「永年使っているマルニ木工さんの椅子の籐がやぶれたんです・・・。」
「初めての子どもが生まれた時に、お祝いでもらったベビーチェアを見てください!」
「こんなに割れてしまっても修理できますか?」
「記念のベビーチェアなので、直してお部屋に飾っておきたいのです。」
愛媛県西条市・N様がご来店くださいました。
このベビーチェアの主材料は、ヒノキでした。
ヒノキなどの針葉樹は成長が早い樹木で、その木が持つ温かさと優しさが特徴ですが、柔らかいため耐久性や強靭さは広葉樹と比べますと劣ります。
そのため無理な使い方をすれば、こんな風に割れてしまうのです。
修理作業中①/割れてしまった前脚づくり
N様のベビーチェアは、割れてしまった前脚を圧着しても耐久性が出にくいと思い、新しい前脚を作ることとしました。
最初の作業は、割れてしまった前脚のベビーチェア本体に残っている部材取りです。
ドリルドライバーで木栓を砕き、インパクトドライバーで木ネジを取り除き、前脚の残り部材を取り外しました。
「ものづくりは、治具づくり」N様の作業は、この割れてしまった前脚を治具とします。
取り外した前脚を元に、新しいヒノキ材に形状を移すべく墨付け作業をしました。
続いて、動力機械の帯のこ盤で墨付けに沿って切り取っていきました。
木工作業で大切なことは、仕口部(欠き取り部)の正確な墨付け作業です。
ベビーチェア内側面の墨付けです。
私は、作業ミスが無いように欠き取り部分には必ず×マークを付けるようにしています。
ベビーチェア外側面の墨付けです。
墨付け線が正確ですと、欠き取り加工が正確にできます。
ベビーチェア内側面の欠き取り加工です。
ベビーチェア外側面の欠き取り加工です。
修理作業中②/新しい前脚とベビーチェア本体の削り合わせ
新しく作った前脚をベビーチェア本体に組み入れていきます。
『正確な墨付け→欠き取り加工』をしたはずの仕口部(欠き取り部)のはずですが、最初からは上手く組み入れることはできません。
新しい前脚や仕口部を、鑿(のみ)と鉋(かんな)で削り合わせなど微調整しながら組み込んでいきました。
木ネジ止め+木栓用の穴開けもしました。
修理作業中③/新しい前脚の圧着+水平バランス調整作業
新しい前脚の削り合わせや微調整ができますと、接着剤を入れてベビーチェア本体に圧着していきました。

約12時間の養生時間を経ますと接着剤が完全乾燥します。
組み立てただけの椅子はどの椅子も「ギッコン バッタン」しています。
そのため、組み立て直後のベビーチェアをガラスの厚盤(水平盤)に乗せて、「ギッコン バッタン」しないように水平バランス調整していきました。(この作業は、家具職人の基本作業です)
横切りのこで、水平バランス調整と脚ウラが床に平行に接するように作業しました。
修理作業中③/植物性オイル仕上げでの塗装作業
N様のベビーチェアは、クラフト品(手づくり作品)的なものづくりをされていました。
クラフト品(手づくり作品)的な家具の塗装には、植物性オイル仕上げがされている場合が多くあります。
TOKI家具館メンテナンスで永年使っている植物性オイルは、オスモ&エーデルさんのオスモカラーです。
オスモカラーの#1101(エクストラクリアー)→#3101(ノーマルクリアー)→ワックス&クリーナーの順番で仕上げていきました。
植物性オイル仕上げが進みますと少しづつあめ色になっていきます。
修理完成後/新しく作った前脚を組み入れたベビーチェアをN様にお届けしました。
修理作業ができあがったベビーチェアを当店の撮影用ステージで撮った写真です。
同じヒノキ材で作った新しい前脚は、30年以上も経年変化しているベビーチェア本体と濃淡があります。
新しい前脚も経年変化していき次第に本体と色合いが近くなっていくものと想像しています。
「わあ~!こんなにきれいに直るんですね・・・。」
N様から、配達時にありがたいお言葉をいただきました。
『初めてのお子様が生まれた時に、お祝いでもらったベビーチェア』の修理作業ということで、耐久性重視で考えて作業したN様の仕事!
N様、ご依頼いただきありがとうございました。土岐泰弘
「TOKI家具館メンテナンスは新居浜市SDGs推進企業です。」
TOKI家具館メンテナンス(会社名:有限会社土岐家具店)は、新居浜市SDGs推進企業 登録番号第38号に登録されています。
新居浜市SDGs推進企業 TOKI家具館メンテナンス
新居浜市経済部産業振興課のみなさま・新居浜商工会議所のみなさま、ご尽力いただきありがとうございます。
平成時代までは、大量生産 → 大量消費 → 大量廃棄 の時代でした。
お客様からは「家具って、使い捨てでしょ。」という言葉もまだまだ聞きます。
でも、使い捨てや大量廃棄をこのまま続けていきますと、SDGs(持続可能)になりません。
令和時代になった現在、永く使える家具を注文に応じて必要な数だけ作り、メンテナンスを繰り返し末永く使っていく!
「メンテナンスを繰り返すたびに、家具への愛着も増していくと想われます・・・。」
最後まで、お読みいただきありがとうございました。土岐泰弘



