墓じまい「新たな祈り、祈られる場」へのお引っ越し

佐々木博一

佐々木博一

2025年も始まって既に一ヶ月ちょっと経ちました。
今年は例年よりも、お墓に関する相談や作業が早くなっているような気がします。

私が住んでいる青森県八戸市は、寒さは厳しいですが、太平洋側ということもあり、雪は降りますが、大量に積雪があるという地域ではありません。
ですが、北国ではその寒さや雪の影響で、お墓に関する相談や作業がめっきり減ってしまいます。全く作業ができない期間が2~4ヶ月続くこともあります。

ですが、今年はちょっと様子が違っています。
相談や依頼件数が増えているのです。増えている内容はまさに「墓じまい」なのです。

増えている理由を自分なりに分析してみると、
① 墓じまいが、珍しくなくなってきていること。
② 墓じまい後の供養方法が多様化し、また認知されてきていること。
ではないでしょうか。

友人や知人などで、墓じまいをされた方々がご自身の周りで増えてきている。それにより、今まで知り得なかった情報も収集しやすくなってきているように思います。

さらに、永代供養や樹木葬、海洋散骨などを利用した体験や経験を持つ人も増加したことで、墓じまい後の遺骨の対応もしやすくなってきているのではないかと思います。

そこで、今回は改めて墓じまいについてお話したいと思います。

墓じまいについて相談や質問を受けるのですが、多い内容は、費用に関すること、手順や方法、必要書類についてなどです。
ですが、その前段で、悩んでいる方や一歩踏み出せない方がいらっしゃるのも事実です。

何故踏み出せないのか?何に悩んでいるのか?
何事も考え方は多様にあると思いますし、人それぞれ状況も違っています。

意外と多い悩み事は・・・
墓じまいにマイナスのイメージを持っていらっしゃる方が少なくない、ということです。
具体的に言うと、自分の代で先祖代々続いてきたお墓を片付けてしまってもよいものだろうか?さらには、ご先祖様に対しても、ご親戚の方々へ対しても申し訳ないという想いがあるようです。

そして、それらを口にするのは、女性一人で来られたご相談者様に多く見受けられます。

伺ってみると、自分は他の家から夫の元へ嫁に来た立場。墓じまいをしようと考えているお墓は、夫のご先祖様で、自分とは血縁関係もない、ましてや会ったこともない仏様のお墓。それを片付けることを自分が決めてしまってもいいものか?夫の親族に対しても、申し訳なく、なんて切り出したらいいのか?
なるほど、確かにそのお気持ちは分かるような気がします。

ご夫婦で相談に来られた方々には、一緒に考え、最後は旦那様が決断し、親族の方へ切り出した方がいいですよ、とアドバイスさせていただきます。
が、夫に先立たれた方には、これは通用しません。

そういった場合には、墓じまいの考え方として、私は次のようにお話し致します。
「墓じまいは『新たな祈り、祈られる場』へのお引っ越しだと想いますよ。」と。

仮に墓じまいをせずに、墓守をされていた方がお亡くなりになった後、そのお墓や遺骨はどうなってしまうのか?想像してみてください。

一般的な流れについてご説明すると、
後継者や身寄りがいらっしゃらなければ、もちろんそのお墓には誰もお参りには来られません。そのまま放置されれば、汚れたら汚れっぱなし、草などが生えれば伸び放題になります。墓地が隣り合っていたとすれば、隣接する墓地の持ち主からクレームになることもあるでしょう。

そのクレームは、ほとんどの場合、墓地の管理者や菩提寺の住職に寄せられます。
墓地の管理者や菩提寺の住職は、この墓地の元所有者の戸籍などをたどって親戚などを探します。幸いにして、親戚などが見つかると、このお墓の対応について連絡します。

もし、皆様の家に「○○家のお墓をどうにかしてほしい」と連絡が来たら、皆様ならどう返答しますか?
「うちは関係ない」「うちにはお墓があります」「そんな墓地には行ったことがない」「そういう親戚は知らない、会ったこともない」
ほとんどの場合は、上記の様な返答が返ってきます。
私でも、恐らくそう言ってしまうと思います。だって、何の義務もないわけですから。

そう言われたら、墓地の管理者や菩提寺の住職は、自費でお墓を片付け、遺骨は無縁へと移されることが一般的な流れです。

このように、墓じまいをされないまま、墓守をされていた方がお亡くなりになった後には、関係のない近隣の墓地の持ち主、疎遠だった親戚や、会ったこともない親戚の方々、更には墓地の管理者や菩提寺など、多くの方々にご迷惑をかけ、金銭的な負担もかけてしまい、遺骨は無縁へと移されることを想像しておく必要があると思います。

「墓じまいは『新たな祈り、祈られる場』へのお引っ越しだと想いますよ。」と言いました。

墓じまいをして、仮にその遺骨を永代供養に移したと想定致します。
実際に永代供養に足を運んでみると、いつでも綺麗なお花が生けてあり、時にはローソクに火が灯してあったり、お線香の香りが残っていることもよくあります。

永代供養には、ご自身のご先祖様とは無関係の遺骨が多く埋蔵されています。
つまりそこには、埋蔵されている仏様と何らかのご縁のあった方々が、時折お参りに来ている場所なのです。だから常に綺麗なお花と、お線香の香りが漂っていたりします。

必ずしも、血縁でなくても故人の友人知人、または近隣の方などがお参りをしてくれる、
『新たな祈り、祈られる場』へのお引っ越しだと思うのです。

今のお墓の形態は、家墓(一部個人墓)がほとんどだと思いますが、墓じまいは、供養を止めることではなく、家墓を受け継ぐことが出来なくても、供養を続けていくための、通過儀礼なのではないでしょうか。

墓じまいを奨励するわけではございませんし、お墓に対するご意見もあろうかと思いますが、これもひとつの考え方だと思って読んで頂けると幸いです。

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