連載:社長の「決める力」実践メソッド【第5回目】
財務DXは“効率化”ではない。判断を誤らないための最低条件だ
―― なぜ、数字を人の頭で追う経営は必ず破綻するのか ――
皆さん、こんにちは。
株式会社飛躍のミカタ武村欽也です。
ここまで、財務支援シリーズでは
次の順で話をしてきました。
第1回:PLだけでなく、BSを見ろ
第2回:建設業なのに商業簿記のPLで経営していないか
第3回:原価が見えない会社では、採用も投資も必ず失敗する
ここまで読んで、
多くの社長が同じ地点に立っているはずです。
「言っていることは分かる。
でも、全部は追えない」
その感覚は正しい。
そして、そこが限界点です。
財務が回らなくなる原因は「能力不足」ではない
まず、はっきりさせます。
・社長の理解力が低いわけではない
・経理担当が怠けているわけでもない
・税理士が無能だと言いたいわけでもない
問題は、量と頻度です。
・月次の数字
・工事別の原価
・未成工事支出金
・借入と返済
・採用・投資の判断
これらを、
人の頭とExcelで追える前提そのものが無理なのです。
「分かっているつもり」が一番危ない
財務で一番危険なのは、
何も分かっていない状態ではありません。
「だいたい分かっているつもり」
の状態です。
・原価率はこのくらい
・利益は出ている
・たぶん大丈夫
この“たぶん”が積み重なると、
・判断が遅れる
・投資が怖くなる
・採用が場当たりになる
経営が、静かに鈍っていきます。
財務DXの本質は「考えなくていい」を増やすこと
財務DXというと、
・会計ソフト
・クラウド
・AI
といった言葉が並びます。
しかし、本質はそこではありません。
社長が「考えなくていい判断」を増やすこと。
・原価は自動で集まっている
・利益は構造で見えている
・危険ラインは事前に分かる
この状態を作ることが、
財務DXの目的です。
DXは“攻め”ではなく“守り”である
DXというと、
成長戦略や効率化の話になりがちです。
しかし、財務DXは違います。
間違えないための仕組み。
壊れないための仕組み。
・勘で採らない
・勢いで投資しない
・忙しさで判断しない
これを守るための、
経営防衛線です。
DXがない会社で、最後に起きること
財務DXを入れないまま進むと、
最終的に起きるのはこの状態です。
・社長しか判断できない
・判断が遅れる
・チャンスを逃す
・でも原因が分からない
そして、
「もっと頑張ろう」と言い出す。
ここまで来ると、
経営は消耗戦になります。
最終まとめ
財務DXは、
・楽をするため
・人を減らすため
・流行に乗るため
のものではありません。
経営判断を、
人の限界から切り離すための装置です。
BSを見ろ。
PLを疑え。
原価を把握しろ。
これができる会社だけが、
次の一手を“落ち着いて”打てます。
それを支えるのが、
財務DXです。
これで
【財務支援シリーズ】は完結です。



