実家の片付けで処分に困る物 その4(着物、その他遺骨・先祖代々の物)
今回は、生前整理に関わる問題として保険の受取に付いて記述いたします。
ここで対象となる保険とは、積立金の有る保険(年金や終身保険などの貯蓄商品)や、病気やケガの場合に支払われる保険です。
つまり、契約者(親等)が、生きているうちに支払われる保険の話です。
現在保険業界では、「受取人が高齢化していて、手続きが非常に難航する可能性が増えている」というケースが増えているそうです。
これは「受取人が認知症になっている」ケースです。
認知症の症状の程度にもよりますが、「本人の意思表示ができない・判断能力がない」場合、そのままでは保険金受け取り手続きを完了させることが難しくなります。
つまり「受取人が認知症になると、保険金を受け取ることができなくなる」可能性があるのです。
この対応や、当てはまるケースについて今回は少し述べてゆきましょう。
まず、保険受取の為の大原則である以下の3つの項目があります。
1)当該契約の受取人であることが、身分証明書等で確認できること
2)受取人名義の保険金受取口座が用意されていること
3)契約内容や受取金額などの説明に納得・同意し、自署ができること
この3点が確認できない場合は、保険会社にどんなに申し立てても、受け取り手続きが完了しないということです。
上記1)は、運転免許証などの写真がある物さえあれば問題ありませんが、免許証を返納している場合が問題となるので、写真入りのマイナンバーカードは取得しておいた方が、良いと思います。
2)に関しては、契約時に口座が設定されているはずなのでさほど問題になりませんが、3)の「契約内容や受取金額などの説明に納得・同意し、自署ができること」が認知症の場合に問題になるのです。
その他にも、判断力には問題が無くても、病気やけがで「字が書けない」「目が見えない(見ずらい)」「聞こえない(聞き難い)」と言う場合も想定されます。
保険の手続き時、原則として受取金額や受け取り方などの「重要な項目」は保険会社職員が読み上げて相互確認することが義務づけられています。
見ずらい場合は、御家族のサポートで何とかなりますが、見ずらい+聞き難い場合は、自署でのサインを求められます。
この場合、原則代筆は出来ません。(字は、利き手じゃなくとも、震えていても、汚くても、書ければ問題はありません。)
但し、視力や手指の状態によって、「どうしても書けない」ことが明らかである場合は、ご家族による代筆が認められることもありますが、その場で代筆を求められても、大抵の場合は担当者に権限が無いことから、後日判断をしてからという流れになるので、事前に保険屋さんに相談しておく事が重要になります。
上記は「判断力に問題が無い」事を前提にした場合ですが、本題である「認知症=受取人の判断力に問題がある」場合は、保険金の受け取りが出来ない場合が増えているのです。
「受取人の判断力に問題がある」場合とは、認知症やその他病気(植物状態等)などにより、受取人が意思表示をできない場合や、同様に受取人に判断能力がない場合を指します。
この場合は、受け取り手続きができません。
なぜなら、確認すべき先に挙げた3つの項目が、確認できない、つまり「今回の件を、被保険者、又は受取人が望んでいるかどうかの確認」ができないからです。
この場合も、代筆やサポートは認められません。
こうなってしまうと、何のために長年保険金を支払ってきたのかという根本的な問題となってしまいます。
そうならない為に、生前整理としての対応をしておくことが重要になります。
先に述べた「写真入りのマイナンバーカードの取得(運転免許証があれば不必要)」は簡単ですが、事前に「指定代理請求人」を登録しておくことが一番の方法だと思います。
「指定代理請求人」とは、先のような何らかの事情により「受取人では請求手続きができない」と判断される場合でも、代わりに手続きを行うことができる唯一の人なのです。
「代筆が必要かもしれない」と不安な状態でも、「指定代理請求人」がいれば、手続きそのものを代行できます。
この方法以外では、先に挙げた通常の手続きで受け取りは出来ません。
では、指定代理請求人を立てることが出来なかった場合の方法としては、「成年後見人」という制度がありますが、この取得には非常に費用と、時間がかかります。
「成年後見人」選任のためには、家庭裁判所で「後見開始の審判」の申し立てを行いますが、受取人に「判断能力がない」ことを証明する診断書をはじめとするさまざまな書類・証書・収入印紙などを準備する等、時間はもちろん、労力も多大に費やす必要があります。
他にも、財産管理を任せる方法としては、「家族信託」や「生命保険信託」と言う方法もありますが、どちらも受取人本人が手続きを行う必要があるので、認知症が重くなったりその他の病気で「判断力に問題が出た」後ではこの方法は取れないのです。
つまり、「指定代理請求人」以外の方法では、通常の保険金の受け取りが非常に難しくなると言う事なのです。
受取人本人が、こういった事を知らない事は多々ありますが、御家族やご親族がこの事を知ったとしても、なかなか受取人に説得を試みるのが難しいと思います。
しかし、認知症になって保険金が受け取れなくなる可能性があると言う事を、生前整理の一環としてお話してみる事も重要だと思います。
また可能であれば、エンディングノートを作成するように話をする事も肝要です。(エンディングノートとは、口座番号、暗証番号、遺産の分割などを含め、本人が死後にどうしてほしいのか?を記述するノートです。)
こころテラス東海は、生前整理のお役に立てるように努力いたします。
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