九州民芸家具 ラダーバックチェアの座割れ+フレームぐらつき修理(前編)
目次
⑦修理作業中4/新しい “ちぎり” の埋め込み作業
東京都の家具店様が埋め込んであった “ちぎり” の跡を考えて、新しい “ちぎり” を作りました。
鉛筆で墨付けしたヶ所をさらに削り取っていきます。
新しい “ちぎり” を埋め込んで隙間が空いてはいけませんので、鉛筆で墨付けしたヶ所をたよりに丁寧に削り取っていきました。
新しい “ちぎり” を仮り合せしながらあわせていきました。
当て木を添えて、ソマックス製スナップクランプにて圧着作業をしました。
約12時間以上養生してますと完全乾燥します。
完全乾燥後、民芸家具らしく柿渋で着色後、植物性オイルにておさえました。
⑧修理作業中5/フレーム全体の圧着作業
“ビスケットジョイント” での圧着および新しい “ちぎり” の埋め込みができた座面と各部材を並べてみて、フレーム全体の圧着準備をしました。
後ろ脚下部の貫に緩みが出てましたので、ヤマザキ製端金を使い、事前に圧着作業をしました。
フレーム全体の組み立ては、はじめに座面と前脚部を接着剤を入れて組み立てていきました。
次に、フレーム全体を組み立てていき、ソマックス製T型クランプにて圧着していきました。
この圧着作業は、フレームの前後、左右、上下を一度に圧着しなくてはいけませんし、座面の取り付け部に木ネジのねじ込みなど正確さとスピードが要求される作業です。
また、民芸家具の主材料は、かば桜といい大変硬い木のため、十分な圧着時間(養生時間)をとりました。
⑨修理作業中6/込み栓の打ち込み作業
フレーム全体が圧着できた状態です。
座面の取り付けは、接着剤と “プラス” の木ネジにて取り付けました。
次に、 “プラス” の木ネジの頭を、込み栓にて埋め込みます。
込み栓には、直径10mmのダボに接着剤を付けて埋め込みました。
接着剤が完全乾燥後、凸部をあさりのないのこぎりで切り取りました。
⑩修理作業中7/仕上げ作業
次に、東京都の家具店様がねじ込んであった木ネジの跡を埋めていきます。
この穴は、フレーム強度とは関係ないですが、できるだけ目立たなくなると気持ちが良いと想いましたので・・・。
最後の仕上げは、アンティーク家具用のワックス仕上げです。
50年余り使い続けられた椅子ですので、塗装面が乾燥気味でした。
こんなときは、潤いを与えるためにワックス掛けをすると良いと思います。
⑪修理作業後/九州民芸家具ラダーバックチェアの修理完成です。
このような一連の工程を経て、東京都・Y様の九州民芸家具ラダーバックチェアが完成しました。
写真を見るだけですと、お預かりした時と大きく変わっていませんが、かなり強固な仕上がりになったものと想います。
この写真は、座面を取り付けした “プラス” の木ネジの込み栓です。
民芸家具らしく柿渋を植物性オイルでおさえ、ワックスにて仕上げています。
この写真は、座面のウラ側に新しく埋め込んだ “ちぎり” です。
Y様の修理は、50年あまり使い続けた味わいを残すため塗装修理をいたしませんでした。
そのため、座面と “ちぎり” には、1mmほどのわずかな目地(段差)をあえてつけています。
隙間もなくきれいに埋め込めたと思います。
東京都の家具店様がねじ込んであった木ネジの跡を埋めていきました。
よく見ると、どうしてもわかってしまいますが、できるだけ目立たないように仕上げました。
最後に、椅子全体の水平バランス調整をして、Y様に確認の上、4本の脚先に新しいフェルトを貼り付けました。
Y様、東京都というご遠路のなか、リモートでの打ち合わせだけにもかかわらず、TOKI家具館メンテナンスにご依頼いただきありがとうございました。土岐泰弘