古い擁壁の危険性について
私たちの周りには危険な擁壁が多く存在していることを知らない方が多くいます。
写真のように上下で積まれた石の種類や形が違う擁壁の多くは「増積み擁壁」であり危険な擁壁のひとつとされています。
当初①までの高さの擁壁の上に②の擁壁を増し積みしているものであり、宅地を少しでも広げたいという思いから工事を行ったものと考えられる擁壁です。
本来①までの高さに耐えられる構造で造られた擁壁の上に何十トンもの荷重②を載せているのですから危険な状態になるのは当たり前と言えるでしょう。
宅地造成を規制する「宅地造成等規制法」が制定されたのは昭和37年であり、それ以前の工事は「増積み擁壁」のように今では考えられない施工を行っている現場だらけと言っても過言ではないと思います。
昨年9月に北九州市内で崩壊した擁壁も「増積み擁壁」でした。
この災害は梅雨時期ではなく9月の晴天時に崩壊しています。崩壊形態は当初の石積み(下段)が増し積みされた擁壁(上段)とその背面に盛られた土砂の荷重に耐えられなくなり崩壊したものでした。また、当初斜面となっていた部分が「すべり面」となったようです。恐らく長い年月をかけて盛られた土砂がゆっくりと動いて崩壊したものと推測されます。
危険な擁壁と考えられるものは「増積み擁壁」以外にも数種類ありますのでご紹介いたします。
「空石積み擁壁(野面石積み、玉石積みなど含む)」は昔から施工されてきた擁壁ではありますが、現在では安全な擁壁として考えられていません。背面にコンクリートが充填されていないため石の風化や外的要因によって「膨らみ」や「せり出し」等の変状が確認できる非常に危険な状態のものも数多く存在する擁壁です。
「二段(多段)擁壁」は「増積み擁壁」と同じように下段の擁壁に負担をかける危険な擁壁です。背面の地山が岩盤で安定したものもありますが、非常に危険なものも多くあります。
「張出し床板付擁壁」も下段の擁壁に負担をかける危険な擁壁となっています。
床板の下に支柱が設けられているものもありますが、構造的には危険な擁壁となります。
また、コンクリート擁壁に見えるものの中には石積みの表面にモルタルを塗っただけの危険な状態のものもあります。
数十年に一度と言われる猛烈な豪雨が毎年のように降るようになった昨今、擁壁の崩壊も加速度的に増加しています。
危険な擁壁を知ることで災害から身を守ることにもつながりますので、身近に擁壁がある場合は「危険な擁壁」に当てはまるか否か是非確認して頂きたいと思います。
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