【2025年就活生/新入社員必見】AI時代を生き抜く!消える仕事とこれからのビジネス環境予測 | アックスラーニング
「配属ガチャ」―この言葉をご存知でしょうか。
新卒入社後の配属先が運任せで決まることを、ゲームの「ガチャ」になぞらえた表現です。特に大企業では、入社時に希望する部署に配属されるかどうかは文字通り「運」に左右されることが少なくありません。
厚生労働省の調査によれば、新卒入社後3年以内に離職する若手社員の割合は、大卒で約3割に上ります。その理由として「仕事内容のミスマッチ」が上位に挙げられており、配属先の不満が早期離職の一因となっていることは明らかです。ある大手企業に入社した20代男性は「入社前に描いていた仕事と、実際に配属された部署での業務があまりにも異なり、自分のキャリアビジョンと合わないと感じた」と話します。結果、入社1年半で退職を決意したケースです。
このような「配属ガチャ」の問題は、単に個人の不満にとどまらず、企業にとっても採用・育成コストの無駄遣いや、優秀な人材流出という深刻な経営課題となっています。少子高齢化で労働人口が減少する中、若手人材の確保と定着は企業の生命線とも言えるでしょう。そこで、本稿では配属ガチャによる新入社員流出のリスクとそれに対する特色のある取り組みを紹介します。
目次
1.九州電力の先進的取り組み:配属先選択制の導入
九州電力が画期的な施策を打ち出しました!
同社は新入社員が初めて着任する部署を選べる制度を導入することを決定したのです。
従来、九州電力の事務職新入社員は、最初に支店や営業所に配属され、2年ほど営業などを経験するのが一般的でした。その後に本人の希望や適性に応じて本店の部署などに異動するというキャリアパスが標準でした。しかし2025年4月入社の新入社員からは、複数の部署で業務を半年体験した後、本人の希望を踏まえて配属部門を決める制度に変更します。これにより、新入社員は自らの適性や志向に合った部署を選択できるようになります。
2.なぜ今、配属選択制が注目されているのか
九州電力のような大手企業が配属選択制を導入する背景には、いくつかの社会的要因が存在します。
1. 少子高齢化による人材不足
日本の生産年齢人口(15〜64歳)は1995年をピークに減少を続けており、2065年には現在の約6割にまで縮小すると予測されています。この人口動態は企業の採用市場に大きな影響を与え、特に優秀な若手人材の獲得競争は年々激化しています。
2. 若者の価値観・働き方の変化
Z世代(1990年代後半〜2010年代前半生まれ)やミレニアル世代(1980年代〜1990年代前半生まれ)は、前の世代と比較して「自分らしさ」や「やりがい」を重視する傾向があります。彼らは単に名の知れた企業に入ることだけではなく、自分の価値観に合った仕事や環境を求めています。
3. 専門性重視のキャリア志向
近年の若手社員は、「早期に専門性を身につけたい」という志向が強まっています。ジョブ型雇用への注目や副業・兼業の普及も相まって、汎用的なスキルよりも特定分野での専門知識や実務経験を求める傾向にあります。
4. コロナ禍によるワークスタイルの変革
COVID-19の感染拡大をきっかけに、テレワークやリモートワークが一般化し、「どこで働くか」だけでなく「どのように働くか」に関する選択肢が広がりました。この変化は「何の仕事をするか」という本質的な問いを若者に投げかけることになりました。
5. SNS等による情報共有の活性化
就活生や若手社員は、SNSや口コミサイトを通じて企業の内情や職場環境について情報を共有しています。「配属ガチャ」の実態も広く知られるようになり、企業側も対応を迫られています。
このような多様な要因が重なり、九州電力のような先進的企業が配属選択制を導入する流れが生まれているのです。
3.配属選択制がもたらす5つのメリット
配属選択制は企業と社員の双方にさまざまなメリットをもたらします。主な利点を5つ紹介します。
1. ミスマッチによる早期離職の防止
新入社員が自ら選んだ部署で働くことで、「思っていた仕事と違った」というミスマッチを大幅に減らせます。厚生労働省の調査によれば、若手社員の離職理由の上位に「仕事内容への不満」が挙げられており、配属選択制はこの問題に直接アプローチできる施策です。
2. モチベーションと生産性の向上
自ら選んだ仕事に取り組む社員は、自己決定感が高まり、内発的動機づけが強化されます。心理学の自己決定理論によれば、自律性を感じる環境では、人は創造性を発揮し、より高いパフォーマンスを示す傾向があります。
3. 採用市場における競争優位性
「配属先を選べる」という制度は、就活生にとって大きな魅力となります。特に複数の内定を持つ優秀な学生の獲得において、他社との差別化ポイントになり得ます。実際、ある調査では、就活生の約7割が「配属先を選べる制度がある企業を優先的に選びたい」と回答しています。
4. 適材適所による組織パフォーマンスの最大化
社員が自らの適性や志向に合った部署で働くことで、個人の能力が最大限に発揮されやすくなります。これは企業全体のパフォーマンス向上につながります。また、各部署にはその業務に強い関心を持つ社員が集まるため、部署全体の士気も高まりやすくなります。
5. 長期的な人材育成コストの削減
新入社員の早期離職は、採用コストやトレーニングコストの無駄遣いとなります。一人の大卒社員を採用・育成するコストは平均して数百万円と言われており、配属選択制による離職率低下は長期的なコスト削減につながります。
4.導入企業の事例と成功のポイント
九州電力以外にも、配属選択制を導入して成果を上げている企業はいくつかあります。代表的な事例と、その成功のポイントを紹介します。
事例1:IT企業の「ジョブマッチング制度」
A社では入社から3カ月間の集合研修後、1週間にわたる「ジョブマッチング期間」を設けています。この期間中、新入社員は各部署のプロジェクトリーダーによるプレゼンテーションを聞き、興味のある部署と個別面談を行います。社員と部署の双方の希望をマッチングさせることで、配属の満足度を高めています。
導入から3年が経過し、新入社員の3年以内離職率は導入前から低下したと報告されています。
事例2:金融企業の「職種選択型採用」
B社では採用段階から「リテール営業」「法人営業」「市場運用」「デジタル戦略」など職種別の採用を行い、内定者は自分の希望職種に配属されることが保証されています。さらに、入社2年目以降は「社内公募制度」により、別職種へのキャリアチェンジも可能です。
この制度により、採用段階でのミスマッチが減少し、内定承諾率が向上したとのことです。
事例3:製造業の「ローテーション後選択制」
C社では新入社員全員が3つの部署を4か月ずつローテーションした後、本人の希望と上司の評価を総合して配属先を決定しています。これにより新入社員は複数の業務を体験した上で適性を見極められるメリットがあります。
同社では制度導入後、若手社員の「仕事へのモチベーション」に関するアンケート満足度が大きく上昇したと報告されています。
成功のポイント
これらの事例から、配属選択制を成功させるポイントとして以下が挙げられます:
❶十分な情報提供: 各部署の業務内容や特徴、求められるスキルを詳細に説明する
❷双方向のマッチング: 社員の希望だけでなく、部署側の評価も加味する
❸複数部署の体験機会: 実際に業務を体験してから選択できる仕組みを設ける
❹定期的な見直し: 配属後も定期的に適性を確認し、必要に応じて異動できる柔軟性
❺透明性のある選考プロセス: 選考基準や決定プロセスを明確にする
5.配属選択制の課題と対応策
配属選択制にはメリットがある一方で、導入・運用に際していくつかの課題も存在します。ここではその課題と対応策を考察します。
課題1:人気部署への希望集中
魅力的な部署や条件の良い部署に希望が集中し、一部の部署では人材が不足するリスクがあります。特に営業部門や地方拠点など、若手社員から敬遠されがちな部署では深刻な人員不足が生じる可能性があります。
対応策:
各部署のポジティブな側面や成長機会を積極的に伝える広報活動
人気の低い部署へのインセンティブ(特別手当や研修機会の充実)の導入
定員制を設け、選考プロセスを明確化することで納得感を高める
ローテーション制度と組み合わせ、最初は短期間でも複数部署を経験させる
課題2:公平性の担保
選考過程の透明性が低いと、「コネや内部事情で決まっている」という不信感を生み、制度の信頼性を損なう恐れがあります。また、評価基準によっては特定のタイプの学生が有利になる偏りが生じる可能性もあります。
対応策:
選考基準や決定プロセスの透明化
複数の評価者による多面的評価の実施
配属決定の理由を本人にフィードバック
配属後の異動機会を設けることでセカンドチャンスを提供
課題3:経営資源の負担増
複数部署を経験させるローテーション期間の設定や、マッチングプロセスの運用には、通常の新人教育以上の経営資源が必要となります。特に中小企業では、このコスト負担が導入のハードルになることもあります。
対応策:
デジタルツールを活用した効率的なマッチングシステムの構築
既存の研修プログラムとの統合による効率化
段階的な導入(一部部門や少人数からのパイロット導入)
社内メンター制度との連携によるサポート体制の強化
課題4:キャリア発達の偏り
早期から専門分野に特化することで、幅広い業務経験を通じた総合的な人材育成が難しくなる可能性があります。特にゼネラリスト育成を重視してきた日本企業では、この点が懸念されています。
対応策:
定期的なジョブローテーションの機会提供
部門横断プロジェクトへの積極的な参加促進
専門性と汎用性のバランスを考慮したキャリア設計支援
社内副業制度の導入による複数部署での業務経験機会の創出
課題5:組織文化への適応
長年「会社が決める配属」を前提としてきた企業では、管理職や既存社員の意識改革が必要です。「自分たちの時代にはなかった特権」と捉える古参社員との軋轢が生じるケースも報告されています。
対応策:
全社的な理解促進のための内部コミュニケーション強化
管理職向けの研修実施による意識改革
制度導入の目的や期待効果の明確な説明
既存社員にも異動希望を出せる機会を設けるなど、全社的な仕組みへの発展
6.企業の人材育成戦略における配属選択制の位置づけ
配属選択制は単独の施策ではなく、企業全体の人材育成戦略の一環として位置づけることが重要です。ここでは、人材育成の観点から配属選択制を考察します。
●従来型人材育成からの転換
日本企業の伝統的な人材育成モデルは、幅広い業務を経験させることで「何でもできる総合職」を育てる「ゼネラリスト育成型」が主流でした。しかし、グローバル競争の激化やテクノロジーの進化により、特定分野での専門性を持つ「スペシャリスト」の重要性が高まっています。配属選択制は、このゼネラリスト育成からスペシャリスト育成へのシフトを象徴する施策と言えるでしょう。早期から専門分野に触れることで、若手のうちから高度な専門性を身につける機会を提供します。
● 「自律的キャリア開発」の促進
現代の人材育成では、会社主導ではなく、社員自らがキャリアを考え、必要なスキルを獲得していく「自律的キャリア開発」の重要性が増しています。配属選択制は、入社時点から「自分のキャリアは自分で考える」という意識を育む効果があります。企業は「キャリアオーナーシップ」という概念を掲げ、社員が主体的にキャリアを設計することを奨励していますが、配属選択制はその最初の一歩と位置づけられます。
●多様な人材の能力最大化
多様な価値観やバックグラウンドを持つ人材が共存する現代組織において、画一的な人材育成プログラムでは個々の潜在能力を最大化できません。配属選択制は、個人の志向や適性に合わせた育成経路を提供することで、多様な人材がそれぞれの強みを発揮できる環境構築に貢献します。例えば、論理的思考を得意とする人材はデータ分析部門で、コミュニケーション能力に長けた人材は営業部門で早くから活躍できるようになります。
●OJTとOff-JTの効果的融合
On-the-Job Training(OJT:実務を通じた訓練)とOff-JT(集合研修など)を効果的に融合させることは人材育成の要諦ですが、配属選択制はこの融合を促進します。複数部署でのローテーション期間は「拡張されたOJT」と考えられ、実務を通じた学びと集合研修を組み合わせることで、実践的なスキル習得を加速します。自ら選んだ部署では学習意欲も高まるため、OJTの効果が最大化されます。
●データに基づく人材育成の実現
配属選択のプロセスは、社員の適性や能力、志向に関する豊富なデータを生み出します。この情報は、その後の人材育成プログラムの個別最適化に活用できます。例えば、特定の部署を希望する社員に共通する傾向を分析することで、採用段階での適性評価の精度向上や、部署ごとに最適化された研修プログラムの開発につなげることができます。
7.若手社員のキャリア形成と自己決定権
配属選択制は若手社員にとって、キャリア形成における自己決定権の重要な一歩となります。この観点から、若手社員のキャリア形成について掘り下げます。
●「やりたいこと」の早期発見
多くの新卒社員は、「やりたいこと」や「向いていること」が明確でないまま入社します。大学での専攻と企業での業務は必ずしも一致せず、実際の仕事を経験してみなければ適性は分かりません。複数部署を体験できる配属選択制は、早期に様々な業務に触れる機会を提供し、若手社員が自分の適性や志向を発見するきっかけとなります。ある調査では、「自分のやりたい仕事」を見つけられた若手社員は、そうでない社員に比べて3倍の割合で「今の会社で長く働きたい」と考えているという結果も出ています。
●主体性と責任感の醸成
自ら選んだ配属先で働くことは、「自分で決めた」という主体性と「結果を受け入れる」という責任感を育みます。これは将来のリーダーシップ開発においても重要な要素です。一方で、自己決定には情報収集や比較検討など、一定の努力が必要です。配属選択制は若手社員に「自分のキャリアは自分で切り開く」という意識を早期から植え付ける効果があります。
● 「早期専門特化」vs「広範な経験」のバランス
配属選択制の導入にあたっては、「早期から専門分野に特化すべきか」それとも「幅広い経験を積むべきか」という議論が生じます。この二項対立ではなく、個人の志向や業界特性に合わせた柔軟なアプローチが望ましいでしょう。
例えば、IT業界では技術の進化が速いため早期の専門特化が有利な場合が多い一方、総合商社では様々な業界知識が求められるためゼネラリスト的キャリアが適している場合もあります。
●「適応」と「選択」のバランス
社会人としての成長には、「与えられた環境に適応する力」と「自ら環境を選択・創造する力」の両方が必要です。配属選択制は後者を強化しますが、前者の重要性も忘れてはなりません。理想的な配属選択制は、「完全な自由選択」ではなく、会社のニーズと個人の希望をバランスさせる「ガイド付き選択」と言えるでしょう。上司や先輩社員からのアドバイスを受けつつ、最終的な決断は自分で行うというプロセスが、両方の力を育む効果があります。
●Z世代・ミレニアル世代の価値観との親和性
Z世代(1990年代後半〜2010年代前半生まれ)やミレニアル世代(1980年代〜1990年代前半生まれ)は、「仕事の意義」や「自己実現」を重視する傾向があります。複数の調査によれば、彼らは高給や安定よりも「やりがいのある仕事」や「自分の成長につながる経験」を優先する傾向が強いとされています。配属選択制は、これらの世代の価値観と親和性が高く、彼らの仕事へのモチベーションを高める効果が期待できます。実際、ある企業の調査では、配属選択制を導入した後、若手社員の「仕事の満足度」が平均20%向上したという結果も報告されています。
配属先部署選択制は、単なる人事制度の変更にとどまらず、企業文化や働き方そのものを変革する大きな可能性を秘めています。九州電力の挑戦は、多くの企業にとって貴重な学びの場となり、未来の働き方を形作る一助となることでしょう。社員一人ひとりがその能力と情熱を最大限に発揮できる環境を整えることこそが、持続可能な企業成長と社会全体の発展につながる鍵となります。九州電力の取り組みが成功し、他の企業への波及効果を通じて、日本全体の人材育成と企業競争力の向上に寄与することを期待しています。今後も、人材戦略の最新動向に注目し、企業と社員が共に成長できる未来を共に創造していきたいものです。