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薪ストーブを選ぶ前に知っておきたい二つの価値ー便利で頼りになる生活道具としての価値

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テーマ:薪ストーブの選び方

 薪ストーブを後悔なく選ぶためには、薪ストーブを導入したい、という動機について「価値」に基づいた整理、言語化が最も大切であることを紹介するシリーズ、前回のコラムでは「調度品」としての薪ストーブの価値について解説しました(極めて多忙につき、また時間が空いてしまって申し訳ありませんでした)。

 この「調度品」としての価値を、薪ストーブの価値として真っ先に挙げたのには理由がありまして、世の中の薪ストーブ専門店の圧倒的多数がこの価値を前面に打ち出しているという事情もありますが、それ以上に、やはり「炎の眺め」「炎があること」が、人間にとって相当根源的な欲求であろうと思われるからです。

 そう、炎は、別に具体的に何ら役に立たなくても、そこに存在するだけで生活の潤い、気分を何かしら豊かにする価値があるのです。便利な電気の灯りがあるのに、わざわざローソクに火をともして「キャンドルナイト」などとして炎の揺らめきを愉しんだりすることがあるように。

 これは「調度品」として例を挙げた生け花でも同じで、そんなに立派で気合の入れた、費用のかかるようなものでなくても良いのです。ちょっと生け花の心得のある人が、その知識を応用して、野に咲く花など身の回りで手に入る花を摘んで花瓶にさすなどして、毎日の暮らしの中にいつも花があるとか、とても素敵なこと、心豊かになれることです。

 炎においても、本格的で高価な薪ストーブのように「贅沢品」では別になくとも、日常的に暮らしの中に共にあって、いつも炎の揺らめきを楽しめれば、それはそれで大いに価値があることは容易にご想像いただけるかと思います。

 しかし「炎」、されど「炎」。ロウソク程度の小さな炎ならいざ知らず、薪を燃やす程度の炎、眺めていて一定の存在感を楽しめる炎は、手軽に焚くということが基本的にはできません。そんなに簡単に火が点かないし、煙の心配も多い。第一、そのために一束800円とかするような薪をホームセンターで買ってくるとか、野に咲く花を生けるのとは違って、「単に飾るため」とするなら極めてハードルは高くなります。

 すなわち、薪が燃える程度の生々しい炎の揺らめきを、日々の暮らしの中で日常的に愛でたければ、その愛でる対象となる炎には鑑賞だけではない、実用的なメリットが存在しないと、愛でようにも無理が出てくる、実際には愛でることができないのです。

 そこで結論を言えば、実は、「調度品」への対極として「暮らしのための薪ストーブ」なるものが存在するとしても、炎の揺らめきを日常的に楽しみたいという根源的欲求を満たすためには、料理や暖房としての圧倒的な上質さなど、炎を利用する道具という生活実用品として具体的に役に立つ必要があったためと、理解しても良いわけです。

 そのような背景はともかく、「暮らしのための薪ストーブ」という価値です。炎の揺らめきがどうのこうのという話とは関係のない価値はどのようにしてイメージすれば良いか?というのは、例えば、こちらの動画がわかりやすいと思います。



 暮らしを成立させるためには、特に調理ですが、何かしらの熱源が必要になりますよね?冬ならもちろん暖房としても機能することが期待されますが「暮らしのための薪ストーブ」は熱源として薪を利用しただけで、あとは炎の特性を合理的に踏まえながら、できるだけストレスなく有効に熱を暮らしに利用しようとするものです。

 とりわけ、火がつけやすいこと、それから、できるだけ短時間で熱源として具体的に機能することこそが重要です。こちらの動画で解説しております。



 そこに視覚上で炎が存在しても、その熱が使えないことには暮らし的には仕方ないわけです。熱源として早く機能してもらわなければ困ります。暮らしというものは、普通、いかにタイミングよく、パッパと回していけるか?が本質ですので。

 その意味では、上述の「2か月放置した畑の野菜を使って料理をする。」動画で用いられている、ホームセンターなどでもよく見かける、激安の薪ストーブは、すごく優秀です。

「え?私の薪ストーブのイメージはこんなのではなくて……」

 はい、仰ることはよくわかります。しかし、薪ストーブから得られる価値だけに注目すれば、上述する動画で展開されている薪ストーブの活躍ぶりは、まさに正しいのです。捨てられているような木材を活用して、美味しい料理を作ることに成功しています。炎の揺らめきを愛でるとか、そんなの関係ない「生活の要」としての薪ストーブです。

 炎の揺らめきを愛でなくても暮らしは成立しますが、優秀な熱源がないことには暮らしは成立しません。この熱源として「たまたま」薪ストーブも採用できる場合がある、そんな薪ストーブに期待する価値が、実際に存在するわけです。昨今ブームのアウトドア用薪ストーブも、この文脈によります。

 しかし、残念ながら、このホームセンターなどでよく見かける薪ストーブは、暮らしの中で、すなわち家のリビングで日々使うには、次の2点において難しいです。

  1. 煙が全く処理されないので、近隣の大迷惑になるリスクを抱えると共に、煙突が煤で短期間で詰まるために煙道火災に伴う家の火災リスクも大きく、頻繁な煙突掃除を要する。
  2. 基本的に使い捨てのような、非常に薄い金属板で作られているため、寿命の部分、長期耐久性が期待できない(毎日の暮らしで使えばもって数年)


 逆に言えば、この2点がしっかりクリアーされない限り、山の中でもない限り、薪ストーブを暮らしの道具として位置付けるのは難しいです。それ以外にもポイントはあって、さらには「薪の消費量」というのも、熱源としての性能、つまり、同じ質量&状態の薪から、どれだけ多く利用可能な熱エネルギーとして取り出せるか?という違いも大きいです。維持管理のためのコストや手間の違いも大きいです。

 この「性能」に着目した薪ストーブの比較議論は、ほとんどなされていない、公開情報としてはほとんど存在しないと思います(比較検討を具体的に可能にするためのフォーマットはこちらの記事の中にとして提供しております)。

 そのあたりはこちらの記事で、詳しく述べてありますが、ともかくユーザーさんにとって困った問題としては、この「暮らしのための薪ストーブ」ということに正面から着目した販売形態が、実際にはなかなか存在しないということです。

 私の感覚で恐縮ですが、ホームセンターは「あなた任せ」で売りっぱなしですし、薪ストーブ専門店は暮らしで熱源として薪ストーブを日々使うことに関連する諸課題は「あえて触れない」という姿勢を取っているように見えます。ペットショップが販売現場において、そのペットの今の可愛さだけを強調するようなものです。

 ですので、薪ストーブを「頼れる暮らしの熱源」として利用されたい場合も、あるいは、日常的に炎を愛でたいがために、飾り以外での実用的価値も必要とされる場合も、この「暮らしのための薪ストーブ」という価値についてご自身のニーズを十分整理されるとともに、その場合に想定される諸課題(煙、耐久性、薪の消費量その他維持管理のコストや手間)について、人任せにせずに、ご自身でよくよく研究されることが大切だと考えます。

 ここまで、原則論を述べてまいりました。しかし、人間は原則論だけで生きるものではありません。あっちも欲しい、こっちも欲しい、というのが自然な人情です。そのために最後に必要となる考え方を、次回、ご紹介いたします。

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大屋渡(薪ストーブの設置及び販売)

株式会社愛研大屋環境事務所

雨漏りや地震台風等に強いことはもちろん、災害時も安心熱源、将来にわたって何かしらの形で薪ストーブを活用し続けられる製品選び・設置方法の提案など、薪ストーブを導入することによる永続的な価値を提供します。

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