カスタマーハラスメント対応策に必須!社内相談窓口の設置ガイド | アックスラーニング
カスタマーハラスメントへの対策は、行政機関や民間企業で近年活発化しており様々な取り組みが始まっています。群馬県でもカスハラ防止条例の施行へ向けて検討がされていますね。しかし、多くの行政機関や会社ではカスハラ対策等、何をどうしたら良いのか手が付けられていない状況ではないでしょうか?そこで、カスタマーハラスメントについて、筆者が実務で体験してきた時代の変遷を時系列で紹介し、今後どの様に取り組むべきかその指針をお示しします。
1.2000年代のカスタマー対応
2000年代、筆者は大手通信社のコンタクトセンターや進学塾、社会人スクール事業などカスタマーサポートの最前線にいました。この頃の顧客対応の基本は「とにかくお詫び」というスタンスの企業が多く、クレーマーに関する研究も進んでいないため不当要求や過剰クレームに対する対策もルールも全く未整備でした。このため、クレーム対応やカスタマー対応は「担当者の能力に委ねている」まさにそんな時代。ただ、現在も多くの企業・行政機関が、実はまだこの状態のままであると筆者は感じています。
この当時からクレーム対応の仕事と言えば、コンタクトセンターです。カスハラやクレーム対応の代表ともいえるコンタクトセンター業務の多くはテレマーケティング会社が業務委託をしていますが、そこへ電話をかけてくるエンドユーザーは「お客様企業のお客様」。立場が弱いコンタクトセンターの多くは、過剰な要求であっても耐え続けるしか無いケースがほとんどでした。この結果、心身が疲弊してしまうため、テレマーケティング業界は短期離職になりやすい産業、感情労働の代表格とも呼ばれていました。今もこうした状況は残っていますが、2000年代はクレーマーやカスハラ等が社員の労働環境を脅かしているという認識が経営サイドにほぼなかった時代といえるでしょう。
しかし、2005年を超えだすと「不当な要求・過剰なクレームはおかしい。適切な対応をしなくては」という小さな声が、小売店を中心に起こりだしました。これが、カスハラ対策のはじまりです。
2.2010年ごろ:過剰なクレームへの対応方法が増える
2010年を過ぎた頃、筆者は、国内でクレーム対応研修の老舗である研修会社に転職し、行政機関や企業のサービス等の調査・コンサルティングを始めました。その頃になると、過剰クレームや不当要求対策等、これまでのクレーム研修にはないメニューが求められ、「不当要求対策研修」「過剰クレーム対応マニュアルの整備」「警察との連携体制構築」「店頭でのビデオカメラ設置」「クレーム対策チームの発足」「24時営業店の警備強化」等、具体的な従業員保護の取り組みがおこなわれてきました。筆者の感想では、不当要求はカスハラと同じ事象ですので、カスハラが多かった企業では2010年過ぎたことから、専門的な研修を始めだしたかな、と思います。しかし、この頃の研修はまだ個人的なスキルというもので組織的対応は不十分でした。
この様な対応にいち早く手を挙げた企業は、筆者がすぐに思い出せる企業例を挙げると、イオン、ユニクロ、セブン&アイ・ホールディングス・・・でしょうか。これらの取り組みが厚生労働省や連合にも上がり、いよいよ顧客による嫌がらせや業務妨害、従業員の名誉棄損等には然るべき対処をするべきとの機運が高まってきました。
3.2016年ごろ:カスタマーハラスメントの検討開始
2015年を超えた頃から、カスタマーハラスメントという言葉がチラホラ聞かれるようになってきました。これは、セクハラやパワハラといったハラスメントが大きく脚光を浴びていたことも影響していると思います。そして、労働組合などを中心に「顧客による不当な要求や過剰なクレームの実態調査」や対策を求める声が上がり、2017年には連合(日本労働組合総連合会)が第一回目となる「カスタマーハラスメント対策に関する調査」を実施し政策提言をおこない問題提起を起こしました。これらを受け、厚生労働省も2018年に「カスハラに関する実態調査」を開始、企業向けガイドライン検討を始めました。
カスタマー・ハラスメントに関する調査2022
この当時、筆者は、金融機関や大手企業のお客様相談室等、各企業の中で最も重たい顧客対応を扱う部署のコンサルティングをしていました。経験上語れることは、企業や行政機関のサービス対応にも問題がありクレーム等を大きくしている、またクレームを発声させているケースも実は多数あるということです。ですので、カスタマーハラスメントなどという言葉が無かった頃から、顧客対応の最前線にいたコンサルタントの立場から申し上げると、カスハラも確かにありますが、企業サイドの理論に基づく質の悪いサービス(例:一度買ったものは一切返品しない、従業員教育ができておらずお詫びができない等)の見直しも、ようやくこの頃から始まってきたと感じています。
また、この頃になるとSNS等の普及による「電凸」「ネット上への晒し・デマ」、ネットの炎上対策も必要とされる時代となりましたため、カスハラや不当要求から従業員を保護するための措置へ大きく舵を切らなくてはならない経営状況へと移り変わってきました。こうして、これまでカスハラやクレームは担当者個人のスキルの問題であった時代から、労務問題・経営問題の時代へと様変わりしていきました。
4.2020年:カスタマーハラスメント対策の本格化
2020年、厚生労働省が「カスハラ対策企業向けマニュアル」を公開したことを皮切りに、世の中のカスハラ対策は急加速していきます。
以下、先端企業のカスハラ対策についてお示しします。
・カスハラ相談窓口の設置
・防犯カメラ映像の活用方針明確化、警察への通報基準策定
・カスハラ撲滅キャンペーン実施、従業員保護方針の明確化
・カスハラ対応ガイドライン策定、業界統一基準の確立
・カスハラ対応専門チーム設置、社内研修プログラムの強化
・警察庁:カスハラ事案への介入基準明確化
・総務省:カスハラに関する実態調査実施、対策ガイドライン策定
・日本チェーンストア協会:加盟企業向けカスハラ対策ガイドライン作成、業界横断的な対応基準確立
・日本フランチャイズチェーン協会:カスハラ防止共同宣言、加盟企業での統一的対応方針策定
【最新の取り組み】
・AIを活用したカスハラ予防システムの導入
・コールセンターでは、オペレーターとつながる前に「カスハラへの対応」をガイダンス
・顧客対応のポリシーをホームページに掲載
・デジタル記録システムの整備
・航空業界:業界横断的なブラックリスト作成の検討、国際的な対応基準の策定への参画
・顧客からの暴言・暴力などのハラスメント行為から従業員を守るため、ウェアラブルカメラの導入
現在、カスハラやクレーム研修、これに関連したコンサルティングメニューも増えてきたように思いますが、筆者のように実務経験から各社へ研修・コンサルティング実務を経てきた講師やコンサルタントは非常に少ないことも事実です。筆者は前職、クレーム研修では国内トップクラスの実績数、クレーム関連書籍国内トップの研修会社で、サービス改善やクレーム対策の組織コンサルティングをしていましたので、提携する講師で実務経験がある方がほとんどいないことをよく知っています。経験値の低い講師やコンサルタントは、「毅然と対応すればよい」とただ突っぱねるだけの対応を指導したり、「クレーマーの一部は精神疾患がある」等と人権への配慮が無い講義をする講師もいたりする現状です。ゆえに、カスハラ対策の検討や導入にあたっては、相談相手に気を付けることも忘れてはなりません。
また、民間企業と行政窓口の対応は、似ているところもありますが根本的に異なるところもあり、行政におけるカスハラ対応は民間企業と比べて容易ではありません。カスハラ条例が施行されたからと言って罰則規定が無い場合、効力に限界があると言えますし、そもそもペナルティが効果を発揮しにくいこともカスハラをする人の特徴の一つでもあるのです。
今後は、カスハラ対策を労務問題・経営問題と捉え、各企業のトップが責任をもって各社の実情にあった最大限の効果がある対策を講じるとともに、そもそもの各社のサービスは顧客にとって最良であるかその点検も求められていると認識していただくと良いでしょう。
◆関連ページ◆
→ カスタマーハラスメントに関する行政・企業の取り組み
→ カスタマーハラスメントとは
→ カスタマーハラスメント(カスハラ)対策とそのポイント
→ カスタマーハラスメント対応研修の考え方
→ カスハラ対応義務化で変わる企業責任
→ カスタマーハラスメント対応企業マニュアルの事例研究
→ カスタマーハラスメント対応のために知っておきたい関連法律
→ カスタマーハラスメントをしてしまう人の心理
→ カスタマーハラスメント対応策に必須!社内相談窓口の設置
◆講演や研修のご依頼・相談◆
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