中心の「抗がんスープ」とは?
前立腺は図に示すように、男性の膀胱の下にあるクルミ大の臓器で、その発生から増殖・成長まで男性ホルモン(アンドロゲン)に依存しており、前立腺液を分泌して精子の保護などの役目を担っています。
前立腺がんは日本人男性のがんの中で最も罹りやすいがんで、毎年約96,400人(2022年)が罹患し、約13,500人(2023年)が亡くなっています。
前立腺がんは、黄土色の折れ線グラフが示すように、近年、高齢化や食生活の欧米化に伴って、急激に増加する傾向を示し、2020年には大腸がんを抜いて罹患者数が第一位となりました。
米国(ニューヨーク州)にあるメモリアル・スローン・ケタリングがんセンターのシステマティックレビュー(これまでの研究成果のまとめ)では、前立腺がんの変更不可能なリスク要因として
・年齢(50~60歳以上でのホルモンバランスの変化)
・家族歴(遺伝的要因)
・脱毛症(特に頭頂部型脱毛症)
・高身長(思春期のインスリン様成長因子の高レベル)
を挙げています。
一方、修正可能なリスク要因として
・喫煙
・身体不活動(座りがちな日常)
・食事性炎症指数(DII)の高い食品(飽和脂肪酸・トランス脂肪酸など)
・家畜加工肉
・高脂肪乳製品(牛乳・チーズ・ヨーグルトなど)
・砂糖
を挙げています。
このように、前立腺がんのリスクを高める食品として注目されるのが食事の欧米化による「高脂肪食(特に動物性飽和脂肪酸)」です。
一方、豆類(大豆・レンズ豆・ひよこ豆・インゲン豆など)および胡麻・亜麻の種子に含まれる植物性エストロゲン(イソフラボン・リグナン)は前立腺がんを予防します。
また、アブラナ科野菜などの緑黄色野菜、お茶、コーヒー、一日1/2~1杯の赤ワインのほか、ミネラルのセレン(マグロ赤身・スパゲティ・豚レバーなど)や亜鉛(豚レバー・牛ひき肉・牡蠣など)も前立腺がんのリスクを下げます。
意外だったのが、トマトに豊富に含まれるリコピンで、これまで予防因子とみられていましたが、現在では関連性は認められなくなっていました。
中国の浙江大学ではトマト摂取と前立腺がんに関する10編の論文のメタ分析(Front Nutr, 2021, 8,8pages)を実施したところ、トマトの摂取が前立腺がんのリスクに有意な関連性を示すエビデンス(科学的根拠)はありませんでした。
中国の中山大学による総説(Nutrients, 2016, 8(8), 35pages)では、in vitro(試験管内)実験やin vivo(動物)実験で前立腺がんを予防するスパイスとして、ターメリック(主な生理活性成分:クルクミン)、ジンジャー(ジンゲロール・ショウガオール)、サフラン(サフラナール)、黒コショウ(ピペリン)、赤唐辛子(カプサイシン)、ローズマリー(カルノシン酸・ロスマリン酸)を挙げています。
したがって、前立腺がんの予防には、結局、食生活を含む日常において、豆類や緑黄色の野菜の摂取量と身体活動量を増やすとともに、バラ肉(三枚肉)やベーコンおよび高脂肪乳製品などに代表される動物性の高脂肪食(特に動物性飽和脂肪酸)の過剰摂取には十分気を付けることが大事です。