「椅子のぐらつき修理は家具修理の基本だと思う。」
「結婚から15年、思い出いっぱいのアンティークテーブルを直したいです!」
と、愛媛県新居浜市・S様からお問い合わせをいただきました。
S様がお使いのテーブルは、約80年前に英国で作られたアンティーク家具のドローリーフテーブルで、ご結婚時に私がお届けさせていただいたものです。
修復作業前/15年使い続けられたドローリーフテーブルです。
さっそく訪問して、ドローリーフテーブルを引き取りさせていただきました。
15年の間にお子様も増えて、ご家族のみなさまで使われたドローリーフテーブルは、少し疲れ気味の様子でした。
15年もの間、毎日使い続けられた天板は、湿度の変化で表面がカサカサしたり、塗装が剥げている部分も目立つものの、フレーム骨格部や構造は、しっかりしてますので、少し手を入れたら再び15年以上お使いいただけるものです。
アンティーク家具の修復作業①/天板の研磨作業
天板のアンティーク塗装を修復する時は、現在作られている家具と同様に、初めにフレームから天板だけを取り外します。
その後、電動工具のハンドサンダーと手作業で古い塗装表面を落としていきました。
研磨紙は、#100→#180→#240と丹念に作業を進めていきました。
下の写真は、研磨作業が完了した状態です。
深いキズや染み込んでしまったシミまでは取れませんでしたが生地出しができました。
天板中央部は、鏡板が突板のため深堀りできませんでしたが確実に生地出しできました。
アンティーク家具の修復作業②/下地着色作業
下地着色作業に使うのは、独自に調合したダークオーク色のオイルステインです。
初めにテスト(お試し)として、ナラ無垢材及びナラ突板材にダークオーク色オイルステインを塗りました。
余談ですが、私はとても慎重派の性格のため、テストできるものは可能な限り、納得いくまでテストするようにしています。
右の桟木がナラ無垢材へのテスト塗りした状態、左の合板がナラ突板にテスト塗りした状態です。
下地着色作業は、ダークオーク色のオイルステインをタンポ擦りして色調整をしながら擦り込んでいきました。
下の写真は、ダークオーク色オイルステインで下地着色できた状態です。
下地着色の作業は、フレーム本体との色合わせをはじめ、天板全体を均一にしなくてはならないため、息を止めて作業をしています。
アンテーク家具の修復作業③/ラックニス塗り
アンティーク家具独特の “モチモチ感” や雰囲気を出すためには、昔ながらのラックニス仕上げが欠かせません。
ラックニス仕上げは、下地着色した天板表面を抑えて守り役割をしてくれるとっても大切な工程なんです。
私が、現在アンティーク家具用に使っているラックニスは、玄々化学さんのRZー10です。
ラックニスの工程は、刷毛を使い塗っていきました。
ドローリーフテーブル天板のように、額縁仕上げをしている天板は、各ブロックごとの塗り分けにとっても神経を使います。
ラックニスの刷毛塗りは、半分ずつ塗り重ねて塗っていきました。
1回目のラックニスが塗り終わった状態です。天板表面に艶が出てきてとっても良い感じに仕上がりました。
1回目のラックニス塗りが完全乾燥しますと、#600の研磨紙にて軽く擦り表面を整えたのちに、2回目のラックニス塗りをしました。
アンティーク家具の修復作業③/ワックス仕上げ
ラックニスは、私の祖父の時代からある伝統ある塗料です。
趣のある仕上がりが特徴ですが、耐久性が劣る点や湿気に弱い点など欠点もあります。
この欠点を補うのがアンティークワックスです。
私は、永年アンテーク家具用のステインワックスを使っています。
アンテーク家具用のステインワックスは、自動車にワックスを塗る時のように、手の届きにくい部分から塗りはじめ、手元に進めていくのがコツです。
約30分くらい後に、乾いたウエスで拭き取れば、とってもきれいに仕上がります。
天板下の脚フレームは、水平バランス調整後、補色作業をして、同じくステインワックス仕上げをしました。
最後に、脚フレームに天板をセットして、拡張天板のスムースな動きなどのバランス取り作業をして完成しました。
アンテーク家具修復作業後/S様へ配達しました。
「15年前は、こんなにきれいだったのですね・・・。」
と、うれしいお言葉をいただきました。
15年前に一緒にお届けさせていただいた、ベントウッドチェアは、とっても良い状態でお使いでした。
S様、ご依頼いただき、写真撮影にもご協力いただきありがとうございました。土岐泰弘