市民後見人について取材を受けました
成年後見制度って周りの人のための制度?
「成年後見制度を利用したいんです」と事務所に相談に来る方の中で、次のような「理由(わけ)」を話す方がいます。
・寝たきりの父の土地を売却して、私の自宅建築費の一部にあてたい。
・相続税対策の一環として、認知症の母の名義で金融機関からお金を借りてアパートを建てさせたい。
・亡くなったときに相続手続が面倒にならないように、寝たきりの父の名義の預金口座を全て解約してまとめておきたい。
・親族が借金の返済に困っているので、認知症の母名義の預金口座からお金を引き出して貸したい。
成年後見制度は認知症などで判断能力が低下してしまっている「本人」のための制度であり、その目的は「本人の利益の擁護」「最善の利益(ベスト・インタレスト)を追求すること」にあります。
しかしながら成年後見制度を「本人の周りを取り巻く関係者の利益のための制度」だと思い違いをしている方も残念ながらいらっしゃいます。
「本人の最善の利益」こそ成年後見制度の目指す道
成年後見制度は成年後見人や関係者のための制度ではないのです。成年後見制度は「本人」のための制度なのです。成年後見人は、本人の生活状況や財産状況を総合的に考慮し、居所・施設の選定、医療・介護を含めた福祉サービスの契約、日常の財産管理・収支バランスの調整をしながら、最後のその時まで本人が「より良く生きる」ことを実現するよう最善を尽くすのです。
本人の最善の利益を追求することで、成年後見人がその本人の親族などと対立することもあります。成年後見制度の趣旨、本人の生活・財産状況、成年後見人自身の考えを真摯に説明して理解を得ようとしますが、それでも意見が一致しなかったとしても、それが本人の最善の利益のためであれば仕方がないことなのです。
成年後見制度の普及と正しい理解
成年後見制度は平成12年にスタートした制度で、10数年が経過しました。ようやく一般の方にも浸透してきた制度でありますが、制度の趣旨を正しく理解されないまま広まっている部分があります。
成年後見制度の正しい理解の下に、より一層この制度が広まることを目指して、私自身活動していきたいと思います。