大谷〇平選手が贈ったグローブのもうひとつの「本当の意味」

山崎憲治

山崎憲治

テーマ:非認知能力

大谷〇平選手が贈ったグローブのもうひとつの「本当の意味」

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2023年、大谷翔平選手が全国の小学校にグローブを寄贈したニュースは、多くの人の心を温かくしました。
「子どもたちに野球を楽しんでほしい」
そんなシンプルで優しいメッセージとして受け取った方も多いでしょう。

しかし、現場で子どもたちと向き合ってきた立場から見ると、
このグローブ寄贈には、もう一段深い“意味”が込められているように感じてなりません。



今、子どもたちは「投げる経験」を失っている



外遊びの減少、公園でのボール遊び禁止、スマートフォンやゲームの普及。
その影響で、「投げる」という基本的な動作をほとんど経験しないまま成長する子どもが、年々増えています。

文部科学省の体力・運動能力調査でも、小学生の投力は長期的に低下傾向にあります。
これは単なる運動能力の問題ではありません。

実際の現場では、
集中が続かない
学習につまずきやすい
友だちとの関係が不安定
といった悩みを抱える子どもほど、「投げる経験」が極端に少ない傾向が見られます。



投げる力は「脳をまとめて動かす力」



投げる動作は、非常に高度な脳活動を伴います。
距離や方向を判断する【前頭前野】
動きを微調整する【小脳】
見る・感じる・動かすを統合する【感覚統合】
相手を意識する【社会脳】

これらが同時に働くため、
**投げることは「脳の総合トレーニング」**とも言えるのです。

特に「狙って投げる」「相手に届ける」という行為は、
学習や対人関係の土台となる脳の働きを自然に育てます。



大谷選手のグローブが持つ“もう一つのメッセージ”



大谷選手は、グローブ寄贈に際して
「キャッチボールを通じて、誰かとつながってほしい」
という趣旨のコメントを残しています。

キャッチボールは、
相手を見て、タイミングを合わせ、気持ちを共有する運動です。

これはまさに、
現代の子どもたちが失いつつある「人と関わる力」を育てる行為
そのものだと言えるでしょう。



現場で見てきた、子どもたちの変化

私自身、20年以上にわたり多くの子どもたちと向き合ってきましたが、
投げる動きが日常に入ったとき、子どもたちは驚くほど変化します。
表情が柔らぐ
集中力が戻る
失敗を怖がらなくなる
友だちとのやり取りが増える

最初はボールを怖がっていた子が、
「投げられた」という小さな成功体験をきっかけに、
学習面や生活面でも前向きになる姿を、何度も目にしてきました。



グローブは「未来へのきっかけ」


大谷〇平選手が贈ったグローブは、
単なる野球用具ではありません。

それは、
子どもたちの脳と心、そして人とのつながりを取り戻すための“きっかけ”
なのだと思います。

投げる力は、特別な才能が必要なものではありません。
ほんの短い時間、安全な環境で、誰でも育てることができます。



まとめ



子どもたちの「ちょっと気になる行動」は、
成長のサインであることが少なくありません。

投げる経験を通して、
子どもが本来持っている力が引き出されることを、
現場に立つ者として強く感じています。


参考文献・資料

池谷裕二『進化しすぎた脳』/講談社ブルーバックス
藤井佐和子『なぜヒトだけが投げるのか』/講談社
久保田競『子どもの脳の発達と運動』/日本評論社
文部科学省『体力・運動能力調査』
河合隼雄『子どもの心を読み解く』/岩波書店
ダニエル・ゴールマン『EQ 心の知能指数』/講談社
NHKスペシャル取材班『発達障害 解明される未知の世界』/NHK出版
ウィリアム・カルヴィン『投げる人間』/紀伊國屋書店
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山崎憲治(教育アドバイザー)

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独自開発の運動プログラムや学習プログラムで運動能力を伸し、やる気や集中力、脳の認知機能(理解・判断・記憶・思考等)を高めて学習することで学力も向上する文武両道実現。心身共に子どもの健やかな成長を育む。

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