・資金調達がうまくいかない経営者へ|銀行交渉を成功させるための実践ポイント

居谷謙祐

居谷謙祐

テーマ:銀行取引の仕方



資金調達に悩む経営者は少なくありません。
特に銀行融資は、準備や交渉の進め方次第で結果が大きく変わります。
本記事では、銀行との信頼関係を築きながら、資金調達を成功に導くための実践ポイントを解説します。





1. 資金調達のカギは“準備力”にあり


銀行融資は、会社の成長や資金繰りを支える重要な手段ですが、
「どんな資料を出せばいいのか分からない」「うまく説明できるか不安」──そう感じる経営者も多いはずです。

資金調達の成功可否は、交渉の場に立つ前に8割決まるといっても過言ではありません。
以下の3点は最低限押さえておきたい“準備の基本”です。

● 財務資料の整備
決算書、月次試算表、資金繰り表など、数字の整った資料は銀行との信頼構築に直結します。
特に、貸借対照表(BS)と損益計算書(PL)の内容は、経営者自身が説明できることが非常に重要です。

● 事業計画書の作成
「この資金で何をするのか?」「どうやって返すのか?」を明確に記載した事業計画は、審査担当者に安心感を与えます。
売上目標・利益計画・資金使途・返済スケジュールを数字で整理しましょう。

● 過去の取引履歴の整理
これまでの融資履歴、返済状況、借入条件などを自社でまとめておくことで、実績をアピールできます。
過去に延滞がない、返済が安定しているという点は大きな信用材料になります。

2. 銀行が見ているのは「返せるかどうか」


銀行は営利組織でありながら、リスクは極力避けます(当たり前ですが...)。
そのため、審査では以下のような観点が重視されます。

● 安定したキャッシュフローの提示
利益が出ていても、手元にお金がなければ返済はできません。
キャッシュフロー計算書や、資金繰り表で「毎月の返済に余力があるか」を見せることが大切です。

● リスクを下げる情報開示
・売掛金の回収状況
・在庫の回転率
・経営者個人の資産背景

これらの情報を整理し、数字で開示することが“安心材料”となります。
「この会社なら貸しても大丈夫」と思わせる準備が、融資の可否を左右します。

3. 長く付き合うために必要な“信頼関係”


銀行との関係は一度きりではなく、中長期的な取引が前提です。
信頼関係を築くことが、次の融資や条件交渉を有利に進める鍵になります。

● 定期的な情報提供
経営状況や資金繰りに変化があった際には、月次資料や業績報告を銀行に共有する習慣をつけましょう。
「良い時だけ報告する」のではなく、「困った時にすぐ相談できる関係性」が大切です。

● 預金シェアを高めに設定
預金や取引額が少ないと、銀行側から“優先顧客”として見てもらえません。
融資を希望する銀行には、売上入金口座や光熱費引き落としなどの預金取引を集中させる工夫も必要です。

4. 銀行交渉で失敗しないための具体的対策


いざ銀行と交渉の場に立ったとき、どのようなスタンスで臨むかによって、結果は大きく変わります。

● 誠実さを持つ
虚偽や曖昧な情報は信頼を損なう要因です。
「想定」「感覚」ではなく、根拠ある数字をもとに説明しましょう。
弱みがある場合は素直に開示し、対策をセットで示すのがポイントです。

● 複数行と接点を持つ
一つの銀行に頼りきりでは、条件面や交渉力に偏りが出ます。
信用金庫・地方銀行・政策金融公庫などを含めた複線化により、選択肢と安心感が広がります。

● 相手の立場を理解する
銀行員も「融資を通じて実績を出したい」「不良債権を回避したい」という目標があります。
返済の根拠、使途の透明性、経営者の姿勢などを示すことで、“この社長なら任せられる”という印象を与えられます。

5. まとめ|借りられる会社は「選ばれる会社」


銀行融資の成否は、単に「儲かっているかどうか」ではなく、
「どれだけ準備し、相手の立場に立って説明できるか」にかかっています。

・財務資料と事業計画の整備
・キャッシュフローの見える化
・日頃からの信頼構築と情報提供
・誠実かつ柔軟な交渉スタンス

これらを実践することで、銀行との関係性は“融資を受ける関係”から“共に事業を伸ばすパートナー”へと変化していきます。

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居谷謙祐
専門家

居谷謙祐(資金調達・財務コンサルタント)

株式会社ライフクリエイト

専門用語を使わず、社長と同じ目線で「数字」と向き合うのがモットーです。 資金調達、決算書を解析した強みの発掘と弱みの補填など、数字の裏にある可能性を引き出します。

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