青森の新産業創出を支援し知的財産を守るプロ
鈴木壯兵衞
Mybestpro Interview
青森の新産業創出を支援し知的財産を守るプロ
鈴木壯兵衞
#chapter1
「青森の人は、特許を取ると独占権が与えられ、農林水産業に従事する人が困ると思っている。でもそれは間違った考え。特許は苦労して生み出した新しい技術を、必要な人に活用してもらうのが目的であり、これは、大企業など特定の人に独占させないための権利となる。素晴らしい技術を創案したら特許を取り、みんなで仲良く使う。そうすれば、もっともっと青森県の産業を発展させることができると思うのです」
そう話すのは、「そうべえ国際特許事務所」の弁理士、鈴木壯兵衞さん。元々、青森は日本でも特許出願率が全国最下位。そうした現状を踏まえて日本弁理士会は平成22年から、弁理士の少ない地域に費用を負担して特許事務所(会設事務所)を設置するという新たな地域支援スキームを創出しました。
その地域支援スキームの最初の事務所として、平成22年1月に青森市に開設された「日本弁理士会会設青森事務所」の所属弁理士として活躍していた鈴木さんでしたが、平成26年10月で期間満了となり、青森市における5年間の使命を終えています。青森県の特許出願率は依然として低いものの、全国最下位の状態からは脱却しました。その後、鈴木さんは平成26年11月に青森市から弘前市富士見町に移転し、独立した事務所として新規開業を果たしました。
鈴木さんは東京で1000件以上特許出願した実績を生かし、弁理士の少ない弘前市で自ら特許申請を行うのはもちろん、青森県における特許出願を積極的に支援。中小企業や若手経営者がもっとたくさん特許を出願できるよう、経費を抑えるため弁理士に依頼せず、発明者が自分で作成する特許明細書を特許庁の審査をパスできるレベルまで添削してあげるなど、素人にもわかる出願方法を惜しみなく伝え、丁寧に指導しているのです。
#chapter2
鈴木さんの出身は静岡県です。地元の高校、大学経て、東北大学大学院へ。光通信の三要素すべてを開発した西澤潤一教授のもと、光と電波の境界の電磁波を発生させる研究や、大電力の送電に使う半導体装置など、大学院生時代から20年間にもわたり半導体の研究に携わってきました。
「西澤教授の研究は、特許収入で運営してする大学から独立した財団法人を拠点とし、実は世界でも例をみない研究の運営手法でした。だから大学院生の頃から特許申請を徹底的に仕込まれました」
弁理士になったのは、研究者の延長としてごく自然なこと。長きにわたり現場にいたからこそ、研究開発する技術者たちの気持ちがわかり、それは弁理士として最大の強みとなっています。「研究者や起業家は、命がけで研究を重ね、事業を展開しています。ならば発明を愛する弁理士も命がけで取り組むべきです。折角開発した技術も特許を取らずに放置すれば、研究者はやり切れない思いをします。だから私は、研究者を愛するがゆえに特許申請をすすめているのです。弁理士は知的財産を守って全力を尽くすことで日本の産業界全体を明るく照らし、社会に貢献できるものと考えます」ときっぱり。
子どもの頃、お父さんが「ネギの種蒔機」の発明に夢中になっていたのを覚えているという鈴木さん。農林水産業を含め地域の特徴を生かした新しい産業を創出するため「青森には知的財産戦略が必要であり、私はその手助けがしたいのです」
#chapter3
1ヶ月の半分を青森で過ごし、特許申請にかかわる発明の相談から、技術者自らが特許出願するためのノウハウまで教えている鈴木さん。青森県が主催する講座では、知的財産権の基礎や特許明細書の書き方など惜しみなく指導します。
「新しい技術を思いつき、実際に作ってうまくできなかった時が発明のチャンス。苦労した点を記録に残せば特許になるのです。そして技術を見える形にするのが、特許のおもしろさでもあります」。また、特許は自分と関係ないと思っている人が多いようですが「自分の商売が知らず知らずのうちに他者の特許を侵害し、訴えられる場合もあります。特許に対する認識をあらため、特許にもっと関心を持って欲しいですね」
青森で残念なのは、特許出願者が増えないこと。町工場に代表されるように、中小企業は下請けであっても発明できる力を持っていると語る鈴木さん。しかし、たとえ技術があっても、青森では特許を申請しようと思う人が少ないというのです。「中小企業の方々にも県の講座にもっとたくさん参加していただき、みんなが特許を申請できる環境を作っていきたい。そして将来は、青森で特許申請できるだけでなく、更に特許申請について後輩に指導できる人材を育てるところまで発展させたいと思います」
(取材年月:2013年1月)
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Profile
青森の新産業創出を支援し知的財産を守るプロ
鈴木壯兵衞プロ
弁理士
そうべえ国際特許事務所
外国出願を含み、東京で1000件以上の特許出願したグローバルな実績を生かし、出願を支援。最先端の研究者であった技術的理解力をベースとし、国際的な特許出願や商標出願等ができるように中小企業等を支援する。
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