地価公示が発表されましたが....
福島県の住宅着工件数の推移
このデータは、福島県の住宅着工件数の推移を示しています。平成8年(H8年)から令和5年(R5年)までの変化を見ると、特に平成23年(H23年)に東日本大震災が発生した影響が顕著に表れています。
着工件数の推移状況
1.震災前の減少傾向(H8年~H22年)
平成8年(H8年)の23,884件をピークに、徐々に減少。平成22年(H22年)には9,342件となり、約40%まで減少しました。
2.震災直後の急減(H23年)
平成23年(H23年)は7,826件(前年比84%)と、さらに減少しました。震災による直接的な影響(建設の一時停止、資材不足など)が大きかったと考えられます。
3.震災後の急回復(H24年~H26年)
平成24年(H24年)は11,353件(前年比145%)、H25年は15,233件(134%)と急増しました。 震災復興に伴う住宅再建需要が急増したと考えられます。
4.復興ピーク後の安定化(H27年~H30年)
H26年以降は15,000件前後で推移し、徐々に安定しました。一時的な復興需要が落ち着き、通常の住宅市場に戻っていったと考えられます。
5.令和以降の減少傾向(R1年~R5年)
R1年:11,043件、以降R5年:8,444件と再び減少傾向です。 震災復興がひと段落し、人口減少・経済状況の影響を受けている可能性があります。
まとめ
- H23年(震災年)に住宅着工件数が大幅に減少
- H24年~H26年にかけて復興需要で急増
- H27年以降は緩やかに減少し、令和時代に再び低水準へ
この動向は震災の影響と復興事業の進行が住宅市場に与えた影響を如実に示していると言えます。
令和6年の住宅着工件数の推移
令和6年(R6年)の福島県の住宅着工件数は、前年(R5年)に比べて県全体では約9割(87%)に落ち込んでいます。
福島市は前年(R5年)に比べて77%です。
郡山市は前年(R5年)に比べて66%と、都市部ほど落ち込みが激しくなっています。
市部は(R5年)に比べて66%
郡部は(R5年)に比べて128%と大きく伸びていますが、これは双葉郡でR5年252棟がR6年515棟と2倍以上に増えた影響です。
現下の住宅着工件数が落ち込んでいる理由としては、以下の要因が考えられます。
1.住宅需要の減少(復興需要の収束)
- 福島県では、東日本大震災(2011年)後の復興需要により、一時的に住宅着工件数が増加していました。
- しかし、震災から10年以上が経過し、復興関連の住宅建設が一巡したため、新規の需要が減少しています。
2.物価・建築コストの上昇
- 建築資材や人件費の高騰により、新築住宅のコストが上昇し、建設が抑制されています。
- 特に、ウッドショック(木材価格の高騰)や、世界的なインフレの影響による建築コスト増が影響していると考えられます。
3.金利上昇と住宅ローン負担の増加
- 住宅ローン金利の上昇により、住宅を購入しづらくなっている可能性があります。
- 2023年~2024年にかけて、日本の金融政策が変わりつつあり、住宅購入を控える動きが出ていると考えられます。
4.人口減少と少子高齢化の影響
- 福島県では、震災後の人口流出が続いており、住宅需要の減少につながっています。
- さらに、少子高齢化の進行により、新築住宅を建てる世代が減少していることも影響しています。
5.2024年問題(建設業の労働環境変化)
- 2024年4月からの「働き方改革関連法」による労働時間規制の強化により、建設業界の人手不足が深刻化し、住宅着工が遅れている可能性があります。
まとめ
令和6年の住宅着工件数が約9割に減少している背景には、震災復興需要の収束、建築コストの上昇、金利の上昇、人口減少、建設業界の労働環境の変化など、複数の要因が絡み合っていると考えられます。
今後の動向を見極めるためには、特に建設コストや経済政策の変化に注目する必要があります。
福島県の住宅地の地価はこれからどうなる
福島県の地価は、上記のように新規の住宅着工件数が大きく減少しているにもかかわらず、地価公示・地価調査では上昇傾向が続いています。
それはなぜなのか、今後の推移を考えると、以下のような要因が絡み合っており、住宅着工件数のみでは測れないことがわかります。
1.地価上昇要因
(1) インフレと資材コスト上昇の影響
- **全国的な物価上昇(インフレ)**により、土地の取引価格も上昇傾向にあります。
- 特に、建築コストの高騰(人件費・資材費)が続いており、新築住宅の供給が減ることで土地の希少性が高まる可能性があります。(なぜ、新築住宅の供給が減ることで土地の稀少性が高まるのかについては、次のコラムで解説します)
(2) 復興・インフラ整備の影響
- 福島第一原発事故後の廃炉作業等の復興事業が続いているため、特定のエリアでは地価が底堅く推移しています。
- 郡山市・いわき市・福島市などの一部では、商業地の需要が増加しているところがおり、地価上昇の要因となっています。
(3) 企業進出や再生可能エネルギー開発
- 震災後、福島県では再生可能エネルギー(風力・太陽光)関連のプロジェクトが進められており、一部のエリアで土地需要が増えています。
- 産業誘致政策により、企業進出が進めば、特定エリアの地価は上昇傾向が続く可能性があります。
2. 地価下落リスク
(1)住宅需要の低迷(人口減少・住宅着工の減少)
- 住宅着工件数が減少していることから、新築住宅の需要が低下すれば、住宅地の価格は下落圧力を受けます。
- 特に、過疎化が進む地域では土地需要が低下し、今後は価格が下がる可能性があります。
(2) 震災の影響による人口流出
- 福島県全体では震災後の人口流出が続いており、将来的に土地需要の減少が懸念されます。
- 放射線の影響がある地域では、いまだに居住制限があり、地価の回復が限定的なエリアもあります。
住宅ローン金利上昇の影響
- 住宅ローン金利が上昇すれば、マイホーム購入を控える人が増え、住宅地の価格が下落する可能性があります。
3. 今後の地価動向予測
(1) 都市部(郡山市・いわき市・福島市)
短期的には上昇傾向が継続するが、長期的には人口減少の影響を受けて緩やかに下落する可能性。
(2) 中小都市・郊外エリア
住宅需要の減少により地価は下落傾向で推移する。企業進出や再生可能エネルギー開発エリアは極一部で上昇の可能性。
(3) 被災地エリア
制限区域や過疎地では下落傾向が続くが、 復興支援拠点やインフラ整備が進むエリアは一定の回復余地ある。
4. まとめ
- 都市部(郡山・いわき・福島市)は短期的に地価上昇が続く可能性が高い。
- 3市以外・郊外では住宅需要の低迷で、地価下落圧力が強まる。
- 再生可能エネルギー関連や産業誘致が進むエリアは個別に上昇。
- 長期的には人口減少・住宅需要低下が地価の下落要因となる。
結論として、福島県の地価は二極化し、都市部・再開発エリアは上昇する一方で、住宅需要の少ない地域では地価下落が続くでしょう。
住宅着工件数と地価の関連性
都市部(郡山市・いわき市・福島市)で住宅着工件数が減少していることを考えると、住宅地の地価下落は今後本格化する可能性があります。
現在は、地価公示や地価調査で上昇傾向が見られるものの、それが継続するかどうかは慎重に判断する必要があります。以下の点を踏まえると、都市部でも住宅地の地価下落が始まる兆候があると考えられます。
1. 住宅着工件数の減少は地価下落の前兆
- 令和6年の住宅着工件数が前年比約9割に落ち込んでいることは、住宅需要が低下している証拠。
- 新築住宅の供給が減れば、土地の需要も減るため、住宅地の地価には下落圧力がかかる。
- 地価は「住宅需要が先行指標」であり、住宅着工件数が減少した後、一定のタイムラグを経て地価が下落する傾向がある。
2. 住宅地価は「短期的な上昇」と「長期的な下落」が交錯
(1) 短期的に地価が上昇している理由
- インフレ・建築コスト高騰により、住宅販売価格が上昇し、それが地価の押し上げ要因となっている。
- 復興関連の需要が続いており、特定のエリアではまだ住宅建設が行われている。
- 低金利政策の影響で、2023年頃までは住宅購入意欲が一定程度維持されていた。
(2) 今後、住宅地の地価が下落する理由
- 住宅着工件数の減少 → 住宅需要の減少 → 土地の需要減少
- 建築コストが高止まりし、住宅取得が難しくなっている
- 人口減少の加速(特に若年層)により、住宅需要が縮小
- 住宅ローン金利の上昇が予測され、住宅購入を控える動きが出る可能性
- 地価公示や地価調査のデータは過去の取引を反映しているため、実態とタイムラグがある
これらの要因から、都市部の住宅地も今後地価下落が進む可能性が高いと思われます。
3. 福島県の地価は「ピークアウト」しつつある可能性
- 住宅地の地価は短期的に上昇していたが、住宅着工の減少が続けば下落に転じる可能性が高い。
- 特に、住宅購入層(若年世代)の減少が進む中で、長期的に住宅需要が伸びる見込みは少ない。
- 2024年以降の経済状況(金利・物価・建築コストの推移)次第では、都市部でも住宅地価の下落が顕在化する可能性がある。
4. まとめ
- 現時点では地価上昇傾向が続いているが、住宅着工件数の減少は地価下落の前兆となる可能性が高い。
- 住宅需要の減退(人口減少・住宅ローン金利上昇・建築コストの影響)を考えると、都市部でも住宅地価のピークアウトが近い。
- 長期的には、福島県全体の地価は緩やかに下落していく可能性が高い。
今後、住宅地価がどこまで下がるかは、金利・経済政策・建築コスト次第ですが、少なくとも住宅着工件数の減少が続く限り、都市部でも住宅地価の下落は避けられないと考えられます。