市民後見人について取材を受けました
成年後見人に対する一般の方のイメージと法律に沿った立場には大きな隔たりがあります。一般の方は「後見人は何でもやってくれる。報酬まで払うのだからやって当たり前だ」と考えている方が多いです。そのような方は契約や預金管理をはじめとした法律行為の他に、買い物、掃除、病院の送り迎え、入院時の洗濯など、全般に渡り仕事をするというイメージを持たれています。
法律行為と事実行為
しかし民法によれば、成年後見人は契約や財産管理などの法律行為しか権限がないと規定していて、成年後見人は買い物、掃除、送り迎えなどの事実行為はできません。例えば、草取りなどは事実行為となるので、自ら草取りはせず、シルバー人材などと草取りの請負契約を締結し、草取りをやって貰います。また、買い物や掃除はホームヘルパーと契約し、ヘルパーさんに買い物などをして貰います。いわば成年後見人はゼネラルマネージャーみたいな立場なのです。
「親戚が自分の親の後見人になっているけど、その人は介護も一緒にしているよ」という声が聞こえてきそうです。そのようなケースを分解すれば、成年後見人としての立場と親族としての立場が混在しているということになります。入院時の契約は成年後見人として、入院時の支度(買い物)や洗濯は成年後見人ではなく身内として行動していることになります。
「そんな堅苦しいこと言わないで、やってあげればいいのに」
「そんな堅苦しいこと言わないで、やってあげればいいのに」と思われる方もいるかもしれません。私たち職業後見人は、その責任の重さから、後見業務中に本人に損害を与えた場合に備えて損害保険に加入しています。この保険は成年後見業務「内」において成年後見人に過失(不注意)があった場合に適用されます。仮に本人をベッドから下ろしたり、車で買い物に連れて行ったりした場合、これらの行為は事実行為となり、成年後見業務「外」となります。業務「外」のことで本人に損害を与えたとしても保険の対象にはなりません。保険が使えなければポケットマネーとなります。莫大な損害金の場合ポケットマネーで支払うことはできないでしょう。本人に損害を与えたとしても損害賠償もできないような無責任な行為を、職業後見人はすることができないのです。
でもやらざるを得ないことも・・・
遠方から家の中の仏具を持っていきたいという方がいらっしゃるというので、空き家の状況を見に行ったところ、草ボウボウ・・・草取りを頼んではいたのですが、順番待ちで8月になるとのこと。せっかく遠方から来るのに玄関までの道が草ボウボウだと嫌だろうし、持ち出す物も「仏具」ということからも荒れ放題は相応しくないと思い、玄関までの道を草取りしました。でもこれは成年後見業務ではありませんので、報酬に加味されず、完全にボランティアです。
人間関係が色濃い成年後見というお仕事。法律論だけでは解決しないこともあるのです。