医薬品並みの効果が期待できる生姜による花粉症の症状緩和
現在、最も効果的ながん治療法として、手術、化学療法(抗がん剤療法)、放射線療法、免疫療法、遺伝子治療などがありますが、これらの治療戦略には有効性が限られており、感染症への抵抗力の低下・脱毛・衰弱・吐き気/嘔吐・食欲不振・肝臓や腎臓の障害・不安やうつ病などの副作用の心配があります。
近ごろ、従来のがん治療を行った患者さん自身またはご家族・ご親族の方から、「がんの治療効果を高めたり、副作用を抑えたりする食材を補助的に摂りたい、または摂らせたいので教えて欲しい」という問合せが多くなってきています。
食品医学研究所では、がん治療の補助的食材として、「クルクミン(curcumin)」と「チモキノン(thymoquinone)」を薦めており、吐き気・嘔吐がある場合には「ショウガ(ginger)」も薦めています。
今回、in vitro(試験管内)実験やin vivo(動物)実験において、「クルクミン」にはどのような補助的効果があるのかをご紹介します。
中国の中山大学による総説(Antioxidants [Basel], 2022,11(8), 24pages)では、ターメリック(秋ウコン)の主な生理活性成分のクルクミンが、乳房がん、肺がん、大腸がん、胃がん、前立腺がん、肝がん、膵がん、卵巣がん、子宮頸がん、甲状腺がん、膀胱がん、口腔がん、舌がん、脳腫瘍、頭頸部がんなど、様々な部位のがんにおいて、図に示す①~⑩の多彩なメカニズムで抗がん作用を発揮すると述べています。
①細胞周期を減衰させてがん細胞の増殖を抑制する
②サイトカインTGF-β経路を抑制して浸潤や転移を抑制する
③MAPK経路を活性化して活性酸素種の生成を刺激する
④鉄依存性のプログラム細胞死(フェロトーシス)を誘導する
⑤BaxやBcl-2の発現を調節してプログラム細胞死(アポトーシス)を誘導する
⑥オートファジー(細胞の自食作用)によってがん細胞を排除する
⑦がん細胞の幹細胞化を抑制する
⑧シグナル伝達経路を抑制して炎症を緩和する
⑨血管内皮増殖因子(VEGF)などの発現によって血管新生を抑える
⑩フィルミクテス門とバクテロイデス門の比率を変えて腸内細菌叢を好ましい状態に調節する
インドのビルラ工科大学による総説(Anticancer Agent Med Chem, 2015, 15(5), 647-656)では、クルクミンは多くの抗がん剤の耐性(抵抗性)を改善して感作を高める働きがあり、例えば乳がん治療において、クルクミンはタモキシフェン、トラスツズマブ、ドキソルビシン、パクリタキセル、5-フルオロウラシル、シスプラチンなどの治療効果を少ない用量で高める働きや化学療法誘発性の副作用を軽減する働きもあると述べています。
以上のように、クルクミンは日頃からのがん予防のみならず、化学療法(抗がん剤)などと併用することで複数のシグナル伝達経路を調整し、がんの進行を防ぐ働きを高めてくれるとともに副作用の大幅な軽減も見込めますので、がん治療に際してクルクミンという補助的食材の活用も念頭に置き、最良な治療法を選択するようにしてください。
ただし、クルクミンは腸から吸収されにくく、体内での代謝も早すぎるので、バイオアベイラビリティ(生体内利用率)が低いという難点があるため、何らかの方法でバイオアベイラビリティを高める工夫が必要です。
食品医学研究所では、95%のクルクミミノイド(約75%のクルクミン)に黒胡椒の主な生理活性成分のピペリンと大豆レシチン(フォスファチジルセリン)を少量加えて、バイオアベイラビリティを格段に向上させたものを開発しています。
なお、食品医学研究所では、in vitro実験やin vivo実験および前臨床研究において、特定のがんに対してクルクミンなどの食材が化学療法(抗がん剤)などのがん治療の補助として有効なのか否かを、「お問い合せ」からご質問下されば、エビデンスとなる関連論文を検索・調査して回答いたします。



