管理不全空家を知っていますか
農地の売買には様々な制約があります
農地取得時の「下限面積要件」がありました
農地取得時の「下限面積要件」とは、農地を取得する際に最低限必要とされる耕作面積の基準のことです。これは、農地法第3条に基づき、農地を買ったり借りたりする場合に適用される要件の一つでした。
具体的な内容としては
・各都道府県の農業委員会が設定し、多くの地域では 50アール(5,000㎡) を下限面積として定めていました。
・これは、一定規模以上の農地を確保することで、農業の効率的な経営を促す目的がありました。
・そのため、小規模農地の取得や兼業農家、新規就農者にとってはハードルとなっていました。
その為のの影響としては
・50アール未満の農地しか確保できない場合、農業を始めるための土地取得が困難だった。
・小規模な農地を希望する新規就農者にとって、不利な条件となっていた。
・すでに農地を所有している人も、一定の面積が確保できないと追加取得ができなかった。
令和5年の農地法改正による農地法第3条関係の変更点1
農地取得時の「下限面積要件」が撤廃されました
令和5年4月1日より、農地法の改正に伴い、農地取得時の「下限面積要件」が撤廃されました。これにより、従来は農地を取得する際に必要とされていた最低耕作面積の制限がなくなり、小規模な農地でも取得が可能となりました。
農地取得に際しては、以下の要件が引き続き適用されます
・全部効率利用要件:取得後、所有するすべての農地を効率的に利用して耕作すること。
・農作業常時従事要件:取得者またはその世帯員が、年間150日以上農作業に従事すること。
・地域との調和要件:周辺農地の効率的かつ総合的な利用に支障を及ぼさないこと。
これらの要件を満たすことで、農地の取得が認められます。
この改正により、小規模な農地でも取得が可能となり、新規就農者や小規模経営を希望する方々にとって、農業参入のハードルが下がりました。
農地の媒介依頼と購入申込を貰い、農地法3条許可が得られれば!
切っ掛けは査定依頼
at-homeの売却価格査定依頼から不動産の売却価格査定依頼を受けたのがこの案件の始まりです。
高速道路のインターチェンジに近く、市街化調整区域ではありましたが、県道すぐ背後で、近くまで市街化区域に指定されている立地の農地(休耕地)でした。東側・西側隣地は既存宅地でしたので、十分農地から他の用途に転換可能な土地であると判断し価格査定を引き受けました。
農地の分類
農地は、土地の性質や立地条件によって 「1種農地」「2種農地」「3種農地」 に分類されます。これは、市街化の可能性や農業の継続性を基準にした区分で、主に農地転用(農地を宅地や商業地に変更すること)の許可基準に関わります。
- 第1種農地は、最も保護されるべき農地で、農業生産力が特に高い(土壌が良く、大規模な農地)、周辺に宅地化の進行がない(市街化の影響が少ない)、大規模にまとまった農地(農業振興地域に指定されている場合が多い)。原則 転用不可(農地のまま維持する必要がある)で、ただし、公益性の高い施設(学校・病院・道路など)の場合は、特別に許可されることがある
- 第2種農地は、農地として重要だが、一定の開発可能性がある農地。生産力は高いが市街化の影響を受ける可能性があり、周囲に宅地や工業地があり、将来的に市街化が見込まれ、中小規模の農地が多い。条件付きで転用可能で、農業以外の適切な利用計画があり、やむを得ない場合は許可される
- 第3種農地は、市街化が進んでおり、転用が比較的容易な農地。すでに宅地・商業地・工業地に囲まれ、道路や鉄道が近く、利便性が高く、農地としての生産性は低い農地。比較的転用しやすい(住宅や商業施設への転用が認められやすい)が、農地転用許可の手続きは必要
農地の分類を農業委員会に照会した結果
農地の価格は農地の分類によって大きく変わってしまいます。そこで農業委員会に農地の分類を照会しました。
結果は約2週間で帰ってきました。その結果は何と第1種農地でした。
前記の立地から第2種農地と見込んでいたところ、予想外の結果でした。
行政がその分類を通知した以上、この査定対象不動産は農地以外の利用が出来ない農地で、査定価格も当然、地域の純農地の価格という残念な結果になってしまいました。
依頼者様は県外在住の方で、相続した農地を処分する必要があるため純農地の安い金額でも売却したいということで、農地価格で農地を農地として売却するという媒介契約を結び、売出しました。
農地の購入申込をいただきました
売出しから暫くして、購入申込が入りました。購入希望者は会社経営もしているが、農地を所有しており農家資格のある方でした。
売買契約書を作成し、行政書士に農地法3条申請を依頼しました。
農地法3条の許可が出ない
行政書士が、農業委員会と農地法3条申請の打合せを課されていると、農業委員会から農地法3条許可は出来ないとの話になってしまいました。何故かと理由を確認したところ、「購入希望者様について農家であるとは把握をしているが、現在持っている農地の管理・活用方法が不適切なため、新たに農地を購入して適切に利用しないおそれがあるため、」とのことでした。
令和5年の農地法改正による農地法第3条関係の変更点2
農地管理適正化要件の新設
農地の「適切な管理」が厳しくチェックされるようになりました。農地を取得した後、適切に管理・活用できる能力があるかが審査されます。取得後に放置(耕作放棄地化)すると、ペナルティを受ける可能性があります。
まとめ
- 農地取得のハードルが下がり、新規就農者や小規模農業がやりやすくなりましたた。
- ただし、取得した農地を適切に管理する義務が強化されました。
この改正により、農業の活性化が進められる一方で、遊休農地の有効活用が求められています。