合葬墓始動から一ヶ月、見えてきたもの

佐々木博一

佐々木博一

民営の合葬墓が5月1日に始動してから、約一ヶ月が経過しました。
この約一ヶ月の間にいただいたお声から、感じ取ったことや、見えてきたものがあるように思います。期間としてはまだ短いですが、ちょっとお話ししようと思います。

5月1日に地元新聞に記事が掲載されました。その日と翌日の二日間でいただいた問い合わせの件数は100件を超えていました。
3日から6日までは連休だったため、問い合わせは無かったと思います。
7日からは毎日10件以上の問い合わせが続きました。
さすがに5月の後半には問い合わせは一日数件になっていきました。
5月一ヶ月間でいただいた問い合わせの件数は300件を超える結果となりました。

多少の想像はしていましたが、想像をはるかに超える件数にはさすがに驚きました。
新聞の記事の効果が大きかったのだろうとは思うのですが、これだけの反響があるとは思ってもいませんでした。

そこで、特に問い合わせの内容で多かったものを三つにまとめてみました。すると、見えてきたものがありました。

一つ目は、遺骨を数ヶ月~数年にわたり、自宅に置いている方が、こんなにも多くいらっしゃったのかと、驚きました。
すぐにでも、合葬墓に埋葬したいとおっしゃる方々が実に多くいらっしゃいました。

理由を聞いてみると、現代の問題が浮き彫りになってきたように思います。
・お墓を建てても、後継者がいないから
・墓地と墓石を購入するための費用が高額だから
・今までもこれからもお寺とのお付き合いがなかったり、面倒だから
以上のような理由が大半の理由のようでした。

八戸市営の合葬墓もありますが、そちらは検討しなかったのか、も聞いてみました。
・死亡者が八戸市民ではないから断られた
・申し込みに行ったが、手続きが面倒で時間がかかり諦めた
・すぐには埋葬ができないと言われた
遺骨を自宅に安置されている方々のほとんどが、八戸市営の合葬墓に一度は申し込みに行っているというお話しでしたが、上記の様な理由から、家で安置することを余儀なくされ、今回問い合わせをしたという方が実に多くいらっしゃいました。

二つ目は、生前予約の問い合わせ申し込みがとにかく多かったことです。
理由は以下の通りです。
・自分たちを埋葬できる場所(墓地)がないから
・子供がいないため、自分のことは自分でやっておかなければ
・子供は遠方にはいるが、できるだけ面倒をかけたくないから
ある程度は想像ができる理由ではありますが、こんなにも多くの方々が埋葬に関して不安や悩みを抱えているとは思ってもいませんでした。

もちろん、八戸市営の合葬墓でも、生前予約の申し込みは受け付けています。ですが、
・申し込みは、一年に一回
・抽選で決定(5名のみ)
以上のような制限があり、いつになったら生前予約の申し込みができるのか、いつまで待っていたらいいのか、不安を募らせている方が多くいらっしゃいました。抽選日には、100人程度の方が参加されていた、というお話しも耳にしました。

申し込みをいただいた直後に、「不安がなくなった」と笑顔で語られた方や、涙を流す方もいらっしゃいました。とても印象的に記憶に残っています。

そして三つ目は、経済的な理由です。
特には、墓じまいからの改葬による埋葬費用についてです。
墓じまいをするには、費用が二種類かかります。
ひとつは墓じまいにかかる解体費用です。もうひとつは次の埋葬先に支払う埋葬費用です。

解体費用は、必ず石材店などに支払いますが、見積りをとったうえで価格交渉もできるでしょう。ですが、埋葬費用、特に永代供養などは、寺院で提示される金額をお支払いします。仏様の人数で金額が決まることが多く、墓じまいでご先祖様の人数が複数いらっしゃる場合、高額になることが多いようです。

解体費用と、永代供養の埋葬費用の合計で、数百万円の提示を受けた例も多くあります。

子供や、親族に迷惑をかけないためにも、自分たちのご先祖様のお墓を片付けて、ちゃんとした所へ埋葬したいと思っている方は大変多くいらっしゃいます。
ですが、最近では物価の高騰をはじめ、年金収入のみで生活をされている方も少なくありません。今後の生活をするうえで、どうやって墓じまいの為の費用を捻出するか、悩んでいらっしゃる方が随分といらっしゃいました。

経済的な理由を抱えている方々は、こんな質問をしてきます。
「墓じまいできずに自分が死んだら、お墓はどうなるの?」
「お墓に入っていた先祖の遺骨はどこに行くの?」
「身内や親族に連絡がいくの?」
質問の内容に共通していることは、お墓、特に先祖の遺骨の行方、周りの方へ迷惑にならないか、といった自分自身のことではない不安を口にしています。
本当に、周りに気を配っていらっしゃる方が多いように思います。

そんな方たちから申し込みをいただき、
「肩の荷が下りた、安心した」
「いいものを作ってくれた」
など、笑顔や涙を流して喜びの声を沢山いただきました。

特に地方は、今後益々高齢化が進むと同時に、核家族化、過疎化が進み、お墓を維持するのが困難になることが明らかだと思います。維持すらしなくてもよい、お墓を作らないという選択も今後当たり前になっていくのかもしれません。

それでも、人は必ず最期の時を迎えます。その後の不安を軽くするための方法や、ひょっとすると制度のようなものが必要になるかもしれません。というか既に必要なのかもしれません。

多くの方の声を聞き、より安心した人生を送れるように取り組んでいきたいと思います。

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