“コンセプト迷子”を救え! 〜いいアイデアなのに伝わらない理由〜

釜剛史

釜剛史

テーマ:壁を越えるイノベーション実践録

「そのアイデア、悪くないけど……よく分からない」
「つまり、何が新しいの?」
「うーん、結局、誰のためのもの?」

せっかく時間をかけて考えた新規企画が、
うまく伝わらずに消えていく—。

それはアイデアそのものではなく、“コンセプト”に問題があるのかもしれません。



コンセプトとは「翻訳」である

コンセプトとは、企画や商品に込めた価値を誰にでも伝わるように翻訳した言葉です。

  • 技術の言葉を、顧客の言葉に。
  • 担当者の熱量を、意思決定者の納得に。
  • 思いつきのアイデアを、戦略的な表現に。

つまりコンセプトとは、「よさそう」と思われるための“橋”なのです。

「伝わらない」コンセプトにありがちな3つのパターン

1. 説明が長すぎる(情報過多)

→ 熱意が高いほど、つい語りすぎてしまいがち。
 しかし、聞き手は数秒で「分かる・分からない」を判断します。

短く、シンプルに。
“5秒で伝わる説明”が求められます。

2. 独りよがりの視点(内向き)

→ 開発者のこだわりや技術の難しさを主語にしてしまうと、
 顧客の「だから何?」につながりません。

“誰のどんな悩みをどう解決するか”が起点です。

3. 差別化が曖昧(埋没)

→ 同じような商品やサービスがすでにある中で、
 「なぜ今、これなのか」「何が違うのか」が不明確だと、印象に残りません。

“一言でユニークさを語れるか”が鍵となります。

コンセプト整理のフレーム「3W1H」

迷ったら、この4つの問いで整理しましょう。

要素問い
Who誰の忙しいビジネスパーソンの
Whatどんな課題を習慣化できない健康管理を
Why(価値)なぜ必要かいつまでも元気に働きたいから
Howどう解決するか“ながら運動”できるオフィスグッズで


これをつなげると—
「忙しいビジネスパーソンの“健康管理できない”を、オフィスで“ながら運動”できるグッズで解決」

短くても、誰に・何を・なぜ・どうやってが伝わります。

ケース紹介:商品化寸前で立ち止まった理由

ある製造業の開発チームは、1年がかりで新しいプロダクトを完成。

しかし社内プレゼンでは、「良いとは思うけど、どこが新しいのかよく分からない」と冷ややかな反応。

再度ヒアリングすると、
技術の優位性を“機能名”で語っており、
「誰のどんな課題をどう変えるのか」が不明確になっていたのです。

そこで、「この機能で“あの困りごと”がラクになる!」という言い方に変えると、
一気に企画が通過。販促チームも共感しやすくなり、スムーズなローンチに至りました。

伝える努力が、価値を守る

コンセプトづくりは、アイデアを守る作業です。
いくら良い中身でも、伝わらなければなかったことにされてしまう。

「いいアイデアなんだけどね…」で終わらせないために、
コンセプトで“第一印象”を制することが大切です。

まとめ:伝える力がイノベーションを加速する

  • コンセプトは「価値の翻訳」である
  • 3W1Hで「誰に・何を・なぜ・どうやって」を明確に
  • 最初の5秒で伝わる“ひとこと”を磨こう




壁を越えるイノベーション実践録(42/50)

次回予告:
方向転換は、敗北ではない 〜ピボットが開く、イノベーションの可能性〜


商品・事業開発フェーズでの「伝える言葉づくり」や
チーム内合意形成のサポートも行っています。
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釜剛史
専門家

釜剛史(イノベーションコンサルタント)

株式会社あくるひ

企業研修、コーチング、技術経営コンサルティングの三つのアプローチでイノベーションを実践的に支援。富士写真フイルムやトヨタ自動車での実体験を基に、「横から目線」でクライアントの愉快創造を活性化します。

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