危険な擁壁の見分け方
多くの方は「宅地の寿命」について考えたことがないのではないでしょうか。
宅地が平地なら問題なのですが、傾斜地の多い日本では宅地の寿命についても考える必要があると思います。しかしながら、住宅を購入する際に建物の寿命や耐久性は考えても土台となる擁壁や宅地について真剣に考えている方は少ないと感じているため、擁壁などの寿命について書いてみたいと思います。
住宅と同じように擁壁にも寿命があります。
擁壁の種類は、コンクリートの塊で造られた「重力式擁壁」もあれば、ブロックを組み合わせて生コンクリートで一体化した「間知ブロック積擁壁」や鉄筋コンクリート造の「L型擁壁」など様々です。
近年造成で多く採用されているL型擁壁は、長期的にみるとコンクリートが中性化することに伴って内部の鉄筋が酸化して腐食してしまうため、重力式擁壁と比較すると寿命は短いと考えています。
たとえば市営住宅などのアパートは70~80年が寿命として建て替えが行われるようですが、L型擁壁も基本的に同じような構造であるため、寿命は大して変わらないと考えるべきだと思いますし、さらに言えば背面からの湧水などで過酷な状態となる可能性が高いため50~60年持てば良い方なのかもしれません。もしかすると次に住宅を建て替える時には擁壁も造り替えなければいけない状況になっているかもしれないのです。
それでは傾斜地の宅地について考えてみます。
傾斜地に造られた宅地では一般的に盛土の造成が危険だと言われていますし災害も多いのですが、実は切土の造成も安全だとは言えないのです。
住宅を建てるために斜面を大きく切り取ってしまっている建築業者さんの施工を見ることがあります。地山がしっかりしていると判断したのかは分かりませんが、擁壁の設置や斜面の保護をしないのであれば良い施工だとは言えません。
時間の経過と共に盛土は強くなる傾向にありますが、切土はその逆で弱くなるのです。
自然の地形は、数百年、数千年、更に前から浸食や隆起を繰り返して出来た「安定勾配」で形成されています。そこに人間が手を加えるのですから不安定なになるのは当然と考えるべきです。切り取った地山がある程度しっかりしていたとしても風化防止の処置程度は最低でも施すべきだと思います。
擁壁など人工的に造られたものの寿命は思っているほど長くありません。
造り替えないといけない時には必ず高額な費用が必要となります。
これから住宅を建てるのなら、出来ることならば(特に高低差のある)擁壁が必要でない安全な場所を選んでほしいと思います。
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