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お墓は誰が引き継ぐの?
誰もがかならず最後に行きつく先がお墓です。お墓の問題はどの家族においても避けては通れない問題です。お墓は、お寺の檀家となり墓を建てる方、お寺ではなく自治体が運営する霊園にお墓を作る方、お墓は作らず海に散骨する方、埋葬の仕方はいろいろですが、弔う気持ちは一緒です。「先祖代々」という一つのお墓に入ることもあれば、親とは別に自分たちの家族の墓を別に建てる方もいらっしゃいます。このような一家のお墓の他に祭具(仏壇など)、系譜 (家系図)といったもの(祭祀のための道具)がありますが、これらは一体誰が受け継ぐのでしょうか。
お墓の引き継ぎは「相続」ではありません
旧民法では、「家」を中心として❶祖先の祭祀を絶やさないこと、❷子孫の繁栄を祈ることが、相続の中でとても重要視されていましたので、祭祀を営むための祭具やお墓は、家督を相続するもの(戸主)が受け継ぐものと定められていました。
しかし、戦後の新しい民法では、「家」制度を解体し、 家督相続も廃止しました。 相続は共同相続制として、 祭祀の継承については相続からは切り離しました。
そのため、墓を守り祭具を預かり法事などの祭祀を主宰する者を誰にするかは、法的には相続とは別の問題として扱われるようになりました。ですから、お墓や祭具や系譜などは相続財産として算入されず、相続税の対象にもなりません。
現行民法の弊害
現行民法では祭祀承継について896、897条に規定しています。お墓や祭具を相続財産から切り離した上で、「慣習に従って、祖先の祭祀を主宰すべき者がこれを承継する」と定め、但書きとして「被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者がこれを承継する」と規定しています。
このように、戦前の封建的家父長制を廃止するために、相続と祭祀継承を分離させた結果、現代の相続は財産分けだけが相続人の関心事となり、お墓を守ったり祖先を祭ることに対する責任が曖昧となってしまいました。
現在の家族や仕事の関係、これまでの親子間のわだかまりなどの様々な事情により、自分の親の墓であっても墓守りはしないというケースも見受けられます。そのように誰も墓守りをする方がいない場合はどうなるのか。法律では裁判所に祭祀承継者を決定してもらうように家庭裁判所へ申立をします。ただ家庭裁判所がある人を決定したとしても、その人がかたくなに拒否をする場合も予想されます。強制的に承継者とすることは事実上できませんので、落ち着くところは「永代供養」となります。
墓守りは大切な仕事
先祖代々の「家」の墓であるからこそ、お盆やお彼岸にお墓参りをする習慣が広く残っているとも考えられます。祭祀の承継は責任ある大切な仕事です。
承継する者はしきたりを覚えたり、さらに墓地の維持管理、法事の主宰、親類縁者への連絡などに結構お金や時間を割かなければならず、祭祀承継者は苦労する場面があります。しかし、それぞれの家でお墓を守り祭祀をとりおこなうという行為があるからこそ、人との縁が脈々とつながり、日本の文化が受け継がれていくこととなります。
祭祀(=墓守り)は、相続で受け継ぐもの、法律で受け継ぐものではなく、気持ちで受け継ぐ財産なのだと、祭祀承継の相談を受けるといつも思うところであります。