「“巻き込む力”が、可能性をひらく」 〜共創の場がイノベーションの土壌になる〜

釜剛史

釜剛史

テーマ:壁を越えるイノベーション実践録

この連載もいよいよ終盤。
最終回に向けてお届けしている「イノベーションの3つのポイント」。

第1回は「視点を変える力」、
第2回は「試す力」でした。
そして今回は、第3のポイント―「巻き込む力」です。



なぜ“巻き込む”ことが大切なのか?

新しいチャレンジにおいて、孤独な努力には限界があります。
特にイノベーションは、前例のないことに挑む営み。
だからこそ、一人で考え抜くより、「他者と共に創る」ことが、成功の鍵を握ります。

たとえば―

  • 自分にはない視点からのフィードバック
  • 社内の垣根を越えた協力
  • 顧客やパートナーとの共創


…こうした“巻き込み”があることで、アイデアは現実味を帯び、実行力を持ち始めます。
逆に、どんなに優れた構想でも、共感者がいなければ、動かすことはできません。

巻き込むには、何が必要?

巻き込む力とは、単なる「説得力」や「リーダーシップ」とは少し違います。
大切なのは、“共感”と“共創”を生む仕掛けをつくることです。

たとえば―
①「想い」を言葉にする:
 単に「やるべきこと」ではなく、「なぜやるのか」というビジョンを語る。
 共感の火種は、熱意ある問いかけから生まれます。

②「小さな参加」を設計する:
 いきなり大きな巻き込みを狙わず、「一緒に考えてほしい」「ちょっと見てほしい」など、
 入りやすい“巻き込み口”をつくる。

③「場」を開く:
 部署を越えて対話できる場や、顧客と試せる機会を設計する。
 人が動き出すのは、“巻き込まれる”のではなく、“自ら関わりたくなる”瞬間です。

ケース紹介:社内横断プロジェクトが生んだ共創の成果

ある電機メーカーでは、新規事業に挑戦するも、社内の協力が得られずに頓挫するケースが続いていました。
背景には、「部門間の壁」や「失敗への警戒感」があったといいます。

そこで、経営陣は「共創型プロジェクト制度」を導入。
テーマと初期構想だけを提示し、参加希望者を社内全体から公募。
選抜されたメンバーが、自部門の仕事と並行して参加できるよう業務調整も制度化しました。

また、プロトタイプ段階から取引先の顧客を招き、テスト→改善→再提案を重ねる形式に。

結果、当初はニッチとされていたアイデアが、実際に顧客と共に磨かれ、
既存製品と組み合わせる形で新たな販路を開拓。
初年度から収益化に成功し、社内でも「共創型アプローチ」の効果が広く認識されました。

“仲間づくり”が、未来をつくる

巻き込む力とは、「協力してもらう」ことではありません。
「共に考える」「共に進む」関係性を築く力です。

そしてそれは、技術や立場に関係なく、誰もが育てることができる力でもあります。

「この人と一緒にやってみたい」
―そう思ってもらえる人になること。

そのために、「想いを語る」「聴く」「場をつくる」。
こうした日々の行動が、未来のイノベーションを支えるのです。

まとめ:巻き込むことで、加速する

  • イノベーションは、「誰かと共に」あることで育つ
  • 巻き込む力は、共感・共創・場づくりから
  • 仲間がいるからこそ、リスクも希望に変わる




壁を越えるイノベーション実践録(49/50)

次回予告:
「愉快創造」の扉をひらこう

〜イノベーションは、あなたの中にある〜

いよいよ次回は最終回。
これまでの全50回を総括しながら、イノベーションに必要な「心構え」と「一歩踏み出す力」についてお届けします。
読者の皆さんへの応援のメッセージを込めて。

ご希望に応じて、研修や社内共創プログラムの設計・ファシリテーションも承っております。
ご関心のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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釜剛史
専門家

釜剛史(イノベーションコンサルタント)

株式会社あくるひ

企業研修、コーチング、技術経営コンサルティングの三つのアプローチでイノベーションを実践的に支援。富士写真フイルムやトヨタ自動車での実体験を基に、「横から目線」でクライアントの愉快創造を活性化します。

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