「大好きなダイニングチェアの肘が外れたんです。」
あいテレビのNスタえひめ「未来を変えるSDGs」で紹介の木製デスクチェアが完成しました。
「主人が直しながら40年以上も愛用していた椅子を直したいです・・・。」
「この椅子だけは、どうしても捨てられないのです。」
愛媛県西条市・K様からご依頼をいただきました。
K様の椅子は、丈夫な材料の代表格である “ナラ” で作られた浜本工芸製の木製デスクチェアです。
ご依頼にいたる経緯は、下記リンクよりご覧ください。
★あいテレビ・Nスタえひめ「未来を変えるSDGS」
修理作業前/木製デスクチェアをお預かりしました。
40年もの間、ご自身で修理しながら使われていたため、各接合部の抜けや割れ、破損部分も目立ち、金具や木ネジでの補強跡も多くありました。
修理作業中①/フレームの分解作業
私は仕事柄、椅子のフレームを触るだけで「どのくらい分解できる」かが、おおよそ分かります。
K様の木製デスクチェアは、触っただけで、すべての部材が分解できると感じました。
こんな時に大切なのが・・・
「組み立てる時に、元通りに組み立てできるように分解する!」
ということです。
そのため、どんな家具でも分解時には、必ずマスキングテープなどでの墨付け作業を欠かさないようにしているんです。
その後、分解作業を経て、木製デスクチェアを構成するすべての部材を分解できました。
分解後は、接合部に付いている古い接着剤の除去作業をはじめ、部材別に細かな調整作業をしています。
修理作業中②/フレームの圧着組み立て作業
分解した各部材の調整ができますと、
◆はじめは、背もたれ部の組み立て圧着作業です。
K様の木製デスクチェアは、ライン生産の量産家具です。
量産家具というのは、組み立て時に接合部に入れる接着剤は、圧着時にはみ出さないのが基本です。
これは、接着剤が家具表面に残ると、塗装時に塗料がのらないためなんですが、これが生産から10年以上先に起こるフレームのぐらつきの原因のような気がしています。
私が、愛媛県立宇和島高等技術専門校に通っていたころ先生からは「接着剤は、少しはみ出すくらい入れて、はみ出した接着剤は濡れたウエスで拭き取ること!」と、教えられたものですから・・・。
ソマックス製T型クランプを使い、背もたれ部の圧着組み立て作業をしました。
◆続いて、前脚部の組み立て圧着作業へ移ります。
ソマックス製T型クランプ・スナップクランプ・ジュニアFクランプを使い、前脚部の組み立て圧着をしました。
分解した椅子などの組み立て作業は、こうした圧着工程を「何回に分けたら、より丈夫になるか」を考えるのが大切な仕事なんです。
ここから約12時間で完全乾燥しますので、背もたれ部と前脚部の組み立て圧着作業の準備をしました。
◆圧着組み立て作業の最後は、背もたれ部と前脚部の接合です。
私の大好きな言葉は、「段取り八分に仕事二分」です。
この言葉は、どんな仕事でも準備が一番大切!という意味です。
そのため、事前に準備していた当て木や治具(補助的な道具)を使い、速やかに圧着組み立て作業をしました。
この木製デスクチェアの圧着組み立て作業で、一番気を配ったのが、補助用の貫の圧着部分です。
そのため、専用治具(補助的な道具)を作り作業しました。
木製デスクチェアのフレーム本体の圧着組み立て作業は、ここから約12時間で完全乾燥します。
◆座面取り付け用の桟木を新規製作しました。
座面を取り付けするための桟木が割れていたため、手持ちの栗材で新しく作っていきます。
写真右が既存の桟木です。椅子本体とタッカー釘で取り付けていました。
座面の反りに耐えられなく、桟木自身も割れてしまい、タッカー釘が折れてしまったようです。
新しく作った座面取り付け用の桟木です。今度は、木ネジで固定できるように座堀りしました。
新しく作った座面取り付け用桟木を、接着剤と木ネジで固定し、
念のため、ソマックス製スナップクランプでしばらく圧着しておきます・・・。
K様、大切な椅子の仕事をご依頼いただきありがとうございました。土岐泰弘
◆塗装作業・調整作業など後編はコチラです!