西日本豪雨の被害状況(北九州市)
北九州地区では、この梅雨時期に多くの石積みが崩壊しました。
崩壊してしまうと復旧工事に大変な費用が必要となります。では、なぜ崩壊したのか。どうすれば災害にならないように出来るのか。その防災ポイント等を実際の災害現場を検証して考えてみました。
崩壊したこの現場の石積みの高さは約6m~7mで、途中に通路を挟んでいる「二段擁壁」の状態でした。残っている両側の石積みの状態を見ると、勾配は1:0.2(約79度)とかなり急勾配です。現在の基準を満たす大型ブロックを積んだとすれば1:0.4(約68度)にはなるはずですので、比較するとかなり立った状態だと言えます。
写真の通り、すべり面が露出していました。このすべり面から見える地山はかなり風化した粘性土でした。
梅雨が明けて数日経っていたのですが地山の水分はまだ結構残っていました。粘性土の場合、水は含みにくいのですが、一度含むと抜けにくいという特性を持っています。つまりこの現場ではかなりの水が地中に入り込んでしまっていたと考えられます。
水の集まる原因として地形が大きく影響しますが、この現場は、ほぼ山の上と言える場所であり、近隣から水が流れ込む要素が殆どありませんでした。そこで注目したのが雨水の流末処理です。
やはり垂れ流しでした。
他の雨樋の水も垂れ流しとなっていました。
次に確認したのは崩壊した石積みの状態です。
崩壊した石積みの石の背面(「控え」と言う部分)が確認できたのですが、殆ど風化していませんでした。
これは近隣の同じ石(砂岩)を使った石積みですが、表面の風化は顕著であり、合端部分の強度も落ちていると考えられる状態で、決して良いとは言えないものでした。
これらから今回の崩壊原因を推測すると、「二段擁壁構造で急勾配、そして、合端部分の強度が落ちる程に表面が顕著に風化した石積みの背面に多量の水が断続的に流れ込んでしまった。粘性土の地山が飽和状態となったことにより自立できなくなったため、すべり面より外側の地山が移動土塊となって石積み側にすべり始めてしまう。そしてその応力に耐えられなくなって不安定な石積みが崩壊した。」と言う事になります。
今回の場合、崩壊防止策を考えると石積みを補強する事も非常に有効ではありますが、雨水の垂れ流しを無くすことが重要であると考えます。
崩壊原因は、現場ごとに様々な要因があるため、その判断は難しいのですが、雨水が垂れ流しになっているかどうかは一目瞭然です。かなり危険な要因ではありますが、簡単に対処できる原因ですので心配な方は是非確認して頂き、その様な状態であるならば早急に対処して頂きたいと思います。
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