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【2025年最新】新時代の入社式デザイン:形式から体験へ変わる企業と新入社員の関係性 | アックスラーニング

岩崎重国

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テーマ:人事;新入社員;人材育成;新卒採用

かつて入社式といえば、厳粛な雰囲気の中で社長の訓示を聞き、新入社員代表が決意表明をする—そんな形式的な儀式が一般的でした。しかし、働き方の多様化やZ世代の価値観の台頭により、入社式のあり方も大きく変化しています。2025年に向けて、企業は単なる「会社への加入儀式」ではなく、「企業文化の体現」「新入社員のエンゲージメント醸成」の場として入社式を再定義しようとしています。

本コラムでは、2025年度に向けた革新的な入社式の事例を紹介しながら、これからの時代にふさわしい入社式のあり方と、新入社員を迎える企業側の意識変革について考察します。人事担当者や経営者の方々が、来年度の入社式を企画する際の具体的なヒントとなれば幸いです。

1.新時代の入社式:先進企業の事例から学ぶ

事例1:新入社員主体の入社式デザイン(千葉興業銀行)
千葉興業銀行では、従来の形式的な式典を見直し、入社2年目の先輩が企画し新入行員自身が実行委員会となって一緒に準備をして入社式を執り行う画期的な入社式をおこないました。式典では頭取や役員への質問コーナーや自己紹介などを取り入れ、和やかな雰囲気の中で新入社員と経営層の距離を縮める工夫がなされました。「新入行員に期待することは?」と聞かれた梅田仁司頭取は「失敗を恐れず挑戦してほしい」と答えたそうです。

この事例から、入社式を「会社から与えられるもの」から「自分たちで創り上げるもの」へと転換することで、主体性や当事者意識を育む効果が期待できることがわかります。また、これを企図した人事部、人材開発室の創意工夫やメッセージ性も評価できるところではないでしょうか。新入社員からは「自分たちで作り上げ一歩成長できた」「やりがいを感じ、忘れられない式になった」という前向きな感想が聞かれました。

事例2:企業文化と価値観を体現する入社式(エクスコムグローバル)
にしたんクリニックを運営するエクスコムグローバル社は、総工費30億円の社長自宅で入社式を開催するという斬新なアプローチを採用しました。高級シャンパンでの乾杯や露天風呂体験など、型破りな「社会人初日」を演出することで、同社の独自性や価値観を体感させる機会としています。この様な機会を得た新入社員は、間違いなくうちの会社はナンバーワンだ!と会社絵の強いエンゲージメントや誇り、連帯感を感じ自社に自信をもって働くことができるのではないでしょうか。

この事例は、入社式が単なる儀式ではなく「会社の価値観や文化を体現する場」になり得ることを示しています。特に西村社長の「新卒の入社式は1度だけで、人生で特別な日です。こうした機会で皆さんに『よく覚えておいてほしい』」という言葉には、入社式を通じて強烈な企業イメージを刻み込みたいという意図が表れています。

事例3:企業リソースを活用した体験型入社式(西武ホールディングス)
西武ホールディングスでは、自社の鉄道事業を活かし、特急「ラビュー」を「新入社員号」として貸し切り、池袋駅から入社式会場までの移動を特別な体験に変えました。車内では埼玉西武ライオンズのユニフォームが配布され、自己紹介やクイズなどのアクティビティが行われました。

この事例からは、自社のビジネスや資産を活用して入社式に付加価値を与える工夫が見られます。新入社員が会社の事業内容、ブランドやサービスを体験することで、より深い理解と帰属意識そして新たなアイディアへのヒントを育む効果が期待できるでしょう。

2.2025年の入社式に求められる4つの要素

これらの事例から、2025年に向けた入社式に求められる要素として、以下の4点が浮かび上がってきます。

1. 双方向性と参加型体験
一方的な訓示や儀式から脱却し、新入社員が主体的に参加できる双方向のコミュニケーションを重視した入社式が増えています。質疑応答セッション、グループワーク、企画への参画など、受け身ではなく能動的に関わる仕掛けが求められています。

千葉興業銀行の事例のように、企画段階から新入社員を巻き込むことで、入社前から当事者意識を高める効果も期待できるでしょう。オンラインツールを活用したリアルタイム投票やQ&A、SNSとの連携など、テクノロジーを活用した参加の仕組みも効果的です。

2. 企業文化と価値観の体現
入社式は、企業の理念や価値観を伝える絶好の機会です。エクスコムグローバル社のように、会社の個性や特色を反映させた場所選びや内容構成によって、言葉では伝わりにくい企業文化を体感させることができます。

特に価値観の多様化が進む現代において、「うちの会社はこういう場所だ」という明確なメッセージを入社初日に示すことの重要性は増しています。社員が大切にしている習慣やストーリー、成功体験の共有など、企業の DNA を感じられる要素を盛り込むことが効果的でしょう。

3. 本業とのつながりを実感できる体験
西武ホールディングスの例のように、自社の事業内容や強みを活かした体験を入社式に組み込むことで、新入社員は「自分が何に貢献するのか」をより具体的にイメージできるようになります。

小売業であれば店舗見学や接客体験、IT企業ならプロダクト体験、製造業なら工場見学など、入社式と本業を結びつける工夫があると、「この会社で働く意味」を実感しやすくなるでしょう。

4. 記憶に残る特別な体験の創出
人生で一度の入社式だからこそ、特別な思い出となるような工夫が求められています。エクスコムグローバル社の豪邸での入社式や西武ホールディングスの特別列車など、「普通ではできない体験」を提供することで、入社初日の感動や興奮を長く記憶に残すことができます。また、ADKホールディングスが2024年から実施している「生成AIを活用したパーソナライズされた歓迎体験を提供する」入社式のようにCEOがAIアバターとなって、一人ひとりの名前を認識し個別のメッセージをリアルタイムに生成して出迎えるようなパーソナライズドされた体験も記憶に残ることでしょう。

記憶に残る体験は単なるイベントの思い出としてだけでなく、企業への愛着や忠誠心につながる可能性もあります。「この会社に入って良かった」という実感を持てる場面をいかに創出できるかが鍵となるでしょう。

3.企業規模・業種別 2025年入社式アイデア集

企業の規模や業種によって、実現可能な入社式のスタイルは異なります。ここでは、様々な企業タイプ別に実践的なアイデアを提案します。

大企業向け:伝統と革新の融合
大企業の強みは、蓄積された伝統や豊富なリソースです。これを活かしながらも新しい要素を取り入れる方法として:
❶バーチャルツアー&リアル体験の融合: 全国/世界各地の拠点をライブ中継でつなぎ、グローバルな一体感を演出。本社での式典と各拠点でのローカルイベントを組み合わせる
❷AICEOなどを作成し社員一人一人向けにカスタマイズされたメッセージを送る
❸歴史体験ラリー: 企業博物館や記念館を活用し、会社の歴史をゲーム形式で学ぶ体験型オリエンテーション
❹トップ経営層との対話セッション: 少人数グループに分かれ、役員との対話の機会を設ける。形式ばらない環境でのフランクな交流を促進

中小企業向け:特色と強みを活かす
限られたリソースの中でも、中小企業ならではの強みを活かした入社式として:
❶地域コラボレーション: 地元の名所や特産品を活用した入社式。地域との結びつきを体感できる内容に
社長の想いを直接伝える: 大企業では難しい「経営者の想い」を直接伝える場を重視。創業ストーリーや苦労話を交えたパーソナルな交流
❷全社巻き込み型ウェルカムイベント: 既存社員と新入社員がチームになり、社内ミニプロジェクトに挑戦。短期間で成果を出す体験を通じて一体感を醸成

スタートアップ向け:フレキシブルで革新的なアプローチ
スタートアップの特性を活かした、柔軟で革新的な入社式アイデア:
❶ハッカソン型入社式: 新入社員がチームを組み、24時間で新しいアイデアやプロトタイプを生み出す。成果発表会で締めくくる
❷インパクト体感ワークショップ: 自社サービスが社会にもたらす変化やインパクトを体感できるワークショップを開催
共創型ビジョンセッション: 会社の将来について新入社員を交えたビジョニングセッションを実施。「自分たちが創る未来」を共に描く

業種別アイデア
製造業:
・製品ができるまでの工程全体を体験するツアー
・自社製品を使った創作ワークショップ

IT/テクノロジー企業:
・バーチャルリアリティを活用した未来オフィス体験
・社内ハッカソンによる技術イマーシブ体験

金融業:
・顧客の人生における金融の役割をストーリーテリングで体感
・SDGsと金融の関わりを学ぶワークショップ

サービス業:
・顧客体験シミュレーション(実際の顧客になりきる体験)
・サービスデザイン思考を活用した改善提案ワークショップ

4.2025年の入社式で避けるべき落とし穴

革新的な入社式を計画する際に注意すべきポイントも押さえておきましょう。

1. 形だけの革新になっていないか
SNS映えやニュース性だけを追求した内容では、本質的な価値は生まれません。派手なイベントよりも、企業の本質や価値観に根ざした体験設計が重要です。

2. 多様性への配慮は十分か
様々なバックグラウンドや価値観を持つ新入社員に配慮した内容になっているでしょうか。宗教的制約、障害の有無、家族的事情など、多様な状況に対応できる柔軟性が求められます。

3. フォローアップの計画はあるか
入社式での高揚感が一過性のものにならないよう、その後のフォローアップも重要です。入社後1週間、1ヶ月、3ヶ月などの節目でのフォローアップイベントや振り返りの機会を設けることで、入社式での学びや気づきを定着させることができます。

5.2025年以降の入社式トレンド予測

最後に、2025年以降の入社式がどのように進化していくか、その展望を筆者が大胆に考察します。

メタバースを活用した没入型入社式
物理的な距離や空間の制約を超えて、メタバース空間で行う入社式が一般化する可能性があります。全世界の新入社員が同時に参加できるだけでなく、通常では体験できないような仮想体験(企業の過去・未来への旅、顧客体験のシミュレーションなど)を提供できる点が魅力です。

パーソナライズされた入社体験
一律の入社式から、個々人の特性や志向に合わせてカスタマイズされた入社体験へと進化する可能性があります。AIを活用した個別最適化により、それぞれの新入社員が最も共感・理解できる形で企業の価値観や文化を体験できるようになるでしょう。

コミュニティ志向の入社プロセス
1日で完結する「式典」から、数週間〜数ヶ月にわたる「入社プロセス」へと概念が拡張されていくと考えられます。新入社員同士のコミュニティ形成を重視し、共同体験を通じた絆づくりやピアサポート体制の構築に焦点が当てられるでしょう。

社会的インパクトと結びついた入社式
企業の社会的責任(CSR)やサステナビリティへの意識の高まりを反映し、地域社会や環境への貢献活動と連動した入社式が増えていくと予想されます。新入社員が入社初日から企業の社会的価値創造に参画する体験は、仕事の意義を深く理解する機会となるでしょう。

まとめ:
今回は2025年に挙行された独自性のある入社式の事例から今後の入社式の在り方を考察してきましたが、その本質的な変化は「形式的な儀式」から「企業と従業員の関係性を形成する場」への転換にあります。千葉興業銀行の新入社員主体の企画、エクスコムグローバル社の社長自宅での体験型入社式、西武ホールディングスの特急列車を活用した移動体験など、いずれも新入社員に対する深い理解と尊重が根底にあります。

企業にとっての入社式の意義は、単に「会社の一員となった」という事実を確認することではなく、「どのような価値観を持ち、どのように働く組織なのか」を体感してもらうことにあります。そして新入社員にとっての意義は、「雇用契約を結んだ会社」から「自分の成長と貢献の場となる共同体」へと認識を変えていく第一歩となることでしょう。

近年の革新的な入社式は、未来の人材育成や組織づくりの出発点として、これまで以上に重要な位置づけを持ちます。形式や内容の革新に目を奪われるのではなく、「なぜ」「何のために」入社式を行うのかという本質的な問いに立ち返りながら、新時代にふさわしい入社式をデザインしていくことが求められています。企業と従業員の関係性が大きく変化する時代だからこそ、その第一歩となる入社式に込める想いと工夫が、これからの組織の成長と発展を左右するといっても過言ではありません。

新入社員にとって「人生で一度」の入社式は、単なる記憶に残る一日ではなく、企業との関係性の基盤を形作る重要な体験となります。また企業にとっては、自社の価値観や文化を体現し、次世代を担う人材との絆を育む貴重な機会です。そこで2026年度の入社式を計画される企業の皆様には、以下の3つの問いを念頭に企画していただきたいと思います。

・入社式を通じて、新入社員に何を感じてほしいのか?
・入社式を通じて、新入社員とどのような関係性を築く第一歩としたいのか?
・入社式後、どのようなフォローアップで体験価値を定着させるのか

形式や内容の革新は、これらの本質的な問いに答えるための手段に過ぎません。華やかな演出や話題性だけを追求するのではなく、長期的な関係構築の視点から入社式をデザインすることで真に意義のある体験となるでしょう。

時代は変わっても、人と組織をつなぐ「最初の一日」の重要性は変わりません。むしろその価値は高まっています。2025年、あなたの会社ではどのような入社式を通じて、次世代の仲間を迎え入れますか。新時代の入社式デザインが、企業と従業員の新たな関係性構築の礎となることを願っています。

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岩崎重国
専門家

岩崎重国(CSコンサルタント)

アックスラーニング株式会社

都内および主要都市の上場企業、外資系企業等から組織開発、CS戦略コンサル、カスハラ対策、サービス調査等の依頼を長年、受けている。この業務経験・実績から、№1を目指す企業の社員研修、組織開発を支援する。

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