「“巻き込む力”が、可能性をひらく」 〜共創の場がイノベーションの土壌になる〜
全50回にわたった「壁を越えるイノベーション実践録」も、いよいよ最終回。
最後にもう一度、私たちが何のために「イノベーション」という言葉を語り続けてきたのかを振り返り、これからの一歩を踏み出すためのヒントをお伝えしたいと思います。
第48回からはまとめ編として、イノベーションの本質を3つの視点から整理してきました。
最終回となる今回は、「愉快創造」という言葉に込めた私たちの想いを軸に、未来をひらく視座を共有します。
変化を面白がる力が、未来をひらく
イノベーションとは、「すごい発明」でも「壮大な構想」でもありません。
もっと身近な、あなた自身の中にある「違和感」や「願い」、そして「どうにかしたい」という思いから始まります。
この連載では、以下の3つのポイントを繰り返し伝えてきました:
- 気づく力:見過ごされている問いや課題に目を向ける力
- つなぐ力:技術や人、論理や直感を越境的につなぎ直す力
- 巻き込む力:自分ごととして周囲を巻き込み、共創の場を育てる力
これらの力の根底にあるのが、「愉快創造」という姿勢です。
「愉快」とは、単に楽しいということではありません。
現状に留まらず、問い続け、もがきながら、笑っていられること。
「創造」とは、正解を知ることではなく、自分なりの意味を見出していくこと。
この二つが交差するとき、イノベーションは技術や制度を越えて、人を動かし、社会にうねりを生みます。
つまり、イノベーションとは、変化を恐れずに「面白がる」ことから始まる営みなのです。
ケース紹介:
ある製造業の現場で起きた、小さな「愉快創造」の実例です。
品質不良が多発し、士気が下がっていたある生産ライン。
その現場で、ある若手社員が「ミスを責め合うのではなく、“気づいたらありがとうを言い合う”というルールをつくりたい」と提案しました。
最初は戸惑いがありましたが、日々の中で自然と「ありがとう」が交わされるようになると、空気が変わり、意見が出やすくなり、結果として不良率も改善されました。
この変化は、誰かの大きなアイデアや指示ではなく、「変えたい」という一人の思いから始まったのです。
まとめ:
イノベーションは、あなたの外にあるものではありません。
あなたの中にある違和感・問い・情熱こそが、はじまりです。
そしてそれを面白がりながら形にしていく「愉快創造」の姿勢が、まわりの人を巻き込み、やがて社会を変えるうねりになります。
「自分なんて」と思う必要はありません。
あなたの中に、すでにその芽はあるのです。
壁を越えるイノベーション実践録(50/50)
次の扉をひらくのは、あなたです。
今日から早速、愉快創造の一歩を踏み出していってください。



