幼児の責任

佐藤清志

佐藤清志

とある3歳の幼児とお父さん,お母さんが親子3人連れ立って,
公園に遊びに行ったところ,その子供が公園にいた
別の子供を突き飛ばし,怪我を負わせてしまいました。
このとき,子供を突き飛ばして怪我を負わせてしまった幼児は,
賠償の責任を負うでしょうか?

答えは,当たり前ですが,NOですね。
民法では,責任能力の無い者は賠償責任を負わないと規定しているからです。
条文は以下のとおり。
「未成年者は、他人に損害を加えた場合において、
 自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、
 その行為について賠償の責任を負わない。」
自らの行為の結果,責任が生じるということを理解する能力
の無い者に責任を負わせることは出来ないということです。
したがって,このような能力がある限り,未成年者でも賠償の責任
を負うことはあります。
判例上は,だいたい12歳前後で責任能力を認めるようです。
3歳の幼児では当然に責任能力はありませんので,
賠償の責任を負うことはありません。

では,その親はどうでしょうか。
これについては,民法714条1項に規定があります。
 「前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、
  その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、
  その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。」
子供の親権者たる父母は,子供を監督すべき法定の義務を負う者ですので
この規定がまさにあてはまります。
ただし,民法714条1項には,但書が付されており,
 「ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、
  又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」
父母がきっちりと監督義務を果たしていた,あるいは父母が監督義務を果たしていたとしても
やはり損害が生じていたといえるようなときには,賠償責任を負わない
ということになっています。
しかし,この「監督義務を怠っていなかった」
とか「監督義務を怠っていなかったとしてもやはり損害が生じていた」ということは,
父母の側が証拠によって証明しなければならず,しかも,この立証は
実際上かなり困難といわれています。
したがって,幼児の子が他人を突き飛ばして怪我を負わせたというような場合に
は,原則として父母は賠償責任を負うものと考えておいた方がよさそうです。

このようなことから,幼稚園入園の際などには,
他の園児を突き飛ばして怪我を負わせるというような危険
が格段に増えますので,損害賠償責任保険等の保険に加入
しておいた方が良いでしょう。

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佐藤清志
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佐藤清志(弁護士)

佐藤法律事務所

女性でも話しやすい雰囲気を心掛けています。お子様連れでも大丈夫です。ストレスの大きい離婚問題では,弁護士に委任することでストレスが軽減されると思います。

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