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齋藤利恵子

自家培養酵母・低温発酵パンのプロ

齋藤利恵子(さいとうりえこ) / パン職人

天然酵母パン 藤花

コラム

食パンの1斤について

2020年10月24日

コラムカテゴリ:くらし

私にとって初めてのコラムです。
何を書こうかと大いに迷いましたが、先ずはパンに関することで多くの人が知りたいと思っている事柄がいいのではないかと思いこのタイトルにしました。
私は10年以上も「パン屋さんの店長」という名前でブログを書いています。
ブログのタイトルは「藤花の食パン&天然酵母パン秘話」。
と言ってもパン作りに関する話題はごく稀で、殆どが日々のよもやま話です。
書き始めた当初はパン作りの話題が多かったんですが、行う作業は同じことの繰り返しで直ぐにネタ切れとなってしまいました。
そんなパンの話題の少ないパン屋の店長ブログですが、10年間のロングセラー話題があります。
それが「食パンの1斤について」の解説です。
プログの記事は4-5年すると自動的に表示されなくなるみたいなので、4年に一度は新しく書き換えていて、一番新しいのが3代目ですが、2代目もまだ表示されています。
その1斤に関する2件の投稿に対して毎週、合計で1000件以上のアクセスがあります。

このような訳で、あえて食パンの1斤についての検索をした事はないけれど、以前から疑問に思っていたという人は検索した人以上に多いのではないかと考えた次第です。


食パンイラスト

前置きはこれくらいにして本題に入ります。
皆さんは「食パンの1斤」をどのように理解していらっしゃいますか?
縦・横・高さと言った体積の単位ですか?
それとも重さ?
あるいはキューブ型をイメージした漠然とした一塊り?
正解は「斤」は重さの単位なんですが、四角の6枚とか8枚とかに切られているあの塊の事と答える方が多く、その塊の重さの事だと理解している人はごく僅かです。

正解が重さの単位なら答えは簡単、昔使われていた尺貫法の「斤」の単位を今のグラムに置き換えればいいだけでしょ・・・とはいかないから皆さんの理解が漠然としたイメージにとどまっている訳です。
単純に1斤をグラムに置き換えると約600gです。
あの一塊り、600gもないですよね。
実は、食パンの1斤は尺貫法に基づく1斤ではなく、元々は「一英斤」だったんです。
では、「一英斤」とは、ですが、1ポンドの事です。
そして1ポンドは約450gです。

明治に入り、長さや重さ、体積を表す単位が今までの尺貫法ではなくメートル法による表示に切り替わりましたが、西洋文化の取り込みは主にイギリスをお手本としていました。
そのイギリスが使っていた重さの単位がポンド。
私たちが食パンと呼ぶパンもイギリスからもたらされ、それは山型の食パンでした。
その一山が約1ポンドの重さだったようです。
それで食パン一山が「一英斤」という単位で呼ばれるようになり、いつしか「英」の字が消えて単に「一斤」となってしまいました。
話は少しそれますが、皆さんよくご存知のパウンドケーキ。
その名前の由来も1ポンドです。
発祥はイギリスと言われていて、小麦粉、バター、砂糖、卵の4種類の材料をそれぞれ1パウンド(ポンド)づつ入れて作ると言うところから名付けられたそうです。


山食パン


後に商取引に昔の尺貫法の単位を用いることが禁止されましたが、食パンの1斤は既に慣習的な表現となっていたのでそのまま使うことが許可されました。
ですが、そこには「1斤=××gですよ」と言う決まりはありませんでした。
あの一塊りのイメージを1斤として表すことが許可されたんです。
しかし、斤は換算すれば600gの重さの単位。
後の時代の混乱の始まりがここで作られてしまいました。

と、こんな経過の結果なんです。
何の単位なのかがはっきりしない、漠然とした食パンの1斤という表示が出来上がったのは。

時代は進み、発酵力の強いイーストの出現、たんぱく質量の多くて強いグルテンを形成できるパン用小麦の品種改良が進むにつれてパン生地は大きく膨らむようになり、イメージとしての1斤の食パンはどんどん軽くなり、業者間の1斤の重さに大きな違いが出てきました。
これではいけない、パン業界の信用問題だと言うことになりました。
主にパンを工場生産していて包装した状態の食パンを出荷している企業でつくる「日本パン公正取引協議会」という消費者庁から認定された組織あります。
そこがこの問題の解決のために自主規制のルールを設けました。
「1斤は340g以上」それ以下の食パンに1斤の表示をしてはいけない。
消費者庁から認定されているとはいえ、これは法律ではなく、あくまで工場で大量生産され包装されて出荷される食パンに対する業者間の身内の自主規制です。
自分の工房で焼いて自分の店で販売している町のパン屋はその業界団体に所属していませんので規制の対象ではありません。
と、このような書き方をすると、町のパン屋が340g以下の食パンを1斤として販売していると言うような誤解が生じてしまう可能性があるので、一言申し添えなくてはなりません。
決してそういう意味ではありません。
多分町のパン屋さんの食パンの一斤はもっと重いと思います。。
それが法律による罰則を伴った規制ではなく、あくまで団体に所属している業者間での取り決めであるということです。どうぞご安心ください。
因みに、私の焼く角食パンの一斤は約420g〜430gです。



サンドイッチ

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