「20年以上前のソファのクッションって作れますか?」
「結婚から40年使い続けた椅子がボロボロなんです。」
「買ったお店はやめていて、松山のお店では買い替えを勧められました・・・。」
「いろいろと椅子を見て回ったのですが、結婚時に両親が買ってくれたこの椅子が大好きだし楽なので使い続けたいのです。」
愛媛県今治市・Y様が大きな椅子を持ってご来店!
この椅子は、およそ40~50年前に飛騨産業さんが作られていたセベンヌチェアという座面が大きめで少し低めのLDチェア(リビングダイニングチェア)です。
Y様のご依頼内容は・・・
◆フレーム全体のぐらつき修理
◆ご自身でも塗ったというフレームのウレタン塗装修理
◆座面・背もたれ面の張り替え修理・などなど
お持ちの4脚すべてを、外観・耐久性をほぼ新品の状態(購入時の状態)へ戻す作業です。
セベンヌチェアは、構成する部材が角型中心(丸型ではない)・接合部の角度が直角中心(任意の角度ではない)ため、完全修理をするのに向いている椅子です。
飛騨産業さんのなつかしいシンボルマークが残っていました。
修理作業中①/フレームの分解作業
フレームぐらつき修理を始めるのに、座面・背もたれ面を取り外して、1脚・1脚、マスキングテープでナンバー打ちします。
ぐらつき修理する椅子が4脚の場合は、マスキングテープの色を4脚すべてを異なる色でナンバー打ちします。
4脚すべての椅子の接合部のほぞ組みが、抜けかかっていました。
1脚目のセベンヌチェアを分解しました。
この椅子は、すべての接合部を分解することができました。
使い方や木取り部分・湿度の変化など環境などによって分解できる程度は、同じ椅子でも違います。
2脚目のセベンヌチェアを分解しましたが、2ヶ所のほぞ組みが抜けませんでした。
ぐらつきが出ている椅子を分解時に注意している点は、「無理してすべてを分解しないということ」です。
無理して分解作業をしていて、フレームを構成する部材を折ったり割ったりしたら台無しになってしまいますので!
3脚目のセベンヌチェアを分解しましたが、背もたれフレーム・前脚フレームのほぞ組みが抜けませんでした。このような場合でも、次の作業中に分解できそうであればチャレンジすることもあります。
修理作業中②/フレーム部材の研磨作業+古い接着剤の除去作業
TOKI家具館メンテナンスが椅子の研磨作業するのに使っている研磨機は、リョービ製ミニサンダー!
リョービ製ミニサンダーは、手で持ちやすいサンダーで最小サイズで使いやすいです。
「椅子部材の曲面部はウレタンを挟んで(写真左)研磨作業をしています。」
「この写真は、研磨作業前の椅子フレームと研磨作業後の椅子フレームを比較したものです。」
【研磨作業前】「ご自身で何か塗料を塗ったのか?」永年愛用されて衰えたウレタン塗装の上に、さらに塗料を塗り重ねたようでした。
【研磨作業後】衰えたウレタン塗装表面をリョービ製ミニサンダーで丹念に研磨作業をしました。研磨しすぎると椅子フレーム面形状が変わってしまうため、フレーム表面を確認しながら慎重に作業を進めることが大切なんです。
複数脚の椅子の “分解→研磨→組立” の作業を進める時は、部材が混ざらないことが大切なため、できるだけ1脚づつ作業を進めています。
「こうしてセベンヌチェアの研磨作業ができました!」
再ウレタン塗装をするための研磨作業は、できるだけ細かく分解できている椅子の方が作業性は良いものです。
研磨作業を進める時は、分解した各部材のほぞや木口に墨付けを移しておくことも大切な作業です。
研磨作業の最後は、古い接着剤の除去作業です。
古い接着剤が残ったままですと、木材同士が丈夫に接着つきません。そのため、古い接着剤の除去作業は大切な作業なんです。
また、古い接着剤の除去作業中にほぞ組みを仮り合わせしながら接合部のほぞが痩せている場合は、突板を貼り付けるなどして接合部に適切な強度が出るように作業します。
これは、接合部が緩いままで組み立てしても、数年先に再びぐらつきが出る可能性があるためです。
永年愛用され続けてきた椅子は特に、接合部のほぞなどが湿度の変化や使い方で痩せていることが多いためです。
修理作業中③/組み立て・圧着作業
TOKI家具館メンテナンスの組み立て・圧着作業は、椅子の左右(横)方向・前後方向をできるだけ分けて作業しています。
これは、組み立て・圧着作業の正確性や無理がきにくいことと将来的な耐久性を考えてのことです。
この写真は、左右(横)方向(背もたれフレーム)の組み立て・圧着の様子です。
ほぞ組みなど接合部には、接合した時に「少しはみ出るくらい」の接着剤を両面に付けるようにしています。
接合後、はみ出した接着剤は、濡れたウエスで丹念に拭き取ります。
この写真は、前後方向(椅子全体)の組み立て・圧着の様子です。
このように、組み立て・圧着作業を、椅子の左右(横)方向・前後方向を分けて作業すると正確性や耐久性が格段にアップします。
4脚の椅子は、順番に各作業を経て、組み立て・圧着作業を進めていきました。
この写真を見ますと、椅子別に進み具合がバラバラなのが良く分かると思います。
Y様のご希望のように完全修理(購入時の状態に戻す)する場合は、作業工程が多いため、慎重を期すため1脚づつ作業を進めました。
こうした工程を経て、4脚のセベンヌチェアの分解→研磨→組立の作業ができ上がりました。
フレーム耐久性が購入時の状態に戻り、無塗装状態の椅子を見ますと、セベンヌチェアのように「華美さの無い、基本に忠実に作られているスタンダードな椅子が良い。」と改めて想いました。
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