「“どこでも通用する強み”は、実は幻想?」 〜コアコンピタンスを尖らせる思考法〜

釜剛史

釜剛史

テーマ:壁を越えるイノベーション実践録

「うちは品質に自信があります」
「どこに出しても通用する技術です」
そう語る企業は少なくありません。

しかし、実際にイノベーションや新規事業に取り組む際、
こうした「どこでも通用する強み」が逆に足かせになることがあります。

なぜでしょうか?



強みが“平均化”されてしまうワナ

「品質」や「技術力」といった言葉は確かに大切ですが、
誰もが同じように主張することで差別化になりにくいのです。

たとえば、「うちは高品質」と言っている企業が市場に10社あったら、
お客様は何を基準に選べばよいのでしょうか?

コアコンピタンスとは?

コアコンピタンスとは、
自社の中核をなす、他社には真似できない独自の強みのことです。

ただし重要なのは、それが単に技術や資源のことではなく、
「価値の源泉」になっているかどうかです。

言い換えれば、

  • 競合にはない
  • 顧客にとって意味がある
  • 将来的にも活かせる

という三拍子が揃っているものこそ、真のコアコンピタンスです。

コアを見抜く3つの問い

1.「この強みがなかったら、我々の価値は半減するか?」

→Yesなら、それは中核です。

2.「この強みを活かして、どこまで横展開できるか?」

→技術や仕組みの“応用可能性”を探ります。

3.「その強みを“誰に”とって価値あるものにできるか?」

→ターゲットによっては、“強み”が“無関心”になることも。

ケース紹介:小さな町工場の“大きな強み”

ある町工場では、「どんな材質にもピタッと接着する技術」を持っていましたが、
長年それを「当たり前」として扱っていました。

あるプロジェクトでペルソナを明確にしたところ、
アウトドア用品メーカーから「極寒・高湿度でも剥がれない接着技術」を求められ、
この技術が一躍注目されることに。

結果、新たな市場(アウトドア・防災・軍需向け)での展開が進み、
自社技術の“尖った価値”として再定義されました。

「どこでも」ではなく「ここで、これに」

強みを“どこでも通用させよう”とすると、言葉が抽象的になります。
逆に、「この業界」「この課題」「この顧客」とピンポイントに当てると、
強みがくっきりと見えてきます。

つまり、強みは“文脈”で光るのです。

「選ばれる理由」は自分では見えにくい

コアコンピタンスの発見には、自社の当たり前を相対化する視点が必要です。

  • お客様の言葉に耳を傾ける
  • 他社との違いを観察する
  • 外部ファシリテーターやコンサルの問いを活用する

こうした“外の目”によって、自社の真の強みが浮かび上がります。

まとめ:強みを“尖らせる”という選択

  • 「どこでも通用する」は、競争力になりにくい
  • コアコンピタンスは“文脈”と“組み合わせ”で輝く
  • 強みは「尖らせて」初めて武器になる




壁を越えるイノベーション実践録(44/50)

次回予告:
「イノベーションがうまくいかない会社に欠けている“問い”とは?」

〜“Why型”の探求が、未来の可能性を開く〜

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釜剛史
専門家

釜剛史(イノベーションコンサルタント)

株式会社あくるひ

企業研修、コーチング、技術経営コンサルティングの三つのアプローチでイノベーションを実践的に支援。富士写真フイルムやトヨタ自動車での実体験を基に、「横から目線」でクライアントの愉快創造を活性化します。

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