地価公示が発表されましたが....
公示地価が発表されました
県全体では地価が上昇しました
今年3月下旬に発表された地価公示では、県内の住宅地は地価上昇127地点(前年123地点)、横ばい63地点(73地点)、下落122地点(116地点)で、3年連続で上昇地点数が下落地点数を上回り、県平均変動率は、住宅地が0.7%(前年0.5%)で3年連続でプラスとなりました。
福島市の地価も上昇しました
福島市の住宅地の地価は、供給の少ない市街地中心部や中心部近郊の住宅地域では需要は安定的に推移し、総額が手頃な郊外にも需要がやや拡大し、中心部から遠隔に位置する住宅地や市街化調整区域では、ほぼ前年並みの地価下落が継続しており、平均で昨年の49,000円/㎡から49,800円/㎡に1.1%(前年0.7%)上昇したと発表されました。
福島市の土地取引件数の推移
福島市の土地取引件数は下図の通りで、漸減傾向で推移しています。
福島市住宅地の基本統計量
土地取引の当事者にアンケートを送り収集したデータを、国交省が不動産情報ライブラリーにこの4月から公開している主要都市の土地取引価格の概況があります。
その中に福島市の基本統計量(住宅地)がありますので、その数字を見てみますと下図の通りです。
2023年第3四半期は平均値が50,000円/㎡から43,000円/㎡と下落し、中央値は60,000円/㎡から35,000円/㎡へ大きく下落し、2023年第2四半期とは取引価格の分布が大きく変化したのが見て取れます。
第2四半期は中央値が60,000円/㎡、第3四分位数が74,500円/㎡でこの範囲に全体の25%が集中し、安い価格帯の取引も幅広く存在しているものの、比較的高額の取引が多いことから平均価格を引き上げていました。
一方、第3四半期は中央値が35,000円/㎡、第1四分位数が18,000円/㎡でこの範囲に全体の25%が集中し、高い価格帯の取引は幅広い範囲に分散してしまっていることから平均価格が下がってしまっています。最新の取引時点について翌期以降大きく標本数が変わることがあるので注意する必要はありますが、この統計分析の結果は現実の不動産市場の肌感覚とあっているように思われます。
公示地価の推移は実勢の地価の推移から遅れる?
公示地価が実勢の地価の後追いになる理由はいくつかあります。
1. 時期の遅れ
公示地価は毎年1月1日時点の価格が3月下旬に公示されますが、実際の取引価格は年間を通じて変動します。公示地価の算定には時間がかかり、公示されるまでの期間は作業開始から9ヶ月ほどかかります。そのため、公示地価は実際の市場価格の後追いとなることがあります。
2. データ収集と処理の遅れ:
公示地価は国土交通省取引当事者にアンケートを送り収集したデータをもとに算出されます。データの収集や処理には時間がかかり、地価を公示するまでにどうしても遅れが生じます。
3. 市場の変動:
不動産市場は様々な要因によって影響を受けます。景気の変動、需要と供給のバランス、金利の変動、地域の発展などが地価に影響を与えます。これらの要因は公示地価と実勢の地価のズレを引き起こす原因となります。
まとめ
3月に発表された地価公示では、県内の住宅地の地価は下落地点も増えているものの全体としては、3年連続でプラスとなっています。福島市の地価も平均上昇率が前年を上回るプラス1.1%となっています。
しかし、この結果は、日々不動産を扱い不動産市場に身を置く者の感覚とズレがあるように思われます。
福島市の不動産取引価格の統計データを見てみると2023年第2四半期と第3四半期で大きな違いが見て取れ、取引の中心が高額な取引からより安い取引へと変わっているようです。
統計的には地価が下落局面に入っているように思われます。
なぜなら、地価公示は、作業開始から結果公表までに時間が掛かります。そして、作業に使うデータはできるだけ最新の事例を使いますが、作業開始以前に取引された取引事例を使わざるを得ません、さらにその間にも刻々と不動産市場は変動しているので、公示地価は、市場の後追いになってしまう可能性があるからです。
不動産バブル崩壊後の地価下落局面や東日本大震災後の復興需要による地価上昇局面などがその例です。
実際、今年の地価公示でも調査地点の過半数が横ばい乃至は下落していることから考えれば、やはり地価下落はもう既に始まっており、平均変動率のマジックで地価が上昇している錯覚にとらわれているだけなのではないでしょうか。