薪ストーブを選ぶ前に知っておきたい二つの価値ー最後に決め手となるのは二つの価値のバランス

画像は我が家のシンボルネコと申しますか「何のために薪ストーブを焚くのか?」という意味を20年間ものあいだ、もたらしつづけた先代「しまねこ」のポジションをドーンと分捕るように、我が物顔で暮らしている「みゃー」というハチ割れネコの様子です。
薪ストーブなのに、なんでネコなのさ?と思われてしまうかと存じますが、薪ストーブはエアコンなどと違い、単体では本件では決して答えになれないのです……すなわち薪ストーブが欲しい、大事、じゃなくて「もし薪ストーブがあることで家族がジンワリと幸せを味わうことが出来る暮らし」が成立するのか?すなわち「家族の情景」が大切だということを私はずーっと言い続けてきました。
情景は薪ストーブがあることの本質的な意味
……いや仰ることもわかります。「暖房装置」という意味では、エアコンと本質的に変わらないと。けども薪ストーブの本当の真価を、そちらのベクトルから語るなら、あたかも自動車でいえば、危機が生じた時に如何に効率的かつ安全にその場から逃げ去ることができるか?ということに価値があるように、例えば大地震などライフラインが何日も開通しないとか、そこでとりあえずのご飯を炊くなりお湯を沸かすなり何人分出来る?とかもっとシビアな側面を重視しなければなりません。
今回はそういう重い記事なので、画像だけでもネコにしてみましたm(__)m
さて時代は本当に大きく変わってしまいました。私は1971年生まれですが、まさか自分が生きている間に、こんなにも世界情勢がシビアで無慈悲で世の中で安心して普通に暮らすことが困難(不安定)になるとは思いもしませんでした。それは、先ほど申し上げたインフラ、ガソリンや電力といったインフラの供給も例外ではないという、そういうシビアさです。
本当は社会の皆で仲良く揃って「平等に」生きていきたかったけど、この種のリスク「世界情勢が変わって政府や社会システムが機能不全を起こす中でも、どうにかこうにか生きていくしかない」という事態の蓋然性を前提にすると「各自」、つまり、適切に準備して生き延びることができた人(家族)だけが、幸せを確保することができるかもしれない、そういう残念な世の中であろうということが前提になります。
株式に限らず、金の地金の暴騰だとか、暗号資産だとか、そういうモノの動きを見ていると、普通に暮らしているだけでは難しいノウハウを伴って扱わなければならないモノが増えました。人工知能もどんど暮らしやシステムにん入り込んできています。このような情勢で大事なのは「その専門家って、本当に専門家なのか?言ってること妥当なのか??」ということに尽きるのは皆さん、誰もが実は実感なさっているのではないでしょうか。
さて、そこで薪ストーブです。資材価格高騰の今、たぶん戻ることもないと思われる中、覚悟を決めて高額投資としての薪ストーブを検討なさっている方も少なくありません。私にはここ数年やってきた中で薪ストーブ屋として後悔があります。モキ製作所の薪ストーブを主に扱い、ご相談を受けて「いや、それでしたらモキ製作所の薪ストーブは期待外れになりますよ」と私(モキ製作所の薪ストーブ専門店)として手を引いた案件、実は片手では済みません。
AIの隆盛も含めて初めて書きますが、何故モキ製作所の薪ストーブが評判が良くないか?答えは「薪ストーブらしい『燃え方における贅沢さ』が乏しい」です。例えば太い重い薪をゴロンと炉の中に入れて、炎を小さく絞って、一晩中暖を保つような炎を持続させたい……というようなシチュエーションが『薪ストーブならではの炎の贅沢さ』として代表的です。「焚火とは違うのだよ、焚火とは!」と某アニメキャラの声で脳内再生して頂ければ、なお実感としてご理解頂けるかも(笑)
弊社、株式会社愛研大屋環境事務所扱いの改造版(MD70Kiss)なら、ちょっと無理をすれば(周辺への煙公害)できなくもないですが、普通のモキ製作所の薪ストーブでは無理です。この贅沢ニーズへの適応の乏しさは構造原理的な問題から来ておりましてモキ製作所の薪ストーブに限らず多くの薪ストーブで無理であり、可能なのは「触媒型」と言われる煙の処理方式を持つ、一部の「超贅沢系の薪ストーブ」だけだとお考えになった方が、周辺への煙公害も踏まえると圧倒的に無難です。
専門家として断言します。一部の「超贅沢系の薪ストーブ」は例えばメンテナンスのコスト等までも含めて勘案すると、まるで「巨大で美しい熱帯魚水槽が一般家庭のリビングで維持できますか?」という質問と同じような困難さがあります。
つまり特に何もなくても定常的に消費するリソースの調達(薪ストーブでの代表的なリソースは薪)に大変なコストを要するし、システムの維持管理の手間とコストも相当なものがあります。ですので結果的には普段は使わずに大切に仕舞っておいて、クリスマスなど特別な時に「たまに使う」だけになりがちです。あるいはごく一部の富裕層(に近い)方でしたら、「超贅沢系の薪ストーブ」を毎冬、日々の暖房として使っていらっしゃるのが現実です。その理由は
- 同じく薪ストーブ本体が冷え切ったゼロからの立ち上げだけで、相当な量の薪(20kg等)を消費するために準備とリターンのバランスが不便すぎる(ピザ窯と同じ問題)
- 何かしら使ったら、オフシーズンなどにはストーブ本体の内部を清掃し、触媒を交換するなど少なくないメンテナンスの手間を要する
オンシーズン、薪ストーブをずっとつけっぱなしにしておけば、非常時も含めてこの上ない熱源として機能する可能性はありますが、上記理由により、それは普通の人(ご家庭)には通常不可能(ないし極めて難しいこと)でして……ここで、本当に最大に現実をご覧いただ居たいのですが
たまにしか使わず普段は仕舞いこまれた状態のモノは非常時に全然思うように機能してくれません
これはおわかりになるはず。特に「付属品」のような部品や道具(ライターとか)が、一式全部揃っていればまた良いのですが、なまじ「特別な時だけ」使っている状況があれば大切に仕舞いこまれた付属品を引っ張り出してくるだけで疲労困憊、時間や体力との闘いとなるような前半申し上げたインフラ、ガソリンや電力といったインフラの供給が途絶えたとかシビアな状況の中では、実際、役に立ちません。
よって、薪ストーブに非常時、災害時における熱源として「非常時もこれがあれば安心」という価値を期待するならば……正確には、社会が変化して、非常時、災害時熱源としての薪ストーブの意味合いが、こんなに上がってしまうならば、薪ストーブの専門家として相談を受けて「いや、それでしたらモキ製作所の薪ストーブは期待外れになりますよ」と手を引いたのは、誤りだったと……非常に申し訳なく思っております。
日常的に、しょうもない理由で、気軽に稼働させて使えて、よって必要器具なども常時揃っていることが大事
酷暑の中で薪ストーブ料理を気まぐれで作ってみました(笑)
「特別な時だけ」とは逆に、ちょっと気まぐれで遊びで使ってしまえるような「炎の熱源」だけが、災害時にも確実に役に立ちます。それは伝統的な七輪や、安いバーベキューコンロでもダメというわけではないのですが、次のようなことをクリアーできていないと、非常時や災害時熱源としては適切でありません。
- 火災を生じず、かつ煙が周囲に迷惑をかけない状態となるよう本体及び煙突が常設されていること(薪ストーブ)
- 煙をモウモウと出してから炎が育ち、いわゆる立ち上がるまでの時間が可能な限り短いこと
- 火がつけやすく使用可能な燃料種類を極力選ばず、可能な限り「ありあわせの材料」を燃料とできること
- 立ち上がりが早くて少ない燃料で熱源として機能する状態にできること
- メンテナンスや部品交換が極力不要で高温の炎の熱によく耐えて耐久性が高いこと
- 調理の為の利用可能スペースが広い、大量のお湯を沸かすことが出来る等、熱源として使い易いこと。
後半に上げたのは「必須」というほどではありませんが、やはり災害時熱源としては「頼りになる」ということが何よりも価値になります。
困難な状況でも頼りになる薪ストーブについて書いたブログ記事
ともかくご理解いただきたいのは、災害用、防災用熱源として何か想定したとしても、実際に普段から使っていないと「いざ」という場面で役に立たないこと。 だからこそ、何でもない時から、無味乾燥な暖房器具ではなく「生活を実際に豊かにしてくれるアイテム」になってくれているか?という部分が『その薪ストーブは、実際に、シビアな防災時、災害時にどれほどしっかり役に立ってくれるか?』を決めるということです。
「炎の専門家」である私が防災時熱源に関して言えるのはせいぜいこれだけです。あと環境中の毒性物質ないし汚濁負荷に関して若干の専門家ではありますが……それはそれで別の専門分野なので。でもつくづく思うに専門家大事です。私たちの社会は、いつの間にか?というべきか、どうだったのか……ずいぶん心細い社会になってしまいました。だっていつの間にか今秋のお米すら美味しいものが食べられるかわからない、そんな社会です。
ですので、どうか、各分野少しでも信頼できる専門家の存在を知り(読み解く力も大事です)、個別に意見を参考にできる機会などありますように。
それでは、また。



