「椅子のぐらつき修理は家具修理の基本だと思う。」
目次
修理作業中①『段取り八分』の作業/古い籐シートの剥ぎ取り・新しい籐シートの準備
修理作業中②/向かって右側に籐シートを張り込んでいきました。
修理作業中③/向かって左側に籐シートを張り込んでいきました。
「ソファの籐も張り替えできますか・・・?」
「このソファ、軽くてとても使いやすいので永年使ってきて愛着があるんです。」
愛媛県西条市・H様から、フレームが籐で背もたれに籐シートを張ったソファをお預かりしました。
籐製の家具は、軽くて耐久性があるものが多いため、お部屋に模様替えや掃除の時に移動もしやすいためシニア層の方にも使いやすいのが特徴です。
永年の使用で、籐芯の接着剤が切れてしまい、溝から籐シートが外れてやぶれてしまってました。
H様のソファに張っていたのは、カゴメ編み(亀甲・大)の籐シートです。
張り替えに使う材料もオリジナル通りカゴメ編み(亀甲・大)の籐シートを使います。
H様の作業で「私が注意して作業したい」と感じたのは、2枚の籐シートを張り上げる時に『できるだけ左右対称に張りたい!』ということです。
このソファ背もたれのように2枚の籐シートカゴメ編み(亀甲・大)が隣接して張っている場合は、左右の籐シートを溝に押し込む位置が極端に異なったり、斜めに張ってしまったり、不自然だと思いますので・・・。
これは、四ツ目編みの籐シートですと目立ちにくいですが、カゴメ編み(亀甲・大)の籐シートですと目立ちやすいと思います。
修理作業中①『段取り八分』の作業/古い籐シートの剥ぎ取り・新しい籐シートの準備
新しい籐シートを張る時に大切なことは、古い籐シートを張っていた溝をできるだけきれいに掃除して整えておくことに尽きます。
籐シートを張り込む溝が、部分的に狭くなっている場合や浅い場合など張り込み作業がむつかしくなりそうな部分があったら事前に下処理作業をしておきます。
特に、溝の内側は研磨紙で少し擦り若干の面取りも付けておくようにしています。
『段取り八分に仕事二分』という言葉は、およそ30年前に憧れであり目標としている先輩経営者O様に教えてもらった言葉で、なによりも準備が一番大切という意味です。
H様のソファも『段取り八分に仕事二分』の考えで、カゴメ編み(亀甲・大)籐シートをはじめとして下の写真のように準備をしました。
修理作業中②/向かって右側に籐シートを張り込んでいきました。
籐シートの張り込み作業で一番緊張するのが、「どの場所から張っていくか?」など “張っていく順番” を決めることです。
“張っていく順番” にしたがい溝の底まで籐シートを差し込んでいき、タッカー釘で仮り止めしていきました。
向かって右側の溝すべてに籐シートの張り込みができました。
ダイニングチェアは基本的に左右対称の背もたれが多いですが、H様のソファは2カ所の張り込みで左右対称になるため平行部分を確認して張り込みました。
このような曲面部分や角は、籐シートを溝に押し込むのがむつかしいため慎重に作業を進めました。
籐シート周辺の “引っ張り代” 部分を切り取りました。
切り取った “引っ張り代” 部分の籐シートは、ふつう塗装時のサンプル塗りなどに利用するようにしています。
籐シートを押し込んだ溝のしまいは、接着剤を付け籐芯を埋め込んでいきました。
籐芯を曲面部分や角に押し込んでいくのは想像よりむつかしい作業のため、曲面に合わせ「クセ」を付けるなどして工夫して臨んでいます。
修理作業中③/向かって左側に籐シートを張り込んでいきました。
張り込んだ向かって右側の籐シートを基準にして、2枚の籐シートを『できるだけ左右対称に張る!』という作業に入ります。
まずは、向かって右側と同じ籐シート カゴメ編み(亀甲・大)を用意しました。
『できるだけ左右対称に張る!』を目標に、カゴメ編み(亀甲・大)の編み目を見ながら向かって左側を張り込んでいきました。
向かって右側に張った籐シート同様に、引っ張り代を切り取っていきました。
この角度から写真を見ますと、仮り止めのタッカー釘を打っていることが良く分かると思います。
向かって右側に張った籐シート同様に、籐シートを押し込んだ溝のしまいには、接着剤を付けて籐芯を埋め込んでいきました。
自然素材の籐シートは “ささくれ” などがつきものです。
“ささくれ” などがある部分には、接着剤を付けてマスキングテープで押さえて整えています。
修理作業中④/養生作業→ウレタン塗装作業→最終調整作業→完成
◆養生作業
ウレタン塗装作業に入る前、塗料が付いてはいけないフレーム部分に養生作業をしています。
養生作業をしてないと、籐シートを張り込んだ周辺部分ついた塗料の拭き取りが必要になるためです。
◆ウレタン塗装作業
養生作業ができたら、塗装室へソファを移動して、ウレタン塗装作業に移ります。
養生作業は、写真の通りウラ側もキッチリして、ウレタン塗装の吹付作業を進めました。
ウレタン塗装作業は、
■素地調整
■ウレタンサンディング×2回(ケバ取り研磨含む)
■ウレタンフラット×2回(ケバ取り研磨含む)
など、吹付作業と研磨作業を繰り返し行う地道な作業です。
H様のソファは、ナチュラル色のため「籐の自然な素材感を出したい」ため補色作業は不要でしたが、着色仕上の場合は補色作業も必要です。
◆最終調整作業
ケバ取り研磨作業を含めて、ウレタン塗装の作業が仕上がりますと、張り替えた籐シート表面の “ささくれ” や “ケバ” などの取り除くなど最終調整作業をして完成です。
写真手前にソファの前に置いているのは、剥ぎ取った古い籐シートです。
永年の使用で飴色になっていますが、今回張り替えた新しい籐シートも10年くらい使いますと、同様の飴色に経年変化していくと思います。
◆完成~配達準備
すべての作業が終わりますと、トラックに積み込んでH様へ配達いたしました。
ソファの籐シートを張り替えることは、ダイニングチェアと比べますと少ないです。H様、貴重なご依頼をいただきありがとうございました。土岐泰弘
「愛媛経済レポートさんの取材を受けました」
人手不足の時代でありがたいことに、TOKI家具館メンテナンスの職人スタッフが3人に増員できました。
(20歳代の職人2名が増えたことで、平均年齢は現在37歳です)
当店の家具職人は、
家具製作に必要な職業訓練を受け、かつ国家検定 家具製作技能士有資格者と限定しています。
2024年(令和6年)8月5日号で、TOKI家具館メンテナンスの取材が掲載されました。
これから、開業医様を中心に法人向け家具修理やリノベーションのサービスをスタートするところの取材!
愛媛経済レポートさん、ありがとうございました。土岐泰弘