飛騨産業製 セベンヌチェアを完全修理する【前編/分解→研磨→組立】
目次
「お母さんが愛用していたお庭のベンチなんです・・・。」
「いまごろ探しても、こんなベンチってなかなか無いんですよね・・・。」
愛媛県西条市・K様からお問い合わせをいただきました。
修理作業前/ご希望を確認の上、お預かりしました!
愛媛県西条市・K様のアウトドア用ベンチは、30年以上もお使いのようで、ダイキャスト製(鋳物)のフレームは錆がひどく朽ちてしまってました。
座面の木も、腐ってましたが、直す時のサンプル分にと1本だけ取り置きしていたとのことです。
この木は、檜のような針葉樹でとっても軽くやわらかいものでした。
修理作業中①/木材の買い付けとフレームの塗装など
TOKI家具館メンテナンスは、家具などの木の塗装は日々していますが、金属塗装などは専門外でできません。
そのため、ダイキャスト製(鋳物)フレームは、自動車板金塗装店様に研磨~塗装作業をお願いしました(写真左上)
フレームに塗装された青空のようなブルーは、日本塗装工業会様のサンプル帳よりご指定いただいたものです。
フレーム塗装と同時に、木材の選定と買い付けも進めました。
今回選んだのは、インドネシアなどが原産国のセランガンバツという “ウッドデッキ" に使う木材です(写真右下)
「寸法のわりに重く、密度の濃い木材だな!」というのが第一印象でした。
木材店様は、「セランガンバツという木材は、雨風や紫外線の中で15~20年使ってもかなりの耐久性がある木ですよ。」と教えてくれました。
修理作業中②/木取り加工
さっそく木取り加工を始めました。
セランガンバツは、「大変硬く石に近い感じの木で、切る時に火花が飛び散ることもありますよ。」と木材店様から聞いていましたので、3mm厚の横切りとタテ切りのチップソーを用意して加工を進めました。
この写真は、荒切りしたセランガンバツを、ダイキャスト製(鋳物)フレームの上に仮置きしてみた状態です。
修理作業中③/木工加工~座面の組み立て作業
続きまして、木取りしたセランガンバツを、面取り加工、研磨加工など基本的な木工加工を施しました。
「大変硬い木材のため、骨が折れましたよ~!」
木工加工の後は、組み立てのための穴開け作業を経て、さらに研磨加工を進めました。
平行して、正確な組み立て準備も進めました。
座面用セランガンバツの各桟木の間に挟んでいる小さな桟木は、組み立て時に間隔を一定にするための治具(補助的な道具)のようなものです。
座面板の組み立て準備の最後は、セランガンバツ座面のウラ側に取り付けする補強桟木の間隔を一定にするための治具(補助的な道具)の合板を配置しました。
こういう少しの手間を惜しまずに作業することにより、完成度が向上すると信じて日々精進しています。
アウトドア用ベンチということで、取り付けに使う木ネジもステンレス製を使い木工加工ができあがりました。
修理作業中④/塗装作業
愛媛県西条市・K様からは、
「深みのあるダークブラウン色に仕上げたい・・・!」
とご希望をお伺いしていました。
まずはじめに、下地着色の準備をしました。
下地着色には、私の大好きな柿渋を選びました。
下地着色を始めました。
塗装作業は、塗りにくいヶ所から始めて、塗りやすいヶ所へと進めていくのが基本です。
そのため、座面板の桟木と桟木の空間や補強桟木の側面などから下地着色を始めたんです。
下地着色ができあがりました。
目標としていた、柿渋の落ち着いた少し赤みのあるダークブラウン色にしあがりました。
下地着色の次は、
野外用塗料を使った塗装作業です。
TOKI家具館メンテナンスでは、オスモ&エーデル様の野外用植物性オイルを永年使っています。
野外で使う木製品は、自然との共生でもあります。
雨が降っても、雪が降っても、天気が良くて紫外線がきつくても耐えなければならないのです。
きれいな状態で末永くお使いいただくには、もちろん4~5年に一度のメンテナンスも必要となりますが・・・。
そして、塗装した塗料が完全乾燥してるとはいえ、身体や自然に悪影響があっては本末転倒です。
このような自然環境と共生するために、オスモ&エーデル様の野外用植物性オイルを選んでいるんです。
「深みのあるダークブラウン色に仕上げたい・・・!」
とご希望をお伺いしていましたので、ローズウッド色とエボニー色を1:1に調合して塗装作業を進めました。
天気の良い日に、軽トラックに荷台(野外)において、とことん乾燥せせました。
紫外線にも耐久性がある野外用植物性オイルですので、こんなことぐらいではびくともしないはずですから・・・。
オスモ&エーデル様の野外用植物性オイルは、2回塗りが基本です。
塗装工程で大切なことは、次の工程に入る時に必ず研磨しておくことです。
TOKI家具館メンテナンスでは、#600くらいの研磨紙にて作業して2回塗りに入っています。
ローズウッド色とエボニー色を調合したものを2回塗りしたのちは、屋外用クリアー(透明)でさらに押さえました。
アウトドア用ベンチの耐久性を増すために、屋外用クリアー(透明)も2回塗りをして塗装工程ができあがりました。
修理作業中⑤/座面板とフレームの取り付け作業
こうして仕上がったセランガンバツの座面板を、ダイキャスト製(鋳物)フレームに取り付けするための準備をしました。
アウトドア用ベンチということで、取り付けにはステンレス製木ネジを使いました。
修理作業後/愛媛県西条市・K様へお届けしました。
「お庭に置いとくには、もったいない感じね・・・!」
と、うれしいメッセージをK様からいただきました。
私も同感で、「できれば室内で使ってほしいなあ・・・。」と思っていましたが・・・。
それほどの力作の一つなんですね!
以下の写真は、愛媛県西条市・K様のお庭にて撮らせていただいたものです。
K様、ご依頼いただき、写真撮影にご協力いただきありがとうございまた。土岐泰弘