イノベーションがうまくいかない会社に欠けている“問い”とは? 〜“Why型”の探求が、未来の可能性を開く〜

釜剛史

釜剛史

テーマ:壁を越えるイノベーション実践録

新商品や新規事業を考える会議で、こんなやりとりを見たことはないでしょうか?

「この商品、売れそうですか?」
「どうやって実現しますか?」
「それって本当に儲かりますか?」

―いずれも大事な問いですが、“すでにある案を前提にしている”点に特徴があります。

実は、イノベーションが生まれない現場では、「正しさ」を問う“How”や“Can”の質問が多く、
“Why”の問い
が不足しているのです。



「問いの質」が、未来を決める

アイデアの前提を疑い、
「なぜ、そもそもこれが必要なのか?」
「なぜ今、それが社会に求められているのか?」
といった根源的な問いを持てるかどうかで、
その後の企画や方向性が大きく変わります。

このような“Why型の問い”こそが、イノベーションの火種となります。

“正解探し”から“意味探し”へ

多くの組織では、
「正解を出すこと」が良しとされ、
問いを深めることよりも「早く答える」ことが評価されがちです。

ですが、イノベーションにおいて重要なのは、
「最初に問うべきことは何か」を考える力。
つまり、「意味を問う力」です。

ケース紹介:問い直すことで見えた新市場

ある老舗の食品メーカーでは、
「減塩商品を開発しても、売上が伸びない」という悩みを抱えていました。

そこで「なぜ、減塩が必要なのか?」という問いから始め、
健康志向の高い高齢者だけでなく、
「子どもと食卓を囲む機会が減った親世代」に着目。

“子どもと一緒に安心して食べられる”という新たな切り口で
「親子減塩シリーズ」を開発したところ、新たな顧客層を獲得。

きっかけは、「そもそも誰の、どんな課題を解決したいのか?」というWhyの問いでした。

よくある3つの問いのズレ

タイプ誤った問い正しい問い
市場主義型「今売れてるのは何か?」「今、誰がどんなことに困っているか?」
技術主義型「この技術で何ができるか?」「この技術で、誰にどんな価値を届けられるか?」
成果主義型「すぐに結果が出るか?」「長期的に育てる価値があるか?」


良い“Why”を育てる3つの習慣

1.「5回のなぜ」で本質に迫る

 トヨタ式で有名な「なぜ」を5回繰り返す手法。表層ではなく、根っこに届く問いを育てます。

2.問いに“数字”を持たせる

 なぜこの層?なぜこのタイミング?など、問いにデータや仮説を伴わせると深まります。

3.問いを“チームで耕す”

 一人で考えるよりも、他者と議論することで「問いの視点」自体がアップデートされます。

まとめ:問いが変われば、未来が変わる

  • イノベーションの起点は「何を問うか」にある
  • “Why”が弱いと、アイデアは空回りする
  • 「意味を問う力」が、未来の可能性を広げる




壁を越えるイノベーション実践録(45/50)

次回予告:
「それ、いくらの市場?」を3分で見積もる技術

〜フェルミ推定で拓く、新規事業の“仮説力”〜

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釜剛史
専門家

釜剛史(イノベーションコンサルタント)

株式会社あくるひ

企業研修、コーチング、技術経営コンサルティングの三つのアプローチでイノベーションを実践的に支援。富士写真フイルムやトヨタ自動車での実体験を基に、「横から目線」でクライアントの愉快創造を活性化します。

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